人口研究とは、出生、死亡、移動からなる人口現象を、地域と歴史の視点から理解する試みです。すなわち、こうした現象の背景には、地域特有の社会、文化、政治、経済、歴史的文脈があり、また移民・難民のように、国際関係の文脈に関連づけて理解することが求められます。それらを包括的に理解するには、人口統計の数字を分析するだけでは不十分です。たとえば、人口増加は多くの発展途上国では貧困、食糧、環境を悪化させる「社会問題」とみなされる一方で、少子高齢化が進む先進国では、経済の活力や社会保障制度を支える基盤として歓迎されます。このように、同じ人口現象でも、それぞれの社会が抱える状況によって意味が変わってきます。他方で、人口統計が社会変動を予測する手段ともなり得ることがあります。白人中間層においてのみ見られた死亡率の上昇から、トランプの大統領当選の可能性を排除できないと主張したのは人口学者でした。この講義では、複数の具体例を取り上げます。たとえば、学生自身が、国連人口統計データからグラフを作成して人口現象を目に見える形にし、なぜそうなったのか、考えることによって理解を深めていきます。
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