文系だった私たちがデータ・サイエンスに夢中に。
新しい自分と将来に出会った4年間。

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井ケ田 沙紀 IGETA Saki
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堤 菜留美 TSUTSUMI Narumi

総合政策学部総合政策学科

井ケ田 沙紀 IGETA Saki
総合政策学科4年
在学中はインターンシップやビジネスコンテストなどに意欲的に取り組む。卒業後は富士通株式会社にエンジニアとして就職予定。(写真・左)

堤 菜留美 TSUTSUMI Narumi
総合政策学科4年
統計に関するコンペティションに2度出場したほか、ハッカソン(短期集中でデータ分析技術とビジネス提案を競うイベント)への出場も果たす。卒業後は株式会社NTTドコモに就職予定。(写真・右)
「井ケ田さんは努力の天才。そして身につけた能力を惜しみなくみんなに分け与えてくれる」と堤さんが言えば、井ケ田さんは「堤さんは思いやりがあって勇敢な人」と笑う、息がぴったりの二人。「高校までは数学が大の苦手だった」と口を揃えます。しかし総合政策学科での学びを通して、それぞれプログラミングと統計への関心を高め、IT関連企業へ就職するに至りました。その軸となったのは、データを分析・解析して課題解決に結びつける「データ・サイエンス」。4年間を通じてこの学問にどのように向き合い、どんな成長を得たのか語っていただきます。




ジェンダーに縛られず、
個性を発揮できる環境に惹かれた。

Q はじめに、津田塾大学の総合政策学部に入学した理由をお聞かせください。
井ケ田:津田塾は、私が通っていた中高一貫校の創設者とつながりがあり、かねてから親近感を抱いていた大学でした。中高が女子校だったことも、女子大である津田塾に興味をもった理由のひとつ。ジェンダーにとらわれることなく、各々が個性を発揮できる環境が心地良かったのです。堤さんは、津田塾だけに絞って受験したんですよね。

堤:
「津田塾に入れなかったら、どこに行けばいいんだろう」とまで思い詰めていました(笑)。私は福岡県で生まれ育ち、高校の頃に参加した「大学フェア」で津田塾を知ったんです。さまざまな大学の担当者が説明をしてくださるイベントですが、関東圏など遠方の大学はパンフレットが置いてあるだけの場合も少なくありませんでした。しかし津田塾は担当の方がきちんとブースにいらっしゃったのです。大学についてのていねいな説明と「ご自身に一番合う大学を見つけて」という励ましの言葉は今でも鮮明に覚えています。
井ケ田:何が決め手でしたか?

堤:第一の理由は、井ケ田さんと同じく女子大であること。私は中学が共学、高校が女子校です。両方の雰囲気を経験した上で、やはり性差に縛られない女子校が魅力的だと感じました。もうひとつの理由は少人数教育。わざわざ上京するからには、しっかりと勉強できる環境に身を置きたいと思ったのです。総合政策学部を選んだ理由は、課題解決能力を伸ばせるカリキュラムに惹かれたことと、専攻を決めるのが大学3年次と遅めだったこと。1、2年次に社会情報学、福祉、公共政策、経済など幅広い分野を学ぶので、当時まだ学びたい分野が明確に定まっていなかった私にはうってつけでした。

数学は苦手でも、
データ・サイエンスには前向きになれた。

Q 実際に入学して、どのような気付きがありましたか。
井ケ田:データ・サイエンスといういかにも数学らしい科目の履修が不可欠だと知って驚きました。中学生の頃からずっと苦手意識があったから、受験でも文系を選択したのに(笑)! 忘れもしないのは、データ・サイエンスの初回授業です。高校数学の理解度を測るペーパーテストが行われ、近くの席の学生がスラスラと解いている横で、私は手も足も出ませんでした。散々な結果に落ち込んだのを覚えています。

堤:ほとんど解けなかったのは、私もです。総合政策学部ではデータ・サイエンスを学ぶことは知っていました。そのツールとして数学の知識が必要になるかもと思ってはいたのですが「1、2年次の必修だけ我慢して乗り切ろう」という魂胆だったので(笑)、ペーパーテストを受けたときは「早くも洗礼だ」と思ったものです。
Q 苦手な数学に、どのように向き合ったのでしょうか。
堤:幸いにも、授業では高度な数学の知識が求められることはなく、四則演算ができれば十分でした。とはいえ、慣れないソフトを使った分析や考察には戸惑いがあったのも事実です。心強かったのは、統計が得意な友人たちが身近にいたこと。わからないことはていねいに教えてくれる上に、彼女たちはとても楽しそうに統計の課題に取り組むのです。その姿を見るうちに「データ・サイエンスを得意にならなくてもいいから、できるだけ楽しもう」と気持ちを切り替えられました。

井ケ田:私も同じです。きっかけのひとつは、Webサイトの制作に夢中になったこと。「時計を表示させてみるのはどうだろう」「予約システムを作ってみたい」「ログイン機能をつけよう」などと工夫を凝らすのが面白くて没頭しました。Webサイトでは飽き足らず、アプリの制作やアプリを使って得られたデータの分析にもチャレンジ。数学にも用いられる論理的思考が必要でしたが、好きなことを実現するために学ぶことは全く苦になりませんでした。正直なところ、数学だけでなく統計やデータ・サイエンスに対しても未だに苦手意識はあります。それでも「好き」になれた。これは入学当初からの大きな変化です。

堤:
授業の影響も大きいですね。先生方は難しい数式はできるだけ省いて、分析を行う目的や解釈といった、とっつきやすい切り口から説明してくれたので、数学が苦手でも興味をもって臨むことができました。

井ケ田:
たしかに。もうひとつ、データ・サイエンス系の科目の勉強に前向きになれた要因は、友人同士で教え合う機会が増えたことです。誰かに説明するつもりで勉強すると、より理解が深まります。必死で勉強したことを教えると喜ばれ、いっそう大学での学習に身が入るようになるという好循環が生まれました。

実感と結びつくと、データはぐっと身近なものに。

Q 印象に残っている授業はありますか?
堤:2年次の「統計Ⅱ」の授業で、相関について学んだときのことです。チョコレートの消費量が多い国ほど、人口あたりのノーベル賞受賞者数が多いことがデータで示されました。このデータだけを見ると、チョコレートをたくさん食べるとノーベル賞を受賞できるのかと思わされますが、そうではないことは直感的にわかります。ここで注目すべきはGDP(国内総生産)でした。GDPが高い国ほど嗜好品を楽しむ余裕があり、教育への投資もできることからノーベル賞受賞者数もまた多くなるという理由だったのです。この授業から学んだのは、いくらデータが正しくても、人間が解釈を誤ると正しい結論にはたどり着けないということ。データを前に「なぜこの結果になったのか」「背景には何があるのか」と考えることが大切で、文系の学問と通じるものがあります。それを知ったとき、どこか遠く感じていた統計がぐっと身近に感じられました。

井ケ田:解釈によってデータの見方が変わってくる。統計は、日常生活で実感していることと地続きだったんです。世の中に溢れる情報や数値を鵜呑みにしなくなったという面でもかなり学びがありました。私が印象に残っているのは「アルゴリズム」の授業です。BMI(ボディマス指数)を算出する仕組みを作ったり、クレジットカードの番号を入力してそれが有効かどうかを確かめたりするアルゴリズムを作りました。ひとつでもミスがあるとプログラムは実行されません。システムを論理的に組み立て、あらゆるエラーを直して実行されたときの達成感はひとしおです。この喜びを毎週の授業で味わえるのが楽しくて、プログラミングの魅力に引き込まれていきました。

データ・サイエンスを軸に、キャンパスを飛び出して。

Q データ・サイエンスを活かして、学外でも活動されたと聞きました。
井ケ田:私は主にふたつの活動に取り組みました。ひとつは中高生向けのプログラミングスクールでのインターンシップ。メンターとして生徒たちにプログラミングを教えています。もうひとつは株式会社丸井が行っているビジネスコンテストへの出場です。時代背景を踏まえた新たな事業のアイデアを競うというもので、私のチームは、コロナ禍でステイホームを余儀なくされた子どもたちのためにオンラインの読み聞かせサービスを提案しました。

堤:私は2度のコンペティションと、ハッカソンに参加しました。初めて出場したのは、総務省統計局が主催する統計コンペティション。全国の都道府県の魅力度ランキングを、新たな切り口からデータを用いて再検証する試みです。もうひとつは野村総合研究所が主催するコンペティションで、マーケティングのデータを用いてCMの最適な出稿を提案しました。

Q それぞれの活動を通じて、どんな学びがありましたか。
井ケ田:インターンシップは、日頃の授業での学びを実践できる貴重な機会になりました。中高生や他大生との関わりを通じて視野が広がりましたし、責任をもって中高生と接する経験を通じて、技術面だけでなくタスクマネジメントも学べましたね。ビジネスコンテストにも、インターンシップで出会った学外の友人たちとチームを組んで出場しました。私はビジネスのコンセプト決めや、絵本作家との交渉などを担当。初めて担う役目がとても新鮮だったのと同時に、やはり自分はプレイヤーとしてチームに貢献するほうが向いていると気づいたのもこのときです。自分がどんな形で役に立てるかを日頃から考えて伝えていかなければと痛感しました。堤さんはどうでしたか。

堤:コンペティションでは、初めて未加工のデータを分析に用いたのが大きな経験でした。いつも授業で扱っているデータは、分析に堪えるよう、先生があらかじめ整理してくださっているんです。この作業がいかに大変かを肌で知り、「分析にこぎつけるまでが大変なんだ」と気付きました。
2週間にわたるハッカソンも学びの多い体験でした。参加している学生のほとんどは、普段からプログラミングやデータ分析を専門的に行っている理系の学生たちです。彼らの目標は、もちろん優勝。初日はそのレベルの高さに圧倒されましたが「できるだけたくさんの技術やスキルを持ち帰る場にしよう」と頭を切り替えることに。おかげで存分に鍛えられ、苦しいながらも楽しい経験になりました。コンペティションでもハッカソンでも、今まで授業で学んできた統計やデータ・サイエンスの知識を総動員。やり抜いたことは自信にも繋がりました。

津田塾での4年間で、想像もしなかった自分に出会える。

Q 卒業後の進路について教えてください。
井ケ田:卒業後は、富士通株式会社でエンジニアとして働く予定です。文系の学生にとっては、ITはまだまだハードルの高い分野。それでもエンジニア職に挑戦したのは、文系や理系という枠組みに縛られずに自分の好きなことを貫きたいと思ったからです。「自分の姿を見た後輩たちが、もっと気軽にIT分野のキャリアにチャレンジできるようになったらいいな」という願いもありました。津田塾のビジョンは「変革を担う、女性であること」です。自分の専門領域にとらわれずに挑戦する姿勢が、誰かの背中を押すことに繋がったら嬉しいですね。

堤:私は株式会社NTTドコモに就職する予定です。募集要項に書かれていた「望ましいスキル」に「統計、デジタルマーケティングへの理解、B to Cへの理解」とあって、大学での学びがダイレクトに活かせそうな業界だと思って志望しました。通信会社では既存の通信事業にとどまらず、通信技術を活かした新たな技術の開発にも注力しています。大学で身につけた知識を存分に活かしたいです。
Q 最後に、津田塾を目指す高校生にメッセージをお願いします。
井ケ田:津田塾での大学生活は1分1秒を惜しむほど充実しています。これまで挑戦できなかったことや、諦めてきたことがあっても大丈夫です。どうすればスタートを切れるのか。目指すものに近づくためにはどうしたらいいか。これらを伝授してくれる先生や先輩が総合政策学部には大勢います。友人たちも互いに認め合いながら背中を押してくれる人ばかり。まだ進むべき分野を決めかねている方は、文理の垣根なく勉強できる総合政策学部に飛び込んでみると、新たな景色が待ち受けていますよ。

堤:
同感です。総合政策学部の良さをいつまでも語り続けられるほど、この学部、このキャンパスが心の底から好き。その大きな理由のひとつが、まるで家にいるような安心感があることです。私自身、学外のコンペティションやハッカソンでどれほど辛い思いをしても、大学に行けば励ましてくれる友人たちがいました。これが大きな支えになったから、外の世界でまた挑戦することができたんです。4年後にどんな自分に出会えるかを楽しみに、この学部の門を叩いてみてください。きっと私たちが体験したように、将来の選択肢を広げていけるはずです。
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