化粧品で世界中を笑顔に。
「津田塾大学の英語力」で切り拓く自分らしい道。

  1. HOME
  2. 津田塾のまなび
  3. 化粧品で世界中を笑顔に。「津田塾大学の英語力」で切り拓く自分らしい道。

小栗 幸恵 OGURI Yukie

学芸学部国際関係学科 2013年卒業

幼少期をイギリスで過ごし、得意だった英語に磨きをかけた津田塾大学での日々。
英語ミュージカルを上演する団体にも所属し、自己表現の楽しさを知るとともに、人間的にも成長できたと振り返る小栗さん。
現在、株式会社コーセーで携わっている化粧品の商品企画の仕事にも、津田塾での学びが深く関わっていると語ります。

津田塾で学ぶ英語は、現地で使う英語そのもの。

はじめに、津田塾大学を志望した理由と、学芸学部国際関係学科を選ばれた理由をお聞かせください。
一番の理由は、津田塾の卒業生だった母の言葉にあります。高校3年生の頃、いよいよ志望校を絞り込む時期に、母から改めて話を聞く機会がありました。その際の「向学心がある仲間と出会えるし、将来やりたいことが明確になったときに味方してくれる大学だよ」という言葉が大きなきっかけとなっています。

学芸学部国際関係学科を選んだ理由は、まだやりたいことが定まっていなかった私にとって、幅広く学ぶことで視野を広げられる学科だと考えたからです。私は5歳から10歳にかけて、両親の仕事の関係でイギリスに住んでいました。意思疎通が思うようにいかない海外で、エネルギッシュに働き、生活する両親を見て、国や人種の違いを超えて国際的に働くことに漠然としたあこがれを抱いていました。そんな私にとって、国際分野を多方面から学べるこの学科はとても魅力的だったのです。
津田塾で印象に残っている授業はなんでしょうか?
津田塾と言えば「英語」というイメージがありましたが、それは本当だなと実感しました。自分の考えを文章にまとめるComposition(ライティング)の授業では、枠にとらわれず自由な発想で書くことを指導されます。高校までの英語学習は、設問があってそれに答えることがほとんどでしたが、津田塾ではより主体的に、実践的なツールとして英語を習得するのです。たとえばOral English(ディスカッションやコミュニケーション)の授業なら、積極的に意見を述べることが求められます。少人数クラスだから必ず一人ひとりに発言の機会がありますし、とても濃密な学びでした。英語力別にクラス分けされるため、自分の能力にあったクラスで学べる点もとても魅力的です。
イギリスに住んでいたときは、日常生活の中で自然に英語が身につきましたが、津田塾の英語の学びは、現地で英語を習得するプロセスに近いと感じます。大学受験時と比べて、英語の勉強時間は減っているはずなのに、英語でのコミュニケーションが取りやすくなっただけでなく、TOEICの点数が100点近く上がって驚いたことを覚えています。まさに「生きた英語」を学び直す感覚がありました。



英語ミュージカルで、自分と向き合い、成長できた。

在学中、英語でミュージカルを上演するインカレの団体「Model Production」(東京学生英語劇連盟。以下MP)で精力的に活動されたそうですね。入団した経緯をお聞かせください。
大学入学後にやりたいことが2つありました。それは演劇と英語です。その2つを同時に叶えられるものはないものか探していたところ、運命的にMPのフライヤーを目にしたのです。「舞台を作る過程を通して『生きた英語』を学ぶ」というコンセプトにすごく感銘を受けました。ガイダンスに出席したところ「求めていたのはこれだ!」と即決でしたね。

MPでは、活動中のコミュニケーションはすべて英語で行います。メンバーの英語力にばらつきがあり、舞台制作に関しては専門的な会話をしなければならず、かなり苦労しました。限られた時間の中で一つの舞台を妥協なく作り上げていく上では、自分の意見をしっかり相手に「伝える」必要があります。また聞く方も、相手の真意を「くみ取る」ことに真剣になります。英語しか使えない極限状態で、お互いに尊重し、理解し合おうとする姿勢をMPでは「Talk & Listen」と呼んでいました。「心のコミュニケーション」を何よりも大事にしていたのです。この姿勢が語学の上達につながっただけでなく、人間関係を築く上で大切なことだと実感でき、とても貴重な経験になりました。
本格的に舞台で歌い、踊ることについて、難しさを感じることはありませんでしたか?
そうですね。MPでは、入団するためにオーディションがあり、キャスト(=演者)の役柄を決めるテストの際には、みんなの前でパフォーマンスをしなければなりません。実は、私はもともとシャイなタイプ。人前に立つことに苦手意識があり、すぐに緊張して自分を出せないことがそれまで多くありましたから、まずそこが関門でした。

歌や踊りの技術面については、その道のプロの方々が指導してくれます。それ以上に重視されていたのは、私たちがよく使っていたフレーズ「Jump in / Just do it」の精神、「失敗してもいいから、思い切ってやってみる」という気持ちです。失敗することは恥ずかしいと思っていた私にとって、考えすぎずにとにかく感じたことをそのまま表現してみる、さらけ出してみるということは容易ではありませんでした。それでも、受け入れてくれる温かい仲間たちのおかげで、少しずつ自分らしい演じ方を見つけていったように思います。自分自身と、そしてメンバーと向き合った3ヵ月の練習期間は、失敗してもあきらめず挑戦を繰り返す濃密な日々でした。

本番では、全4回の公演でその都度改善を重ね、千秋楽でついに自分でも納得のいく仕上がりになり、最後のカーテンコールでは涙が自然とあふれ出てきました。それまでの日々がフラッシュバックし、言葉には表せない達成感で胸がいっぱいになったことを覚えています。



震災後の社会に、ポジティブなエネルギーを届けるために。

代表を務めた入団2年目に東日本大震災があり、団体の活動に大きな影響があったそうですね。
練習場を借りていた法政大学で被災し、キャンパスで不安な一夜を過ごしました。その後も試練は続きます。先の見通しが立たないために練習はしばらく休止。メンバーやそのご家族にも不安が広がっている中、活動を続けるべきか悩みました。そんなときの支えはやはり仲間たちです。話し合いを重ね、MPの活動を続けるメリットとデメリット、またデメリットがある場合は可能な対策を検討した結果、公演はやるべきという結論に至ります。沈みがちな社会に対して、私たちのポジティブなエネルギーを届けて元気にすることができるのではないか。そんなエンターテインメントの力を信じて、公演を敢行することにしたのです。本番当日は、1年目のときとは違う緊張感がありましたが、一致団結する気持ちは前年以上でした。最大限、震災の影響に配慮しつつ、観に来ていただいた方はもちろん、その先にある社会に向けて、ありったけの思いを届けることに集中しました。無事公演を成功させることができたのは、仲間たちやそのご家族をはじめ、OB・OGの方の支えがあったからこそだと思っています。今のコロナ禍は当時の状況とリンクするところがあり、「自分ができることを周りと助け合いながらやっていこう」と前向きな気持ちでいられるのは、この経験があるからです。



学生時代に身につけた、粘り強いコミュニケーション力。

2013年に卒業され、化粧品会社の株式会社コーセーに就職されます。志望した理由と、入社から現在までの業務内容についてお聞かせください。
志望した理由は大きく分けて3つあります。語学を活かせること、女性をはじめ多くの人に自信を与えられること、そして自己成長できる環境があることです。

中学・高校と女子校で、大学までの10年間、女性ばかりの環境で過ごしてきたことと、昔から自分に自信が持てずコンプレックスが強かったこともあり、メイクに関心がありました。大学に入り、「人の心理」に対して専門的に学んでみたいという思いが芽生え、心理学のゼミを専攻。最終的には、自分が特に興味のあった「化粧における心理」について研究するようになりました。たとえば、チークをつける/つけない、またはつける箇所で人に与える印象がどう変わるのか。モデル画像を何通りも用意し、アンケートを取り、そのデータを解析して相関関係を分析しました。扱うデータ量が非常に多い上に、思うような結果にたどり着けず、途方もない地道な作業の連続でした。化粧品が人に与えるポジティブな影響は自分自身が実感してよくわかっていましたが、それがようやく数値として明確になったときはその可能性の大きさを感じました。
その頃から、化粧品を通じて人の魅力や自信を引き出し、エンパワーしたい(人を元気にしたい)と思うようになりました。化粧品業界に絞り込んで就職活動を行う中で出会った会社がコーセーです。少数精鋭を掲げ、若手にも裁量をもたせて、挑戦させてくれる環境があるところや、部署間の異動を積極的に行って社員の視野を広げる方針が、私にはぴったりだと感じました。

入社してまず、大阪の支社で2年ほど化粧品専門店の営業職を経験しました。その後、セレクティブブランド事業部で「コスメデコルテ」の商品企画をはじめ、新ショップのオープンやグローバル会員制度など新規プロジェクトに3年間携わりました。戦略ブランド事業部ではコーセーの名を冠しないブランドのひとつ「アウェイク」のリブランディングに関わり、現在のTarte事業管理課でも、 同ブランドの商品企画を担当しています。

これまでのお仕事で、英語をはじめとした津田塾での学びがどのように活かされていますか?
化粧品を企画する上では、消費者もはっきり意識していない潜在的なニーズを突き止めて、そこにフォーカスした商品を提供することがとても重要です。とにかく足を動かして、実際に店舗を巡り、お客さまの購買行動を観察したり、インタビュー調査を実施して被験者のマインドや生活習慣等を徹底的に深堀りしました。そこから得られたデータをもとに自分なりに分析し、仮説を打ち出すのです。このあたりは大学で学んだ心理学が活かせていると感じています。

英語を使う機会もたくさんあります。たとえば、海外の一流プロダクト・デザイナーに対して、商品のコンセプトや容器のデザインについてプレゼンしたり議論する機会がありますが、英語で意思疎通するのは簡単ではありません。こちらの意向を伝えたとしても、想定通りに反応があるとは限らないからです。文化的背景によって美の感性が異なることもあります。美にこだわりのある相手に納得して進めてもらえるよう英語で説得するのはとても大変です。そのため私は、打ち合わせ前に伝えるべきことを英語で整理するようにしていました。通訳の方もいらっしゃるのですが、必ずしも正しいニュアンスで訳してくれるとは限らないため、それであれば「自分の言葉で伝えた方がいい」と。

英語の繊細なニュアンスを理解して伝えるスキルや粘り強くコミュニケーションを取ろうとする精神は、津田塾で培われたものだと思います。それに、上手くいかなくても過度に落胆しない。東日本大震災で困難を乗り越えたMPでの経験もやはり大きいと実感しています。困難のなかにあっても、それが自己の成長につながっていると前向きにとらえ、楽しんでしまうぐらいのスピリットを身につけました。

今後の目標や新たに挑戦したいことをお聞かせください。

今後の目標はやはりヒット商品を生み出すことです。ただ売れれば何でもいいというよりは、今までの概念や常識にとらわれない新しい商品や体験の開発に携わりたいです。化粧品のもつ可能性をこれからも探求し続けていきたいと思います。私は、創立者の津田梅子先生の時代を切り開いていくパワフルさ、バイタリティをとても尊敬しています。先生のようにこれからも挑戦し続けたいですね。

さらに美容に関する知識の幅を広げるために、肌に関することだけでなく、アロマやホリスティックビューティ*などの分野も学んでいきたいと思っています。

*ホリスティックビューティ:見た目の美しさだけでなく、身体や心の健やかさを含む、包括的な「美」の概念のこと。

いい意味での「エゴ」を、津田塾が授けてくれた。

改めて「津田塾らしさ」について、どのように考えますか?
私の考える「津田塾らしさ」は、自らの信念やブレない軸、つまり「いい意味でのエゴ」をもっているということです。

周りの津田塾出身者を思い浮かべると、自分自身としっかり向き合い、自分はどんなことにやりがいや喜びを見出し、今後どうなりたいかなど、ご自身のことをよく理解されている方が多いと感じます。自己対話を大事にするからこそ、「エゴ」が生まれ、周りに振り回されずに、自分らしく、前向きにチャレンジし続けることができるのでしょう。

今でも何か困ったときに相談する相手は、津田塾で出会った友人が多く、その出会いに感謝しかありません。
最後に、津田塾を目指す高校生にメッセージをお願いします。
津田塾は「人とのつながり」を大事にする大学なので、とてもアットホームな雰囲気があります。少人数での授業、他校との交流、就活の全面バックアップなど、さまざまな出会いを引き寄せてくれました。

それに、自分のやりたいことがまだ見えていなくても焦る必要はありません。高校の頃の私もそれが明確だったわけではありませんし、今でさえ模索中です。それでも在学中は、いつも「自分はどうありたいか」を考えていたように思います。

「女性の活躍」を掲げる津田塾には、そこに賛同する意識の高い仲間が多く集まり、大学のスピリットを授業など至るところで感じることができます。ぜひ津田塾で自分を高めてくれる友人たちと語り合いながら、自身と向き合い、ゆっくり進むべき道を見つけてください。
Copyright©2019 Tsuda University.
All rights reserved.