道は自ら切り拓く。
IT分野のキャリアを支える津田塾での学び。

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重本 恭子(旧姓:荒井) SHIGEMOTO Kyoko

学芸学部数学科 1998年卒業

津田塾大学の数学科に入学し、情報コースで情報科学を本格的に学びプログラミングのスキルを磨く。在学中にシステムエンジニアの登竜門である「第二種情報処理技術者(旧名称)※」の資格を取得。卒業後は日本電気株式会社(NEC)に入社し、ITのプロフェッショナルとして数々のシステムの導入を牽引。現在はディレクターとしてチームを率いる。

高校の頃からIT分野に関心をもち、大学での学びをベースに確かなキャリアを築いてきた重本さん。社内でも常に一歩先を見据えて組織をリードする存在です。津田塾での経験が、現在の活躍にどのように活きているのかを伺いました。
※2001年に「基本情報技術者」に名称変更

津田塾で知る学問の楽しさは、まるで別次元。

はじめに、津田塾大学を志したいきさつを教えてください。
高校3年生の頃、数学の面白さを教えてくれた担任の先生に勧められたのがきっかけです。先生自身も津田塾の数学科卒業でしたので、「この大学に行けば、自分も先生みたいになれるのではないか」と思ったのです。当時の数学科は、1年次で数学と情報の基礎を幅広く学んだ後、2年次から情報コースと数学コースに分かれます。高校の頃からIT分野に漠然とした興味があった私にとって、このカリキュラムは魅力的でした。
大学見学の際には、都会の喧騒から離れた自然豊かな小平キャンパスにも魅せられます。「この落ちついた環境で、4年間を過ごしたい」。そう思ったことも決め手となりました。
実際に入学して、どのような気づきがありましたか。
先生方が、自分の研究分野を心から愛している。そのことに感銘を受けました。数学の授業では、先生が微笑みながら黒板に数式を書き連ねているんです。その姿を目にすると、授業を受けている私たちまで楽しくなってきます。高校の頃から数学は好きでしたが、新たな世界に足を踏み入れたような感覚でした。先生との距離が近くてアットホームな雰囲気なのもこの大学の良さです。

数学科であっても、英語の授業は必修でした。当時としては先進的な、ネイティヴスピーカーの先生による英会話のクラスもありました。授業では「夏と冬、どちらが好きか」といった身近な話題で肩肘張らないコミュニケーションを行います。間違いを恐れず英会話を楽しめたのは、どんな意見にも先生が温かなコメントをくださったからでしょう。新しい教育スタイルに前向きな校風は、当時も今も変わらず受け継がれているようですね。

大学での学びを社会に還元したい。

印象に残っている授業はありますか。
1年次に履修した「総合」です。さまざまな分野の第一線でご活躍されている方が、代わる代わるゲストスピーカーとして登壇する授業です。なかでも鮮明に覚えているのは、NHKの教育番組でおなじみの「ノッポさん」こと高見映さんが来てくださった回のこと。番組中では一切言葉を発しないキャラクターのノッポさんが、実際はとても饒舌なんです。器用に工作する印象がありましたが、ご自身は不器用だと語っていたことにも驚きました。社会で活躍されている方の経験談をじかに聞く機会はなかなかありませんので、とても新鮮でした。
数学者であり大道芸人のピーター・フランクルさんの回も印象に残っています。フランクルさんは数学の面白さについて語ってくださいました。この授業を通じて知ったのは、自分の学びや経験を社会に還元していくことがとても楽しいものだということです。学問と社会が地続きになったような気がしました。
2年次からは、初志を貫いて情報コースに進まれます。
はい。1年次に情報の基礎を学んだことで手応えを感じ、もっと深く学びたいと思ったのです。自分が社会に何かを還元できるとしたら、IT分野の学びではないか。そんな風にも思いました。

情報コースで感動したのは、最先端のプログラミング言語をいち早く学べることです。私が3年生に上がったのは1996年。今では世界中で使われているプログラミング言語のJavaが、世の中に登場した年です。この年に、早くもJavaを用いたプログラミングの授業がスタートします。時代を先取りした授業で、先生から一方的に教わるのではなく、一緒に試行錯誤しながら、開拓していく。そのプロセスが面白くて、すっかりプログラミングに夢中になりました。

ITスキル✕ものづくり。
これがキャリア選択の軸に。

情報コースでの学びを通じて、どんな変化がありましたか。
ITの力を活かした「ものづくり」に興味をもつようになりました。卒業制作ではJavaを用いて当時流行していた「たまごっち」を再現。ふたりの友人と、毎日大学に集まって制作に明け暮れました。シナリオを考える。キャラクターのイラストを描く。プログラミングのソースコードを記述する。そうした一連の作業を地道に進めていきます。ここで悩ましかったのは、行き詰まった際に参照できる情報がまだ少なかったこと。授業で得た知識を総動員するとともに、分厚いJavaの本とにらめっこしながら少しずつ前進していきました。なんとか完成させてキャラクターが動き出したときは、とても嬉しかったです。同時にITスキルを駆使してひとつの作品を仕上げたことが自信にも繋がりました。
卒業後は、IT業界の大手であるNECに就職されました。
「ITスキル✕ものづくり」で世の中に貢献したい。これは就職先を探す上での最重要ポイントでした。せっかくの機会だからと、メーカーやシンクタンクなどITに関わるさまざまな会社に応募しました。NECに就職する決め手となったのは、職場見学に訪れた際に女性が活躍している現場を目の当たりしたことです。当時は、男女雇用機会均等法が制定されて10年以上が経っていたものの、まだ女性が男性同様にキャリアを築くのは難しい状況にありました。その時代にあって、NECの職場はひときわ輝いて見えたのです。NECの事業領域の広さや、津田塾の卒業生が多く在籍していることも魅力的でした。

「自分がなんとかしなければ」という覚悟が飛躍につながった。

システムエンジニアとして、これまでどのようなキャリアを歩んでこられましたか。
入社してから8年間は、ERPパッケージ(販売、生産、会計などの企業の基幹業務システムを一つにしたソフトウェアパッケージ)を、法人のお客様に導入するプロジェクトを担当していました。スウェーデン製のシステムで、NECとしても初めてのビジネスだった為、周囲に経験者はおらず、マニュアルはすべて英語でした。「他力本願では始まらない。自分でなんとかしなくては」と覚悟を決めて取り組みました。ときにはスウェーデンに飛んで、現地のエンジニアからじかに機能紹介を受けたり、逆に日本からの要望を伝えたり。大変でしたが、新しい領域に先陣を切って飛び込む充実感でいっぱいでした。

もうひとつ、忘れられない経験があります。結婚、出産を経て職場復帰を果たした頃のこと。当時は複数のプロジェクトを社内でサポートする業務に就いていました。毎日さまざまな案件の担当者から、問い合わせメールが大量に舞い込んできます。それに対応するだけで手一杯になっていると、津田塾OGの先輩から「問い合わせシステムを作ってみては」とアドバイスをもらったのです。実際のところ、別々のプロジェクトから同じ問い合わせを受けることもしばしばでした。それらをシステムで一元管理し、ナレッジデータベース化すれば、過去の回答をすぐに調べられ、質問対応が大幅に効率化できます。すでに会社で定着した業務の流れを変えるのは簡単ではありませんでしたが、「システム以外からの問い合わせは一切受け付けない」とルールを決め、新たな仕組みを導入しました。全体の利益のために、時としてドラスティックな変革が必要なこともある。それを肌で知ったのはこのときです。今ではすっかり、問い合わせシステムが社内に浸透しています。

津田塾での4年間が、今の私の原点。

今までの仕事を振り返って、津田での学びがどのように活きていますか?
仕事を通じて大切にしてきたのは、自ら道を切り拓こうとする姿勢です。これはまさに、津田梅子から脈々と受け継がれている「津田スピリット」ではないでしょうか。梅子は6歳で親元を離れ、日本初の女子留学生として渡米するなど、当時は誰もしなかったことをやり遂げました。そんな開拓者精神を、学生時代に授けてもらったように思います。

周囲を見渡すと、子育て中の女性管理職はまだまだ少ないのが現状です。どうすれば女性が自分のやりたいことを諦めずに生き生きと働けるのか。今はそれを考えながら、社内で女性の活躍やダイバーシティの在り方をディスカッションする場を設け、意識改革を図っています。育児をしながら、当たり前のようにキャリアアップをはかれる組織を作る上で、自分がそのモデルケースになれたら嬉しいですね。
最後に、津田塾を目指す高校生にメッセージをお願いします。
津田塾は今の私の原点です。4年間を通じて、ITスキルにとどまらず社会で活躍するための力強さが身につきました。これは一朝一夕で体得できるものではありません。みなさんも津田塾の環境をフルに活用して、果敢にチャレンジしてください。ここで得た知識や経験、マインドが、人生を豊かに生きるための礎となるはずです。

さらに、津田塾生同士のつながりは、卒業後も一生ものの財産になります。以前はOG会に参加したこともありますが、周りにいるのは目標にしたい女性たちばかり。時折、大学時代の友達とも会っていい刺激を受けながら、一緒に成長していける。これほど幸せなことはないですね。
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