真の知性を育むために。
津田塾の英語教育が目指すもの。

  1. HOME
  2. 津田塾のまなび
  3. 真の知性を育むために。津田塾の英語教育が目指すもの。

奥脇 奈津美 OKUWAKI Natsumi
総合政策学部 総合政策学科 教授
×
川野 百香 KAWANO Momoka
総合政策学部 総合政策学科 4年

奥脇 奈津美
総合政策学部教授。津田塾大学の学芸学部英文学科、修士課程文学研究科で学んだ後、イギリスのエセックス大学で応用言語学の博士号を取得。専門は英語教育、第二言語習得。(写真・右)

川野 百香
総合政策学部総合政策学科4年。2年次にカナダのマギル大学の語学研修を経験。3年次にはアメリカのベルビュー大学へ留学し、マーケティングやマスメディアを学ぶ。(写真・左)

「英語を学ぶ」だけでは、英語力は伸びない。

津田塾大学の強みとされる英語教育。その特徴は、理論的な思考力をベースに英語を自分の目的のために使いこなすこと。多様なテーマについて思考を深め、発信することに重点を置いています。総合政策学部の英語教育のカリキュラム構築に携わった奥脇奈津美先生と、本学部の一期生として9月に卒業予定の川野百香さんに、津田塾で英語を学ぶ意義について語っていただきました。

課題解決の思考プロセスを、すべて英語で。

Q 津田塾大学といえば「英語」というイメージが強いですが、まずは、津田塾の英語教育の特徴や、総合政策学部と学芸学部における違いをお聞かせください。

奥脇:日本語ではアクセスできない世界中のニュースや情報、文献、文化に触れ、情報を取捨選択・整理したうえで、思考し、表現・発信すること。それが津田塾大学の英語教育の最終的な目標です。ただ、扱うトピックの傾向やスキルの学び方が両学部では異なります。学芸学部では、ことばの背景にある歴史や文化を主なトピックとして、技能別に英語を学びます。総合政策学部では「課題解決力の育成」というミッションを掲げていますから、自ずと国内外の現代社会の諸問題がメインと なり、スキルも統合させて学びます。
川野:総合政策学部では、英語が3年次まで必修です。入学当初は、英語力というよりも、時事問題に関する知識不足を痛感しました。授業では、文献の調べ方、検索方法から教わります。取り扱うのは現在進行形のテーマですから、必ずしも一つの正解があるとは限らず、誰も答えを知りません。まず自分で課題を見つけることから始まります。課題を解決するための思考プロセスを、英語で3年間、みっちり学ぶことになりました。

奥脇:まず教員は「材料」を提供します。学生自身の発見を促すことが目的です。学芸学部では専門的 な領域を深掘りしますが、総合政策学部ではタームごとにジェンダー、教育、世界の貧困、人権、政治、安全保障など幅広くテーマを選んでいます。特徴的なのは、複数の授業が連動して同じテーマを取り上げること。リーディングで関連の文献を読み、ディスカッションでみんなと議論し、最終的にライティングで自分の考えをエッセーとしてまとめます。一貫して同じテーマで「読む、書く、話す、聞く」の力をつけていく、これも総合政策学部の大きな特色でしょう。

川野:YouTubeのコンテンツが資料として提示されることもあり、楽しみながら学ぶことができます。机に向かって黙々と勉強するというよりも、みんなと議論したり、その前提となる知識を得るために調べ物をするのが高校の授業との大きな違いです。「興味がなかったのではなく、知らなかっただけなんだ」と気づかされることが多々ありました。津田塾の英語の授業を通じて「自分の意見をもつ」ことが最も重要だと学びました。意見をもたないと、ディスカッションもできませんし、エッセーも書けません。

ライティングは教員と学生の絶え間ない「キャッチボール」。

Q 高いレベルで英語を学ぶにあたっては、苦労や戸惑いもあったのはないでしょうか?

川野:一番苦労したのはライティングでした。高校まで英作文はそれほど学んでいなかったというのもあります。自分の意見を日本語で書くことさえ簡単ではないのに、英語でとなるとさらに難しいものです。

奥脇:学生が書いたものを教員が1回フィードバックしたら終わりではなく、何度も書き直しとフィードバックを繰り返す。この「プロセスライティング」を1年次から取り入れています。キャッチボールを何回も続けるのが津田塾が120年前から続けている伝統ですね。学生も粘り強く取り組むし、教員も粘り強く指導します。それを実直にこなしていけば、書く力、発信力は必ず向上します。こうした過程を経て、3年間のカリキュラムを終えると、「サラサラ書けるようになっていた」という声を学生からよく聞きます。これが可能なのは少人数クラスだからこそです。
川野:先生方がとても熱心で親身なのも津田塾らしさです。フィードバックのたびに、文法上のチェックだけではなく、視点や構成の改善点についてもヒントをいただけます。テーマに関する知識が増え、理解が深まるごとに、書きたいことも書ける量も増え、質も高まりました。また、共に学ぶクラスメイトの存在も大きかったです。みんなが上達しているのがわかるし、参考となる文献を教え合うなど、少人数ゆえの結束感がありました。だからこそ、3年生の最後には納得のいくものが仕上がるようになったと感じています。

「私の英語力でもやっていける」と確信できた留学経験。

Q 川野さんは留学も経験されたそうですね。どのような思いから行動を起こされたのでしょうか?

川野:まず2年次の夏休みに3週間、大学のプログラムを利用してカナダのマギル大学の語学研修に参加しました。とても刺激的な経験で、「次は、ただ英語を習得するだけではなく、英語を使って何かを学びたい、身につけたい」と考えるようになりました。その後、興味をもったマーケティングを英語で勉強したいと思い立ちます。マイクロソフトやアマゾンなど先進的企業が多く立地しているアメリカのシアトルなら、実社会の課題と結びつけてマーケティングを勉強できると考え、3年次の9月、現地のベルビュー大学に留学しました。

留学時に心がけたのは、自分の思いや立場をきちんと表明すること。当初は英語力も十分ではなく、プレゼンの準備では、英語ネイティブの学生に比べて倍の時間を要しました。そんなときも、下調べをしっかりこなした上で、チームメイトに事情を説明して早めにミーティングの機会を作ってもらえるよう遠慮せずにお願いしました。こうして仲間との信頼関係を築き、プレゼンが成功したとき、「私の英語力でもやっていける」と自信がもてました。

奥脇:すばらしいですね。自分に足りないことを認識して、閉じこもらず周囲を頼るのが大切です。チームで何かを成功させたことは、大きな自信につながります。その自信を糧に、また次の壁に挑む。これこそが留学の醍醐味でしょう。

伝えたい気持ちはテクニックに勝る。

Q 実用的な英語力はどのように身につくのでしょうか。ぐんと伸びる瞬間というものはあるのでしょうか。

川野:私の場合、留学期間の途中から、英語力というよりは、コミュニケーション力で会話を楽しもうと思うようになりました。文法や発音が不完全でも意思疎通はできます。自分の意見を伝えたい。その気持ちの強さが大事なのだと実感したのです。

奥脇:留学中、川野さんの英語スキルはおそらく上がっていったのでしょう。スキルについて特段気にしなくなったというのは大きなブレイクスルーです。「間違えたら恥ずかしい」という気持ちが先行してしまうケースは往々にしてありますが、「まあいいや」と開き直るぐらいでいいと思います。もちろん、意見を伝えたい気持ちが気恥ずかしさに勝るには、語学の基礎がしっかり固まっていることが必要ですし、テーマに関する知識も欠かせません。そういう裏付けがあってこそ、その先に進むことができるのです。

英語の授業をとおして、リーダーシップも身につく。

Q 総合政策学部の川野さんの同期生は、この3月に卒業を迎えました。川野さんは9月に卒業予定だと聞いていますが、今後の進路、将来の目標を教えてください。

川野:卒業後は、日系メーカーに就職します。初めの勤務地は日本ですが、いずれは海外に駐在し、日本の技術を海外に広げるような仕事ができればと考えています。製品を通じた日本のブランド力向上や、先端技術による世界的な課題解決の提案にも関われるといいですね。そういった考えに至ったのも、シアトルに留学したとき、現地で働く日本人の方が多くいらっしゃって、「そういう選択肢もあるんだ」と大きな影響を受けたからです。

奥脇:一期生の皆さんは、想定以上のパフォーマンスを発揮できるようになったと思います。津田塾生らしい粘り強さ、真面目さがあったからでしょう。3年次が終わったときに 英語の授業に関するアンケートをとったところ、嬉しい答えがたくさんありました。「くじけそうになるときもあったけど、力がついた」「高校の問題集を見返すと簡単に感じた」「後輩にぜひ勧めたい」などです。「ディスカッション時、ついていけなかった仲間に配慮して進め方を調整したことも勉強になった」という声もありました。英語の授業を通してリーダーシップも身につけてくれたのです。

Q:最後に、津田塾を目指す高校生にメッセージをお願いします。

川野:興味があることにとりあえずトライしてみてください。自分のやりたいことを見つけて、それを純粋に追い求めていけば、あとは周りが後押ししてくれる大学です。津田塾で出会った多くの友人は学ぶことを楽しんでいて、「私も一緒に頑張りたい」と刺激を受けました。ぜひ津田塾で自分の可能性を広げてください。

奥脇:「楽しく学ぶ」という意味では、それこそ今はYouTubeで、好きなアーティストの歌を、字幕の歌詞を目で追いながら一緒に歌うことができます。彼らはTwitterなどSNSでとても自然な英語を投稿しています。いずれも素晴らしい教材です。もちろんSNSで学生自ら英語で発信することもできるでしょう。 TED Talks を見て知識や興味を広げることも簡単にできます。このように、生活の中に「生きた英語」を取り入れてはいかがでしょうか。教科の勉強にとどまらず、自分の住む地域、国、そして世界へと目を向け、興味を広げてみてください。そうすれば、津田塾に入って、さらに前へと進むことができるはずです。
※学年は取材当時のものです。
Copyright©2019 Tsuda University.
All rights reserved.