枠を超えてチャレンジしたい。
好奇心に導かれたアナウンサーという「天職」。

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後藤 晴菜 GOTO Haruna

学芸学部情報科学科 2013年卒業

津田塾大学では情報科学科に在籍し、プログラミングを学んだほか、メディアを研究対象とするメディアスタディーズ・コース*を専攻。文系/理系の枠を超えた学びを通してたどり着いた先が、アナウンサーという職業でした。入社した日本テレビではニュース・情報番組やスポーツ番組を担当。最近は、番組の企画でヨガのインストラクター資格を取得されました。自身の幅が広がったという津田塾での経験は、今の仕事にどのように活かされているのでしょうか。
*現在はデジタルメディア副専攻へ改組しています。

理系であっても、英語は4年間しっかりと。

はじめに、津田塾に入学された経緯をお聞かせください。
私は愛知県出身で、当初は東京の大学に進学するイメージをもっていませんでした。私も両親も地元志向だったため、実家から通学するのが当たり前だと思っていたのです。とはいっても、地元周辺だけではどうしても選択肢が限られます。こうして志望校を検討する中で、津田塾が候補になった理由のひとつは、学生が全国から集まること。附属校がなく、ひとりで上京しても、みんなと友達になりやすく、さみしくないだろうと思ったのです。小平キャンパスが緑いっぱいだったのも決め手のひとつになりました。「この場所でなら、徐々に東京になじんでいけるだろう」と。

高校生の頃は農業系の仕事に憧れがあり、理系を選択していました。ただ、英語も得意だったので、英語教育に定評があり、入試で英語の比重が大きい津田塾の情報科学科であれば多少は有利かなと考えていたのも事実です。正直なところ、この時点では自らの関心が明確に見えていたわけではありません。でも、振り返ってみれば、津田塾での学びが今の仕事につながったので、当時の選択は大正解でした。

実際に津田塾に入学され、その学びの特徴について感じたことをお聞かせください。
情報科学科では、1年次からプログラミングの授業が始まりました。パソコンの前に張り付いて課題に追われる毎日だったことを思い出します。理系の学科ですが英語も必修科目でみっちり学びました。しかも、「英語を勉強する」よりは「英語を使って学ぶ」面が大きかったですね。在学していたのは10年ほど前ですが、当時からジェンダーについて英語で調べ、英語で議論する授業がありました。「とりあえず英語を使ってみよう、話してみよう」という意識をもてたのは津田塾にいてこそですね。正確な文法で話すことがすべてではありません。自分の意見を表現すること、コミュニケーションをとることが大事だと気づいたのもこの頃でした。

メディアについて学んだおかげで、道が開かれた。

3年次の専攻として、メディアスタディーズ・コースを選択されたそうですね。どのような内容だったのでしょうか?
文系と理系の垣根を超えて学芸学部の全学科の学生が、選択できるコースです。メディア全般について学び、映像作品を制作するような授業もありました。私が所属していたセミナーでは、テレビの役割や、広告の在り方がテーマで、それこそプロパガンダの問題などを含めて議論したものです。情報科学科の分野でプログラミングなどのスキルを突き詰めるだけでなく、もっと自分の枠を広げたいと感じていた私にとって、このコースはうってつけでした。

将来の進路としてアナウンサーという職種を漠然と思い描いたのは2年次の終わり頃です。メディアスタディーズ・コースを選択したことで、関連する知識や自分の意見をしっかり身につけることができたのは、将来に向けて、自分の足場を固めるためにも有益でした。ただ、就職活動では銀行やメーカー、IT企業などにもエントリーしました。その時点ではアナウンサーはあくまで選択肢のひとつ。自分の可能性を狭めたくなかったのです。

熱狂的なファンでも楽しめる「伝え方」を目指して。

2013年に日本テレビに入社され、アナウンサーとしてのキャリアがスタートしました。仕事内容についてお聞かせください。
現在は、いくつかのレギュラー番組を担当しながら、スポーツ中継にも携わることができています。スポーツ中継については入社する前から希望していたことでした。今では駅伝・マラソンや体操の中継に関わることが増えています。

アナウンサーという職業には、決まった出社時間がありません。ある程度日時が固定されている定例業務もありますが、私の場合は日によって行き先や会う人が異なるのが常です。いつも緊張感はありますが、ほどよい刺激があって、私にはぴったりな仕事だと思います。

アナウンサーとして心がけているのはどんなことでしょうか。
時に、自分がまったく詳しくないテーマを取材することもあります。そこで「私は初心者なので」「昨日聞きかじったばかりなので」といった言い訳は許されません。事前の勉強は必須です。さらに、視聴者には熱狂的なファンやその情報にとても詳しい方もいらっしゃいますから、「そんな方々でも楽しめるような新鮮な切り口はないだろうか」と常に伝え方を試行錯誤しています。そういう姿勢で取り組み続けていると、少しずつアナウンサーとして自分のスキルが磨かれていくのがわかり、充実感があります。粘り強く努力した津田塾での経験はここでも活きているはずです。

幅を広げ続けよう。学生の頃からの心がけです。

これまでで印象に残っている仕事を教えてください。
2018年の平昌オリンピックです。スピードスケートの「チームパシュート」という競技でインタビューを担当することが、大会本番の半年前に決まりました。当時の私はパシュートという単語さえ初耳だったほど。競技人口がどれぐらいで、どんな選手がいて、どの国が強くて、といった情報すらもち合わせていませんでした。けれども「日本はメダルの有力候補だから」と聞かされます。まさにゼロから知識を積み上げていく覚悟で準備に臨みました。日本チームの合宿先を訪問し、選手にあいさつをして、自分の顔と名前を憶えてもらうところからのスタートです。その後、日本国内の大会すべてを現地で取材しました。実際に足を運んで見聞きすること。そういった地道な作業をいとわないこと。「津田塾らしさ」にも通じる実直な方法で、知識を自分自身に刻み込んでいったのです。

平昌での本番では、オランダに勝てば金メダルという決勝レースの前から、感極まって涙があふれました。実際に日本が決勝を制した瞬間の感動は、何ものにも代えられません。長期にわたって取材してきたため、いつのまにか自分もチームパシュートの世界にどっぷり入り込んでいました。仕事のやりがいを強く感じた瞬間です。
今後アナウンサーとしてチャレンジしたいことをお聞かせください。
最近、番組の企画でヨガのインストラクターの資格を取得しました。これも学生の頃から意識し続けてきた「幅を広げる」取り組みのひとつです。近年はフィットネス関連の需要が高まっているように感じます。こうしたイベントや番組ではMCとインストラクターがそれぞれ必要になるのですが、今回資格を取ったことで二足の草鞋を履くことができるようになりました。今後のキャリアに活かしたいですね。今、社内では新しい企画が積極的に求められています。地上波の枠を超えて、何ができるか。考えるだけでわくわくします。



津田塾のOGは、自立していて、向上心にあふれている。

あらためて、津田塾での4年間を振り返るといかがしょうか?
自分のフィルターを取り払い、視野を広げることができた期間だったと思います。通常、大学では4年をかけてテーマを絞り専門性を深めますが、私は3年次以降、絞るというよりむしろ関心が広がっていったような感覚があります。メディアスタディーズ・コースを専攻したのもアナウンサーを目指したのもその頃でした。最初から道を絞る必要はありません。一度進んでも、違うと思ったら引き返せばいいのです。少なくとも私はそのやり方が性に合っていましたし、実際それでやり抜いてこられたという自負もあります。
最後に、津田塾を目指す高校生にメッセージをお願いします。
社内にも津田塾のOGがいます。『津田津田しい』という言葉が学内に浸透していたように、どこか”津田塾っぽさ”を感じます。私が思う“津田塾っぽさ”とは、地に足がついていて、学ぶ意欲が高く、ひとりの人間として自立しているということ。それは、津田塾の長い歴史のなかで育まれたものなのでしょう。「女性の社会進出を促進」や「女性リーダーの輩出」といった津田塾の教育モットーは、私が在籍していたときも大学に根付いていましたが、社会に出てその本当の重みがわかりました。専門知識のみならず、社会で自分の能力を発揮するのに欠かせない向上心が身につく学校です。津田塾出身というだけで自信がつき、背中を押してもらっている気持ちになります。

高校生の皆さんは、まだ自分の方向性が定まっていなくても、必ず4年間でやりたいことがみつかるはずです。入学前のイメージとギャップがあったとしても、それまでとは違った新たな関心が育まれるかもしれません。そういう可能性の広がりを、ぜひ津田塾で楽しんでほしいですね。

【コラム】

創立者津田梅子が1900年に「女子英学塾」を開学して以来、後藤晴菜さんをはじめとする多くの卒業生たちが、「津田スピリット」を胸に、社会へと踏み出してきました。「Diversity of Our Lives」では、創立120周年を記念し、21世紀を生きる若い女性達のロールモデルとなる卒業生を紹介しています。
卒業生自らが歩んできた道のりを示しながら、受験生や在学生に向けてメッセージを送ります。ぜひ、こちらもご覧ください。
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