ランチデリバリーサービス「TUC」で
大学と地域に活力を

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東 花凜 AZUMA Karin
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松本 凜子 MATSUMOTO Riko

総合政策学部 総合政策学科

東 花凜 AZUMA Karin
総合政策学部総合政策学科4年。横浜国際高等学校出身。2020年、TUCのプロジェクトを立ち上げ、組織の代表として主に大学及び店舗との交渉役を担った。(写真・右)

松本 凜子 MATSUMOTO Riko
総合政策学部総合政策学科2年。フェリス女学院高等学校出身。TUCの立ち上げ初期から、主に学生アルバイトの管理を担当した。2021年度、東さんから代表を引き継ぐ。(写真・左)

千駄ヶ谷キャンパスの新しいランチスタイル

「TUC」とは、Tsuda Univer Cafeteriaの略。総合政策学部の学生が主体となって運営されているランチデリバリーサービスです。地元飲食店の協力を得て、キャンパス内の学生・教職員へお弁当をワンコイン(500円)で提供。コロナ禍で撤退することとなった学食に代わって、千駄ヶ谷キャンパスのお昼に欠かせない存在となっています。設立者の東花凜さん(総合政策学部総合政策学科4年)と、2021年度に次期代表となる松本凜子さん(総合政策学部総合政策学科2年)に、活動の経緯、そこから得た学びについて伺いました。

◆TUC 公式SNS
Instagram  https://www.instagram.com/tsuda_univer_cafeteria/
Twitter  https://twitter.com/tsudauniver

まったく関係ないような学問でも、実はつながっている

Q:はじめに、津田塾大学総合政策学部のどのようなところに魅力を感じて志望したのかお聞かせください。

東: 高校生の頃は、大学の学部や分野を絞り込むことに少し不安を感じていました。というのも、そこまで熱中したことや興味を抱いた学問分野がなかったからです。そんな中、津田塾大学の総合政策学部では、文系理系問わず多岐にわたる科目を履修できることを知りました。まずは視野を広げ、次第に自分の興味関心を定めていったうえで特定の分野を深掘りしたい。そう考えてこの学部を志望しました。

松本: 私は漠然と「ものづくり」に興味があったんです。ただ、理系ではなく文系だったので、車やロボットは到底作れない。なかなか難しいのかなと半ばあきらめていました。でも総合政策学部ではパソコンでシステムを構築するような授業もある。つまり、文系でも「ものづくり」に携われるのではないかと思い至ったのです。このことが大きな志望理由となりました。

Q:実際に入学しての印象はいかがでしたか?

東: まったく関係ないと思える学問であっても、考え方に共通する部分があるのは新鮮な発見でした。例えば、プログラミングではコードを一つひとつ丁寧に構築することが求められますが、それは法律の条文の組み立てに通じるものがあります。経済学の授業で統計ソフトを使うのも意外でした。このように一つの分野が別の分野がつながることもあるんだなと実感したものです。

松本: 社会を多様な視点から見ることに関心をもっている学生が多いと感じました。学生団体の立ち上げが盛んですし、中高生のころからボランティアやインターンシップに参加している活動的な人がたくさんいたのも驚きでした。

「なんか不便だよね」—ちょっとした日常会話がきっかけに

Q:TUCのプロジェクトがスタートした経緯と、現在の活動状況を教えてください。

東: 新型コロナウイルスの影響で学食の業者が撤退すると聞いたことが発端でした。1時間の昼休みは、キャンパスの外に食べに行くには少し短い。だから、学食がなくなった後は、隣のコンビニがすごく混んでいました。一方で、千駄ヶ谷キャンパス周辺の飲食店の方たちは、コロナの影響でお客さんが減って困っていらっしゃる。そこで思いついたのがデリバリーランチのサービスです。はじめは友人たちと「学食がないと不便だよね」と話す程度でした。その話題をたまたまセミナーで出したら、先生から「じゃあ君たちがやってみたら」と。こうしてセミナーの仲間から声をかけ始め、10人ぐらい集まったところで本格的にプロジェクトがスタートしました。

松本: 総合政策学部の学生が主体となり、地域や企業と連携して課題解決を目指す「梅五輪プロジェクト」のワーキングの一つがTUCでした。当初私は別のワーキングに所属していたのですが、新たにTUCが立ち上がると聞いて、とても興味が湧いたのです。

「梅五輪プロジェクト」サイト

東: サービス開始は2020年の夏休み明け9月。夏休みに入った7月から準備を始めました。何から手を付ければいいのかもわからないという状況でしたが、最低限、注文の集計方法を定めて飲食店にご協力いただければスタートできそうだと判断しました。サービスを開始してからは、試行錯誤の末、Googleフォームで注文を集計して前日にお店に注文数を伝え、当日に学生アルバイトがお店までお弁当を取りに行って利用者に提供するというフローで現在は落ち着いています。その甲斐があってか非常に反響が大きく、現在はハイブリッド授業(対面でもオンラインでも出席可能な授業)の拡大に合わせ、協力してくれる飲食店もスタート当初の1店舗から3店舗に。実施ペースは、週1日から週5日に増えました
緊急事態宣言等を踏まえ休止することもあります。

松本: 私の担当は主に学生アルバイトの管理です。タイムスケジュールを組んだりデリバリーの移動経路を組み込んだ詳細なマニュアルも作成したりしました。文字だけだと伝わりづらいので、動画版もあります。撮影は東さんにお願いして、私は編集などを手掛けました。これで、事前に研修期間を設けなくても、初日からある程度スムーズに働いてもらえるようになったと思います。
洗って繰り返し使える容器でエコを意識
バリエーション豊富な日替わりランチ


リユース容器を使用してエコにも貢献

Q:プロジェクトを進めるうえで苦労されたことはなんですか?

東: コロナ禍の問題として、デリバリー需要の高まりによるゴミ量の急増があります。そこでリユース容器の使用を決めたわけですが、それはそれで苦労がありました。利用者から返却され、お店で洗浄するまでには一定の時間がかかります。そのまま放置すると食洗器で汚れを落としきれなくなるため、返却前に大学で予洗いすることになりました。では、実際にどのスペースで誰が洗うのか。大学のシンクを貸していただく必要がありますし、追加でアルバイトを雇用しなければなりません。このように一つの物事が決まっても、それに付随してさまざまな課題が発生し、その度に調整が必要でした。

Q:利用者の反応はいかがでしたか?

東: サービス初日は、上限20食で7食ぐらい。でもその後、完売に至るまでのペースは速かったと思います。学年ごとにほぼ全員が入っているグループLINEでの情報提供が効果的でした。利用者がInstagramのストーリーに「TUCのランチ最高」と投稿してくれたこともあります。SNSの力は大きいですね。順調に認知度が上がり、大きな手ごたえを感じています。

松本: 授業が終わった後に、「お昼どうしよう」と困っている学生にTUCのことを話すと、「そういうのがあるんだ」「食べてみたい」と反応は上々でした。実際に利用した人からは「次は違うお店のお弁当を食べてみたい」といった声を耳にすることも。そういう「ワクワク感」を提供できているんだなとうれしくなります。

相手に「伝える」難しさと「伝わる」喜び

Q:TUCの活動を通じてどんなことを学びましたか。

東: 梅五輪の活動で出会った先輩や企業の方の存在は大きかったです。例えば、それまでプレゼン資料を作る場合、かっこよくしたいという思いが先行していまい、色を使い過ぎて統一感のないものになりがちでした。でも先輩方のスライドを見ると、相手に伝わることを第一に考えていて、地味過ぎず派手過ぎず、バランスがとれている。話し方や言葉使いを含め、本当に勉強になりました。

松本: SNSなどで宣伝する際、買ってもらうにはどうすればいいのかということを考えて、文面を練るようになりました。アルバイトの募集では、学生の目に留まりやすいように、授業と授業の合間の時間を狙ってメッセージを発信したのも工夫の一つです。大それた言い方になりますが、言わば一種のマーケティングを試みていたのだと思います。

東: 「相手の立場になって考える」ということは、お店の方と話すときにも強く意識しました。学生がただ「頑張りたいんです」と言っても、正直そんなに響きません。「ご協力いただければこれだけの収益が見込め、宣伝効果もあります」と説得することがとても重要でした。お店の方にとっては経営そのものに関わってきますから、ご迷惑はかけられない。学生であることに甘えず、「この取り組みには責任が伴っている」といつも自分に言い聞かせてきました。

安心して自己実現できる環境があります

Q:最後に、津田塾大学総合政策学部を目指す高校生の皆さんへのメッセージをお願いします。

松本: 入学してから1年間、授業はオンラインが中心でした。日々リアルで顔を合わせる機会がなく、友人を作ることもままならない。そんな中、梅五輪プロジェクトに参加することで本当に救われました。学部生の約半数が所属しているから全然敷居が高くないんですね。TUCでは東さんと出会い、何気ない日常会話の延長で履修や授業にまつわる話が聞けるというだけでも心強く感じました。この学部には、コロナ禍が続いたとしても充実した学生生活を送れる環境がありますから、安心して入学してくださいね。

東: この春にシステムエンジニアとして内定をいただきました。課題を発見し、解決に向けて試行錯誤したTUCでの経験は、「不便なものを便利にする」というシステムエンジニアの仕事に通じるところがあります。私自身もともとは根っからの文系でしたが、総合政策学部に進んだおかげでプログラミングや数学的な思考を学ぶことができました。ほかの大学の文系学部だったらおそらく関わることはなかったでしょうし、システムエンジニアという選択肢も生まれなかったと思います。将来を決めかねている人でも、津田塾の総合政策学部なら必ず納得のいく進路が見つかるはずです。

  • こちらの記事については新型コロナウイルス感染防止を最優先に、十分な対策を講じるため取材はオンラインにて行い、撮影は3密回避および衛生管理を徹底したうえで短時間で行いました。
  • 学年は取材当時のものです。
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