言語を学ぶことは、多様な文化に目を向けること。

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笠原 望 KASAHARA Nozomi

学芸学部多文化・国際協力学科 4年

津田塾大学の多文化・国際協力学科に入学し、第2外国語としてスペイン語を選択。スペインへの語学研修を通じて1年次から現地の文化に触れ、4年次までスペイン語を学び続ける。「外国語を学ぶことは、母語を見つめ直すきっかけにもなる」と語る笠原さん。4年間の第2外国語の学びを通じて何を感じ、どう成長したかについて語っていただきました。

メディアを通じてではわからない、リアルな学びがある

はじめに、津田塾大学を志したきっかけを教えてください。
津田塾を知ったきっかけは、中学・高校の頃にお世話になった先生が津田塾の英文学科出身だったことです。興味が湧いて調べてみると、少人数教育が充実していることがわかりました。このとき「先生との距離が近いなら、じっくりと学べそう」と思ったのです。
進路選択の時期にはさまざまな大学のオープンキャンパスに訪れました。ここで印象的だったのも津田塾です。学長からの「ジェンダーを意識することなく伸び伸びと学べる」という言葉を聞いて、女子大ならではの魅力を感じました。緑豊かで落ち着いたキャンパスにも魅せられて、入学を決めました。
多文化・国際協力学科を選んだ理由をお聞かせください。
オープンキャンパスで、多文化・国際協力学科の模擬授業を受けたことがきっかけです。テーマはインドをはじめとした世界の民族問題。それまでの国際情勢に関する自分の知識が、ほんの断片的なものに過ぎなかったことを思い知りました。先生からの「ニュースや人づての情報に流されず、生の情報に触れることや多角的に考えることが大切」との言葉に感銘を受けるのと同時に、多文化・国際協力学科ならフィールドワークが必修となっているため、現場での経験を通じてリアルな学びを得られると確信したのです。専門分野にとらわれずに幅広い学問に触れられるカリキュラムにも惹かれました。




初めて触れるスペイン語にわくわくした

第2外国語として、スペイン語を選択されたのはなぜでしょう。

ラテンアメリカに興味があり、この地域で広く公用語とされているスペイン語をもっと学びたいと思ったからです。小さい頃から、世界遺産を特集したテレビ番組を観るのが好きだった私にとって、はるか遠くのラテンアメリカは憧れの地域でもあります。高校の世界史の授業でも、マヤ文明の遺跡やユカタン半島の民族史などに惹かれました。地球の反対側に、日本とはまったく異なる文化がある。その事実へのわくわく感から「大学ではスペイン語を学んで現地の文化をもっと知りたい」と思ったのです。
実際に、スペイン語の授業を受けてどんな気づきがありましたか?
今までに触れたことのない言語をゼロから学ぶのは新鮮でしたし、授業では会話をする機会が多く楽しいひとときでした。スペイン語は主語がなくても会話が成り立つほか、ローマ字と似た発音をすることもあるなど、日本語との共通点が案外多いので親しみを感じました。一方で、苦戦したのはなじみのない動詞の活用形です。繰り返し口に出したり、動詞の原形を付箋に書いて目に付く場所に貼っておいたりと、さまざまな暗記術を試しました。毎週「次回の授業までにはこの動詞の活用形をすべて使いこなせるようになろう」と目標を立てて、地道に習得していきました。

覚悟を決めてからが、本当の学び。

1年次には、スペインの語学研修に参加したそうですね。
はい。きっかけはスペイン語の授業で配られた語学研修のチラシです。スペイン語圏でフィールドワークを行いたいと思っていた私にとって、本場のスペイン語に触れられる絶好のチャンスでした。
滞在したのは、マドリードの郊外にあるアルカラ・デ・エナーレスという都市です。迎えてくれたホストファミリーは英語が話せず、コミュニケーション手段はスペイン語のみ。生活のルールや家の使い方についてホストマザーから説明を受けるもまったくわかりません。拙いスペイン語で話しかけても相手はぽかんとするばかり。「自分の語学力では、まだネイティヴにはまったく通用しない」という不甲斐ない状態から、現地での生活はスタートしました。
言葉の壁を、どうやって乗り越えたのですか。
滞在2日目には「落ち込んでいても仕方ない。わからないなりに、とにかく話そう」と決心。うまく伝わらなくても、たどたどしいスペイン語を必死で話し続けました。するとホストマザーもスペイン語習得のために力を貸してくれるようになります。語学研修先から出された宿題に目を通しては、より正確な文法を教えてくれることが日課になりました。1週間ほど経つと効果が表れ始めます。言いたいことが伝わる感覚がうれしくて、スペイン語がますます好きになりました。

休日にスペインの各地へ観光に出かけるのも楽しみのひとつでした。街のいたるところにある教会の美しさに目を奪われることもあれば、ほとんどのカフェが夕方には閉店するなどの慣習に日本との違いを感じることも。現地の文化を満喫し、帰国が近づく頃には、初日とは比べものにならないほどスペイン語が上達しました。

「やればできる」という体験が、学び続ける原動力に。

帰国後、スペイン語の学びはどう変化しましたか。
会話のスキルを高めたくて、学外でも自主的にスペイン語会話の講座に通うなど、ますます身を入れるようになります。一方で、文法知識の不足もスペイン滞在中から痛感していました。4年次までスペイン語の授業を履修し続けたのも「文法をもっと体系的に学びたい」という思いからです。

スペイン語は上達すればするほど、授業も面白くなります。私が好きだった授業のひとつが「スペイン語Ⅳ」です。児童書を用いて、世界で活躍するさまざまな人物の逸話をスペイン語で学びました。女性活動家のマララ・ユスフザイさんをテーマに取り上げたときは特に印象に残っています。女性の教育機会を求めて活動を続けるマララさんの姿に強く感銘を受けました。
今後の目標について教えてください。
フィールドワークで予定していたスペイン語圏への滞在は、残念ながらコロナ禍でかないませんでしたが、いつかスペインを再訪したいです。ラテンアメリカをはじめとしたスペイン語圏の世界遺産も巡りたい。その日のためにもスペイン語学習はこれからも続けます。

加えて、スペイン語を学んだことで弾みがつき、他の言語にも興味をもつようになりました。これからもさまざまな言語に触れ続けたいと思います。



津田塾で培われる語学力は、かけがえのない財産。

津田塾で、第2外国語を学ぶ醍醐味とはなんでしょう。
言葉を学ぶこととは、その国の文化に触れることです。母語の常識が通用しないことも珍しくありません。津田塾では、英語をしっかりと身につけながら第2外国語も学べるので、多様な文化に対していっそう理解が深まります。

外国語は腰を据えて学ぶことでようやく身につくものです。独学では学習時間の確保や、モチベーションを保ち続けることは簡単ではありません。英語学習だけでも大変なのに、第2外国語をゼロから習得するとなるとなおさらです。
津田塾で第2外国語を学ぶ意義とは、モチベーションを高く維持できることだと思います。授業では失敗を恐れずに会話を楽しめますし、課題を提出すると先生から細やかに添削をしていただけます。こういった環境が揃っていたからこそ4年間を通じてスペイン語の土台を築けました。
最後に、津田塾を目指す高校生にメッセージをお願いします。
津田塾では、誰もが「自分にとって唯一のもの」を見つけて突き進んでいます。オープンキャンパスの際に先輩から「周りの目を気にすることなく興味のあることに打ち込める大学」と聞いていましたが、4年間を振り返ると本当にその通りでした。それがかなうのも学生一人ひとりの好奇心を伸ばしてくださる先生方の指導や、学ぶことに貪欲な友人たちからの刺激があってこそ。津田塾のこの伝統は、脈々と受け継がれているように思います。まだ自分に何が向いているかわからない方も、この伝統に期待してぜひ津田塾の門を叩いてください。
※学年は取材当時のものです。
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