英語で「発信」し、社会の変化を起こす

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大類 久恵 ORUI Hisae

津田塾大学学芸学部英文学科卒業、カンザス大学大学院アメリカ研究科修士課程修了、筑波大学大学院歴史・人類学研究科博士課程中退。城西国際大学国際人文学部国際文化学科准教授などを経て、現職。専門はアメリカ合衆国史、アメリカ地域研究。著書に『アメリカの中のイスラーム』などがある。

1900年に創設された女子英学塾から続く、英学・英語教育の伝統に連なる英語英文学科。グローバル化が進むいま、英語を使って情報を発信することは、いかなる意味をもつのでしょう。津田塾大学OGでもある大類久恵教授が、英語英文学科での教育と情報発信のもつ意義を語ってくれました。
※2019年4月 英文学科より名称変更

大きく動く社会を知って

津田塾の英文学科に入ったとき、わたしは文学を勉強するつもりでした。けれども、1980年代のレーガン政権下で変化していたアメリカ社会を授業やセミナーで学び、面白いと思ったんです。当時はアメリカ社会が大きく動いていた時代。この国の成り立ちやありようをもっと知りたいと思いました。

いまわたしはアメリカ合衆国史・アメリカ地域研究を専門にしていますが、その根幹には英文学科での学びがあります。歴史学で大切なのは、多くの一次史料にあたること。アメリカ史の場合、史料のほとんどすべてが英語で書かれていますから、英語を読むことは必須です。また、地域研究としてアメリカを研究していますので、ほぼ毎年アメリカを訪ねて、アメリカの「今」を体験するようにしています。文書館や博物館などさまざまな場所を巡り、現地の人々と交わす会話から多くを学んでいます。

つまり、アメリカをほんとうに知るためには、英語を読んで、英語でコミュニケーションがとれなければならないのです。アメリカだけでなく、英語圏を研究するには、確かな英語力が欠かせません。 英文学科で徹底的に英語力を鍛えられたことは、本当に良かったと思います。

英語を「使う」ために

英文学科からの伝統がある英語英文学科の英語教育は、たいへん充実しています。1、2年次の必修科目では、予習に追われながらも、徹底して学ぶ。若いうちはどんどん頭に入りますから、鉄は熱いうちに打てと鍛えられる。思っているより、きびしいかもしれません(笑)。きびしいからこそ、リーティング、ライティング、スピーキング、リスニングの4技能が鍛えられるはずです。

どのような言語でもそうですが、インプットがないとアウトプットはできません。主に読むことをとおしてインプットされるので、とくに読む量が多いですね。たくさん読んで、自分の中に英語をもっていないと、例えば2年生になって英語でリサーチペーパーを書くときに言葉が出てきません。

英語英文学科では、希望する学生が卒論セミナーに入り、英語で卒論を執筆します。まずテーマを選び、資料を収集しながらテーマを絞り込みます。それから構成、ドラフトの執筆。お互いに書いたものを読みあい、批評しあいながら進めます。こうして、自分が選んだテーマについて調べ、考察して、1年かけて論文をに仕上げていきます。すぐれた卒業論文やゼミ論を書く学生たちは、英語を自分のものにして、「使う」ことができるようになったと思います。

卒論を書くうえでは、資料を精査する力、メディアリテラシーが大切になります。インターネットの情報も含め、正しい情報かどうか見極めなければならない。その力を養ってもらいたいですね。

声を届ける、受け入れる

学生の中には、自分から発信することが得意ではない人ももちろんいます。英語英文学科に来る、本を読むのが好きな学生には、じっくり考えて慎重に発言するタイプの人も多い。でもやっぱり今の世の中では自ら発信していかないと、得られないものがあります。

特に女性はいまだに社会の中で声が届きにくい。それは、社会のさまざまな仕組みが女性の目線で作られていないことと無関係ではありません。セミナーなどでこういう話をすると、多くの学生が共感します。

公民権運動の時代に、アメリカの黒人たちは「権利は、闘って勝ち取るもの」と明言しました。個人的な希望を言えば、闘って権利を勝ち取らなければならないような社会よりも、持てる者が自らの権益を手放し、分かち合うような社会であってほしい。でも、なかなかそうはならないのが現実です。だからこそ、自ら発信し、主張していくことの重要さを学んでほしい。社会の変革は、その先にあるのだろうと思います。

津田塾には、自分とは違う考えを持った人の声に耳を傾け、それを受け入れようとする姿勢を持っている人が多いと思います。メインストリームでない、マイノリティへの目配りといってもいいかもしれません。社会においてマイノリティの立場におかれがちな女性の強みです。例えばアメリカの黒人、先住民、移民たちの語りに、パッと共感をもてる。多様性の大切さが叫ばれるなかで、自分と違う存在を拒絶するのではなく、受け入れていく姿勢はどんどん重要になっていきます。それをもっている学生が多いのは幸せなことです。

また、真面目に勉強することを尊ぶ気風があることも嬉しいです。一生懸命勉強して、真面目に意見を述べる人がひとりではないから、セミナーのディスカッションに誰もが自然に溶け込めるし、本気で勉強したい人が浮いてしまうことはない。切磋琢磨して、お互いを高め合う、そんな学びの環境がここにはあると思います。

英語による「発信」を目指す

学生には、自分の意見をしっかりもって社会に出ていってほしいですね。同時に、ほかの人の立場にも立てる、ほかの声にも耳を傾けられる力をつけてほしいです。世界はものすごく動きながらも、やっぱり小さくなっています。インターネットを通じて、行ったことのない地域のニュースも入ってくる時代です。今世の中で起きていることに関心を広げて、どうしてそのようなことが起きているのかを探る視座を培ってほしい。

そして、学んだこと、考えたことを積極的に「発信」してほしいと思います。グローバル化が進むいま、リンガフランカとしての英語、つまり母語が異なる人々を結ぶ「共通語」としての英語が果たす役割は、ますます大きくなっています。母語である日本語による発信ももちろん大切ですが、英語英文学科で学ぶ学生には、英語による発信、とくに英語を書いて発信することも意識してほしい。英語が使えることで、英語を解する世界中の人々に向けて発信することが可能になるのですから。
[ 文:矢代真也(編集者/ライター)・撮影:赤松洋太(カメラマン)]  
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