フィールドワークで世界と出合い、「弱さ」を気づきに、「強さ」を分かち合う力に

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三砂 ちづる MISAGO Chizuru

母子保健・国際保健の疫学専門家として、ロンドン大学で研究を重ね、ブラジルなど数多くの国で、国際協力活動に携わる。国立公衆衛生院(現・国立保健医療科学院)に勤務後、2004年、学芸学部国際関係学科教授に就任。
2019年4月に新設される、多文化・国際協力学科。開学以来続く語学教育の伝統と、来たるべき未来に向けて策定された「Tsuda Vision 2030」とを背負った同学科では、いかなる学びが待っているのか。教授を務める三砂ちづるから、学科の強みと、学生への思いを聞きました。

羽ばたくための学び

2017年に本学が掲げた “Tsuda Vision 2030”のモットーは「変革を担う、女性であること」、ミッションステートメントは「弱さを、気づきに。強さを、分かち合う力に。不安を、勇気に。逆境を、創造を灯す光に。」です。津田塾がこれまで大切にしてきた理念を言葉にした、といえるでしょう。

当事者意識の高さと、責任感の強さは、津田塾の伝統です。困難な状況に置かれている人に寄り添い、状況を変えていこうとする意思も、開学以来脈々と受け継がれてきた姿勢です。世界の、日本の、地域の、家庭の、あるいは自分自身の、何らかの困難な状況を切り拓くために、「学ぶ」ことで力を得て、自由の翼を獲得してもらいたいと思います。

世界と向き合うフィールドワーク

私は国際保健と呼ばれる分野の研究や国際協力の仕事をしてきました。世界中どこに行っても、津田塾の卒業生に会います。キンシャサでも、ビエンチャンでも、霊長類研究所でも、OGとお会いしました。開学以来の卒業生が3万人台であることを考えると、驚くべきことだと思います。

多文化・国際協学科では、全員にフィールドワークを課しています。教員が引率するのではなく、自分でテーマを決め、自分でフィールドを決め、現地を訪れ、論文を書くことが必須になります。

学問のやり方には2種類あります。理論を学び、その視点を使いながら現実の問題と対峙していくやり方と、現場から疑問を立ち上げて既存の理論に出会い、自らの視点を構築していくようなやり方です。多文化・国際協力学科は後者のやり方をとっていると言えるでしょう。自ら選んだテーマをもとに行うフィールドワークから、学びを広げていきます。 

まだ何も知らない一学生が、ちょっと現場に行っただけで、何かできるわけではありません。いかに自分が何も知らないか、その場にいても何もできないか、を思い知って帰らなければならないこともあるでしょう。現場で感じる世界の複雑さを理解するために、学びを深めていく必要があります。
フィールドワークの様子
実際に学生が行ったフィールドワークの実例

世界の見方を変える外国語

日本語の通じないフィールドに行けば、もちろん外国語を話すことが必要になります。歴史的背景もわからず、言葉ができなければ、何のために行ったのかわかりません。外国語への開かれた態度と、外国語への興味関心をこの学科では大切にしたいと考えています。津田塾の伝統である英語教育、第二外国語教育はこの学科の中心になる科目でもあります。

英語の力を伸ばすことは津田塾の伝統です。長く培われた英語教育の伝統に加え、MI英語と呼ばれる、多文化共生・国際協力に関わるテーマに沿って、リーディング、ライティング、ディスカッションなどを一貫して学べるような科目も用意しています。

学芸学部では英語に加えて、第二外国語習得を大切にしています。世界は広く、英語だけが外国語のはずはなく、英語だけから見えている世界と、別の言語から見える世界は異なります。選べる言語はフランス語、ドイツ語、スペイン語、ロシア語、中国語、韓国・朝鮮語など6つです。そのほかの言語に触れる機会も用意しています。
私はイギリスの大学で英語を使って働いた後、ポルトガル語を学んで、ブラジルで10年くらい働きました。たとえば、ポルトガル語、スペイン語、フランス語といったラテン系の言語から世界を見ると、英語から見えてくる「外国」とは違う世界があることがわかります。英語しかできなかったとき、いかに自分の視点がアングロサクソン寄りだったかに気づきました。もちろん、そういったヨーロッパ起源の言語だけではない、現地の言葉を習得すれば、また、見えてくる世界が異なるでしょう。英語だけでは十分ではない世界も、とても広いのです。

外国語を学ぶということは、自国と違った文化を学ぶということです。また、いままでの自分の言葉では表現し得なかった別の自分と会う、ということでもあります。それを英語以外の言語でも経験することは、この学科の学びにおいてとても重要だ、と考えています。
[ 文:矢代真也(編集者/ライター)・撮影:赤松洋太(カメラマン)]
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