津田塾は「好き」をとことん追求できる場所。

  1. HOME
  2. 津田塾のまなび
  3. 津田塾は「好き」をとことん追求できる場所。

林 綾乃 HAYASHI Ayano

学芸学部 多文化・国際協力学科 4年

幼少の頃から動物園に足繁く通ったと語る林綾乃さんは、津田塾の多文化・国際協力学科に進学後、狩猟の免許を取得。学科の必修であるフィールドワークでは地元の猟友会に参加し、伝統的な狩猟形態のひとつである「巻狩」をテーマとして、インタビュー調査から実際の狩猟、卒業論文の執筆を行いました。津田塾での4年間、狩猟活動に夢中になった林さんが、学生生活を振り返って実感している自身の成長とは。多文化・国際協力学科の魅力に触れながら語っていただきます。

伝統あるハーツホン・ホールの佇まいに魅せられて

津田塾大学を志望した理由をお聞かせください。
高校3年の頃、教室の一角にいろいろな大学のパンフレットが並べられていました。その中で津田塾大学のハーツホン・ホールの美しさに目が留まったことがきっかけです。調べるうちに、多文化・国際協力学科ではフィールドワークが必修であることを知って、さらに惹かれました。私は物心つく前から動物園に週1回は訪れていたほどの大の動物好き。「動物に関わりながらフィールドワークをしたい」と思ったのです。
実際に入学して、いかがでしたか。
ディスカッションの授業を通じて、クラスメイトたちの多様な意見に触れられことは新鮮でした。入学してしばらくは、コロナ禍でオンライン授業がメインでしたが、先生は毎回異なる相手とディスカッションできるよう工夫してくださいます。一方で、課題の多さには驚かされました。なかでもレポート課題は第1タームで20本ほど。締め切り日から逆算してスケジュールを立て、先行研究や文献の調査をして、執筆までを段取りよく進めていく。大変でしたが、この繰り返しが2万字に及ぶ卒業論文の執筆に活かされたと思います。


自らの固定観念に気づくことも、大切な学びです

印象に残っている授業は何ですか。
3年次に履修した「貧困問題」の授業です。この授業では、国内外における貧困の実情を学びました。もともと貧困という言葉から想像していたのは、ホームレスのように寝る場所にも困る人びとのこと。ところが実際には、帰る家があってもお風呂に毎日入れない、きれいな服を身に着けられない、生理用品を購入できないといったことまで、その実態はさまざまです。それまで抱いていた貧困に対するイメージが、固定観念だったとわかりました。街中のベンチに据え付けられた手すりには、ホームレスがベンチで寝そべるのを防ぐ目的があると知ったのもこの授業です。日頃なにげなく目にする街中の公共物が、ホームレス対策のためのいわゆる「排除アート」になっている。そのことを知ってからは街を歩く時の見方も変わりました。

貧困について意見を発表する場も豊富にありました。自分の意見をまとめる過程で貧困に対する理解が深まったり、クラスメイトたちの意見から新たな視点を得ることも。先生からは「このケースならどう考える?」と別の切り口から鋭い質問をいただくこともありました。その場で答えられないときは「次回までに考えてこよう」とさらに調査する。その積み重ねを通じて、ひとつのテーマを深く、多角的に眺める姿勢が身につきました。

机上では得られない経験こそ、フィールドワークの醍醐味

狩猟に興味をもったきっかけについて教えてください。
そもそものきっかけは、動物園で行っている「屠体給餌」(駆除されたシカやイノシシを肉食動物にエサとして与えること)に興味を持ったことです。狩猟活動を始めると決めてからは準備を重ね、1年次のうちに狩猟の免許を取得し、地元の猟友会に所属します。2年次の秋以降、狩猟期間である11月~3月の間は、ほとんど毎週のように帰省して狩猟活動を行い、それ以外の期間は猟友会の皆さんと射撃の練習などをしていました。 狩猟活動の中心は、シカやイノシシなどを対象とした大物猟である「巻狩」です。巻狩では、鉄砲を構えて待ち伏せる「射手」と、狩猟犬とともに獲物を射手のいる方向に追い詰める「勢子」とが協力して狩りを行います。私が主に務めたのは、勢子の役目です。これらの活動を、最終的には卒業論文としてまとめ上げました。
狩猟活動の中で印象に残っていることは何ですか。
2年次の秋に、初めて狩猟に参加したときのことは鮮明に覚えています。狩猟犬が吠えた後、しばらくして銃声音が響き渡ると「猟場に来たんだ」という実感が湧きました。成果は日によってまちまちで、「こんなに歩き回ったのに、思ったより獲れなかったな」とがっかりすることもあれば、狩猟仲間とともに練り直した作戦が功を奏して喜びに湧くことも。獲物の皮を剥ぐにも一苦労で、「スーパーのお肉はあんなにきれいなのに」と思うこともしばしばでした。机上では得られない経験ができる。これこそがフィールドワークの醍醐味です。



手にしたのは、世代も場所も超えた人とのつながり

狩猟をテーマとした研究活動を通じて、どんな成長を遂げましたか。
主体的に行動する姿勢が身につきました。調査を行う上では、初対面の相手に対してインタビューのアポイントメントを取り、協力していただかなければなりません。私はもともと行動力にそれほど自信がありませんでしたが、自分の殻を破れた実感があります。キャンパスでは出会えない方々と過ごせたことも貴重な経験です。猟友会には10代から 70代までさまざまな年代の方が所属しています。狩猟小屋で皆とジビエ料理を囲み、作戦を練って翌朝一緒に狩猟に出かける。そうするうちに、多様な世代の方と円滑にコミュニケーションを取れるようになりました。

セミナーでは学生一人ひとりで研究テーマが異なります。フィールドワークを踏まえた研究発表では、狩猟経験がないセミナー仲間から質問されて、自分の当たり前が通用しないと気づいたり、先生からの指摘で新たな視点を得たりすることも。「ここはもっとていねいに説明しよう」「注釈を加えよう」と試行錯誤をするうちに、研究内容は磨かれていったものです。同時に、他のセミナー仲間たちが楽しそうに研究活動に勤しむ姿を見て「もっと自分も頑張ろう」とモチベーションが高まりました。

夢中になれることとの出会いは、かけがえのない財産

林さんにとって、多文化・国際協力学科で学ぶ意義とはなんでしょう。
興味関心のある分野をとことん探求できることです。今でも狩猟仲間とは親しく交流していますし、卒業後も趣味としてずっと狩猟を続けていきたい。こんなに夢中になれる分野との出会いは、大学時代における大きな財産です。

同時に、フィールドワークの前にはしっかりと心構えをもてるのもこの学科の良さ。例えば「多文化・国際協力の学び」という授業では、主に海外でのフィールドワークを想定した安全対策や、社会・文化の違いによる注意点などを教わりました。楽しさだけではない現実も知った上で、万全の準備をして現地に赴く。だからこそ密度の高いフィールドワークになります。
最後に、津田塾大学を目指す高校生にメッセージをお願いします。
多文化・国際協力学科での4年間を振り返ると「特定の技能や知識を身につけた」というよりは「教養が深まった」という言葉がぴったりです。ここで身につけた教養は、異なる文化や社会、世代の方と関わる上での礎になります。

まだ進むべき分野が定まっていない方も、ここでなら自ずと心惹かれる分野に出会えるはず。興味関心を引き出してくれる先生方、学ぶことに貪欲な同級生たち、初めて触れる分野の授業からヒントを得て、自分が大学生活をかけて追求したいことを探してみてください。
※学年は取材当時のものです。
Copyright©2019 Tsuda University.
All rights reserved.