オンライン授業の可能性と
これからのハイブリッド授業のありかた

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小舘 亮之 KODATE Akihisa
総合政策学部 総合政策学科 教授
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橘 風花 TACHIBANA Fuka
総合政策学部 3年

第1ターム、第2タームのオンライン授業を経て、9月7日からの第3タームでは、対面授業とオンライン授業を組み合わせたハイブリッド形式の授業が行われています。講義を受ける学生はもちろん、教員にとっても初めての経験となったコロナ禍における授業。それぞれの立場から、オンライン授業で感じたこと、オンライン授業の可能性、オンラインからハイブリッドとなって変わったことなどを伺いました。
小舘先生のご専門と、橘さんが小舘先生のセミナーでどんなことを学ばれているのか、教えてください。

現代社会に溢れるデータの読み取り方とその利用方法を考える

小舘:  ライフログ(人びとの日々の行動を記録したデジタルデータ)を利活用することによって、人びとの生活を豊かにする社会情報システムなどについての教育・研究しています。ICT(情報通信技術)の進歩により、情報の品質は、大きく向上しつつあります。特に、従来は取得・収集が困難であった個人の行動履歴も、センサやIoT(Internet of Things)関連技術によって、高精度・高品質な取得、蓄積が可能になりました。
 分析したデータは、よく知られたところでは、交通状況を把握することで渋滞を緩和するといったように、都市の機能やサービスの充実などに応用することができます。データの流れを知り、どう集めるか、より使いやすくするにはどのように加工すべきかなどを考えています。さらに、扱うデータによってはプライバシーに関する新たな問題も常に発生するため、最近はこれらの問題の具体的な課題発見と解決に関する研究に取り組んでいます。
橘:  私はもともと言葉に興味があり、同じく小舘先生のセミナーに所属している原口史帆さんと古市香菜子さんと共同で自然言語処理の研究をしています。特に、人がインターネット上で書き込む発言について調べています。具体的には、ヤフー株式会社が研究用に使用を許可している「Yahoo!知恵袋」に書き込まれた相談内容とその回答を、Pythonというプログラミング言語で分析しています。
 まだ始めたばかりですが、インターネット上にあふれる人を傷つけるような言葉や心ない発言がどうして起こるのか、顔が見えない相手に対してだと何故そのような発言をしてしまうのかなどについて、研究してみたいと思っています。そして、どのような言語表現が使われているのかをデータを分析して調べることで、人を傷つけるような書き込みに対して、事前に注意を促せるような仕組みをつくることができないかと考えています。
小舘先生のセミナーにおいても、4月からの第1タームは、オンライン授業がメインとなりました。オンライン授業において感じたメリットはありましたか。また、授業において工夫された点などはありましたか。

少人数制で手厚いサポートがあるからこそ展開できた、充実のオンライン授業

橘:  まず、満員電車で通学する必要がないため、時間と体力をうまく使えることは大きな利点でした。これまでの対面授業では、千駄ヶ谷キャンパスから1時間ほどの距離にある小平キャンパスの授業を履修することは、移動時間の制約から難しかったのですが、オンライン授業によって興味のある他学部の授業を履修することができるようになり、履修の幅が広がりました。これも、オンラインだからこそ実現できたことだと思います。
 また、授業時間内で理解することができなかった点を、後からオンデマンドの録画を見返して確認できるというのは、これまでの対面の授業にはなかったメリットだと思います。自分のペースで、しっかりと理解できるまで授業を見直せるというのは、すごくありがたいですね。当初は、大学のキャンパスで友人たちと一緒に勉強ができないことや、先生方に気軽に直接質問することができない状況は厳しいと感じていました。けれども、勉強するリズムを掴めてくるとオンライン授業にもこのようにいろいろなメリットがあると思えるようになりました。
橘:  津田塾大学は規模が小さく、同学年のほとんどが知り合いでもあり、先輩後輩のつながりも大切にする風土があります。仲間と頼り合える関係が築けていることもよかったと思っています。一方、2020年度に入学した1年生に関しては、入学して同級生と直接顔を合わせキャンパスで学び合う前に、このような状況になったため、オンライン授業での課題に取り組むのは大変だろうと思っていました。そのような折に、先生方から声をかけていただき、「上級生との質問コーナー」の場を設けることになりました。オンライン、対面の両方で1年生の授業のサポートを行っています。ここには、3、4年生が10人程所属しており、昼休みなどを使って、1年生が課題でわからないことを上級生に気軽に質問してもらえるような窓口になっています。私自身も課題でわからないことがあった時には、先生や先輩方に助けていただいた経験がありました。その焦りや戸惑いも理解できるため、1年生をサポートすることができたらと考えて、授業の空き時間や昼休みなどを使って、週に3回ほど参加しています。

小舘:  オンライン授業は、学生にとってはもちろんですが、私にとっても初めての経験で、不安もありました。当初から、大学がオンライン授業のためのプラットフォームとサポート体制を整えてくれたこともあり、比較的スムーズに移行することはできましたが、初期の頃は学生に講義の内容が届いているかという不安で余裕もなく、90分の授業を終えるたびに、反省点がいくつも見えていました。しかし、授業を重ねていき、学外で行われているオンライン授業に関するシンポジウムに参加するなどして多くの事例について学んでいくうちに、可能な限り講義を受けている学生の立場に立つ、スマホなどの小さな画面で講義を受けている学生もいることを想定して教材を用意する、授業に少しずつ変化と区切りをつけながら進めるなど、工夫すべき点もわかってきました。

橘:  教室で先生が対面で教えてくださり、周囲に一緒に勉強する仲間がいる講義と異なり、家で一人で画面に向かうオンライン授業では、集中力を保つことが難しいと感じることもありました。でも、小舘先生のオンライン授業は、適度に休憩をはさんでくださったり、内容に変化をつけてくださったりしていたので、集中力を切らさずに楽しく授業を受けることができました。

小舘:  そういってもらえると安心します。単調になってしまわないよう、Web上の新たな機能やコンテンツを共有するなどの工夫をしてきました。最近の授業では、実際にWebメディア業界の方をゲストとしてお話を伺うなど、オンラインだからこそ実現できるような機会を設けることもできました。
 また、私の場合は、オンライン授業を行うにあたって、昨年までと同じ科目の授業についても、その内容や教材を根本的に見直すよい機会にもなりました。オンラインで学生と共有できるようにと、資料や教材などをアップデートできたと思っています。

「学びを止めない」ために構築された
津田塾大学のオンライン授業時間割

津田塾大学のオンライン授業時間割は、対面授業の実施が難しいと判断された今春、津田塾大学が独自に構築したプラットフォームであり、津田塾大学で行われるすべての授業が網羅されています。学生も教員も授業名をクリックするだけでZoom会議にアクセスできます。統一のプラットフォームから授業名をクリックするだけで、バーチャルの教室で同時双方向型のリアルタイムの授業を行うことが可能になりました。また、授業の動画、音声は自動的に保存されるため、申請すれば後日閲覧することもできます。
「学びを止めない」「平時と変わらない学びの環境を」と津田塾大学が整えた新たなプラットフォームであり、これからの学びの新たなツールでもあります。



顔が見える安心感と緊張感。それぞれの学生に合った参加が可能に。

第3タームからは、社会状況を鑑みて、オンラインと対面授業を組み合わせたハイブリッド形式の授業となりました。これまでのオンラインのみだった授業と比較して、ハイブリッド授業についてはどのように感じていますか?
小舘:  津田塾大学では、第3タームからハイブリッド授業を取り入れ、授業ごとに履修学生全員の承諾を得て実施しています。私のセミナーでは3週間に一度ハイブリッド授業を行い、毎回平均して10人中8人が対面授業に参加しています。やはり、教室で直接学生に会うことができるのは、すぐに様子がわかって安心しますし、いきいきと学んでいたり、友人と交流したりする姿を見ることができてうれしいですね。また、ちょっとした会話から困っていることなどを感じることができるので、サポートもしやすいです。
 学生たちは、コンピュータを使う作業も行っているため、操作を進める中で操作がわからなくなる場面もしばしばあります。対面であれば、実際に学生の使用している画面を操作しながら直接指導できます。もちろんオンラインで参加している学生に対しても、自身のパソコンで学生のパソコンの状況を再現しながら作業方法を伝えるなど、同等の指導ができるよう工夫をしています。
 ハイブリッド授業においては、オンラインで授業を受けている学生もいるため、なるべく教室での参加者とオンラインでの参加者が同じように感じられるような空間を作ろうと心掛けています。オンラインで参加している学生にも、均等に発言の機会を設けるようにすることで、授業の一体感を感じてもらえたらと思っています。
ハイブリッド授業の一場面
橘:  家で部屋にこもって授業を受けるというスタイルも場合によっては集中できますが、大学で教室の机に向かって、先生の講義を直接聞くことができるのは、やはり、緊張感があって気が引き締まります。わからないところ、疑問に思ったところを、すぐに友人や先生に相談できるというのも、大学にいるからできることなのだと改めて実感しました。プログラミングの授業などでは、一人で解決できないことも多いため、対面授業では直接先生に聞けるという安心感があります。
 いつでも連絡が取れて便利だというオンラインのよさはあるのですが、私の場合は、用事がないと連絡を取りづらく、オンラインならではの遠慮のようなものも感じることもありました。また、実際に友人に会えば、授業以外でも何気ない会話が弾み、そこから、勉強のことや将来のことなど、一人では得ることのできない気づきを得られることもあり、人とのコミュニケーションの大切さを感じています。

小舘:  学生がそれぞれの望む形で授業に参加できるというのは、新たな可能性でもあるので、教える側も、対面とオンラインとどちらの立場も考えて柔軟に授業を展開していく必要があると思っています。大学の手厚いサポートがあってこそ、うまく回っているのだとも感じています。


コロナ禍で学生生活に不安を感じるという受験生も多いと思います。そんな中でも、学生がいきいきと学ぶことのできる津田塾大学の魅力とはどのような点だと感じますか?津田塾大学を志望する受験生へメッセージをお願いします。
小舘:  完全オンライン授業実施時、ハイブリッド授業実施時など、その時々の状況で、学生自身、教職員がそれぞれにできることを考え続けてきたように思います。大学としては、どうしたら学びの環境よりよく整え、どの学生も等しく授業に参加できるかを考え、前向きに取り組めたことは、このような状況において得られた新たな強みだと思いました。オンラインの利点を活かし、時間にとらわれることなく、教員と学生とで気軽な双方向コミュニケーションを取ることができたのも、少人数教育を実践する津田塾大学の学びの特長であり、学生と教員との距離の近さゆえでしょう。自主的なグループを作って学生がともにお互いの学びをサポートしあう姿などもいろいろな場面で見かけました。津田塾大学には、どんなことがあっても前向きに学び合い、サポートし合える環境が整っています。安心して、自分の学びを見つけにきてください。

橘:  何を勉強するにしてもわからないことはあって当然だと思います。それを一つずつ解消して知識や経験を深めていく楽しさが、津田塾大学の学びの中にはたくさんあると思っています。学生同士、先生と学生との距離も近く、疑問があったら友人や先生方に相談できますし、よりよい解決方法を一緒に探ってくれて支え合う雰囲気があります。そのことを、今回のオンライン授業、ハイブリッド授業を通してより実感することができました。コロナのような状況でも前向きに学べた経験は、これからもいろいろな場面で生きてくる気がしていますし、学びの環境も柔軟に変わっていくのだと思います。まだ、将来何をやりたいか見えていない、何を勉強したいかわからないという受験生の方でも、津田塾大学での学びから、さまざまな夢が見えてくるはずですし、それを叶える方法も見つけられるのではないでしょうか。


  • こちらの記事については新型コロナウイルス感染防止を最優先に、十分な対策を講じるため取材はオンラインにて行い、撮影は3密回避および衛生管理を徹底したうえで短時間で行いました。
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