フィールドワークでの気づきが、視野を広げ、思考力を育む

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2019年に新設され、学内外で行うフィールドワークを必修とする多文化・国際協力学科。
今回は、文化人類学、貧困問題などの授業を担当し、アフリカを研究対象とする丸山淳子准教授、多文化・国際協力について学ぶ髙橋明穂さん(多文化・国際協力学科1年、写真左)と小澤はるかさん(国際関係学科 多文化・国際協力コース4年、写真右)にお話を伺いました。

コースの特色を活かして新たな学科に

丸山 2019年度に学科として始動。それまでの16年間は、英文学科(現:英語英文学科)と国際関係学科を横断するコースとして、2年次から多文化共生・国際協力の分野を扱ってきました。小澤さんもその一人ですね。
小澤 はい。人気のコースで倍率が高く、選考面接では私たちの意欲を確かめるため先生方から厳しい質問が次々ふられ、とても緊張したことを覚えています。私は、独特な文化をもつ国や地域に興味があり、なかでもブータンについて研究したいと考え志望しました。髙橋さんは、この学科をどこで知りましたか。
髙橋 模試を受けた際に配られたパンフレットです。私はドキュメンタリーが好きなのですが、自分が映像で目にする現象や本を読んでイメージする内容と、現地の実情との違いに関心がありました。現地に足を運んで、自分の興味に合わせたフィールドワークができる学科を探していて、迷わず受験しました。
丸山 新しく設置された1年次必修科目の「多文化・国際協力の学び」では、多文化共生や国際協力、国際ウェルネスの基礎的な知識を学ぶことで、フィールドワークに向けた土台を固めます。教員の研究内容もわかるので、2年次からのセミナー選択の参考になるでしょう。今後は、「食と環境」「開発と文化」などの発展科目や、現場で活躍している外部講師による「多文化・国際協力の実践」なども開講予定です。講師陣も充実し、学科の特色がより明確になりました。

2年次から研究テーマを考える

髙橋 今ちょうど2年次のセミナーを決める時期で、正直とても迷っています。開発支援を「する側」と「される側」のギャップについても関心があるし、その一方で、失われつつある日本の伝統工芸品は現場や作り手にどのように考えられているのかなど、自分の興味がさまざまな方向に散らばっているのです。
小澤 私は2年次のときはブータンの幸福度について研究するつもりでしたが、卒業論文ではベトナムの技能実習生について調査しています。フィールドワークや人との出会いで、研究対象や内容は変化していきます。
丸山 学科では原則、2年次に決めたセミナーに在籍し続けますが、研究テーマは変化していくものですので、地域だけで選ぶ必要はありません。私のセミナーにいた学生のなかにも、当初は私の専門とするアフリカに関心をもっていても、やがてアフリカ以外に自分のフィールドを見つけていった人がたくさんいます。セミナーは教員の専門分野に合わせるものではなく、学生が自分のテーマを追求していくもの。文化人類学的な見地から研究したいと考えて私のセミナーを選択する学生もいます。調査をし、資料を集め、理論的にまとめていく。フィールドワークの手法は何をテーマにしても大きく変わることはありません。コンテンツは学生が見つけ、教員はそれが研究という形になるようサポートしていきます。

先入観をなくし、多角的な視野を

髙橋 興味の対象が広がるきっかけは、価値観の変化が大きいと感じています。丸山先生の「文化人類学」の授業で、ボツワナへの支援についてディスカッションしたときもそう。支援する側は「支援してあげる」という優位な立場になりがちだけれど、支援を受ける側にとっては、その支援が喜ばしいことばかりではなく、かえって面倒に思うこともあるという話を聞いて、自分は一面的な見方しかしていなかったと気づきました。
丸山 国際協力や多文化共生という分野には、「貧しいより豊かなほうがよい」というような、わかりやすい「正解」があるように思えるかもしれません。しかし、異文化が交わるところでは、よいと思ってやったことが必ずしもうまくいくとは限りません。たとえば、衛生的見地からトイレを作るのは一見正しいことのように感じられますが、生活している人にとっては、不特定多数の人が同じ場所で排泄することのほうが「きたない」と思われることもあります。その状況を目の当たりにし、自分は今まで一面的、表面的にしか現状をとらえていなかったと気づかされるのです。当たり前を問い直し、その向こう側にある世界を見てほしい。フィールドワークで、自分が生きてきた場所と違う環境に身を置くことはとても大事です。多角的に見る力をつけると、本当の意味での国際協力や多文化共生に貢献できるようになると思います。
小澤 ベトナムフェスティバルでボランティアをした際、技能実習生について調べることができました。「実習に来るのは貧しいからだろう」という先入観があったのですが、話を聞くと、自国や日本での生活費を冷静に分析していました。決めつけで物を考えていた自分に気づき、恥ずかしさを覚えました。この気づきをうまく論文に反映できるように、さらなる調査やインタビューを進めています。
卒業論文執筆に向け、小澤さんが取材に訪れた東京都港区にある浄土宗日新窟。ベトナムの方々に混ざり、ともに祈りを捧げた。

将来に活きる「ものの考え方」

小澤 さまざまなことにチャレンジした学生生活は、とても大変でしたが、努力をし続ける友人たちの存在が私を後押ししてくれました。卒業後は教育系の企業に就職します。現代は親子間の繋がりが希薄だと言われますが、私は両親と多くの時間を共有してきたので、親子を繋ぐ教材を作れたらと考えています。
髙橋 私はまだ模索中です。今後の学びをとおして、さまざまな考え方や立場の人たちへの理解を深め、それを将来の仕事に活かすことができればと考えています。
丸山 フィールドワークを経験すると、最初はうまくいかないことのほうが多いのですが、そのなかで必ずブレイクスルーが起きます。すると、自分が考えていたことや、今の社会で常識とされていることや前提とされていることを、別の視点から問い直せるようになります。卒業後、大学で勉強したトピックが必ずしも仕事に繋がるとは限りません。しかし、基礎的な考え方、考えのシフトの仕方が身についていれば、どこでも自分のしてみたいことを実現できるはず。自分にも他人にも「こうじゃなきゃいけない」と思わなくていい。柔らかい頭をもって自分の力で生き抜いてほしいです。
※こちらの記事は大学案内(ガイドブック2021)より転載しました。
※学年は取材当時のものです。
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