興味をもつきっかけは偶然でもいい。
深く掘り下げると、思いもかけない 世界が広がっていきます。

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国際関係学科の小島敬裕准教授は、ミャンマーと中国雲南省を主なフィールドとし、上座仏教と社会の関係、少数民族の文化変容、日本人と上座仏教徒の交流史などについて研究しています。
今回は小島准教授の「東南アジア研究」のセミナーに所属する、染宮花保さん(国際関係学科3年、写真左)と野口朋美さん(国際関係学科4年、写真中央)、小島准教授にお話をききました。

※学生の学年は2019年3月時点

もっと世界を知りたい

野口 高校生のとき、アメリカに1ヶ月ホームステイし、外国の方々と初めて接しました。ヨーロッパや中東など世界各国から来ている学生たちと交流を重ねていく中で、自分がそれまでいた世界は限られていたことを実感。もっと他国を知りたい、英語でコミュニケーションをとりたいと思い、海外に興味をもっている学生が多い国際関係学科を志望しました。
染宮 私は高校の学外学修でマレーシアとシンガポールの学校を訪れ、現地の学生と一緒に学ぶ機会がありました。文化の違いやコミュニケーション能力の高さに驚いたのと、文化とは宗教や歴史などさまざまな側面から作られる多面的なものだと感じました。異文化への関心と将来に向けた異文化理解の必要性から、ひとつの文化に対して多角的に学びたいと考え入学しました。
小島 国際関係学科は、いろいろな学問分野、国に興味のある学生が集まっていて、自身のやりたいことに積極的、そして行動力がありますね。

興味を引かれたマレーシアへ

野口 入学当初、私は研究対象が定まっていなかったので、同級生の目的意識の高さに驚きました。そこで授業を幅広く選択し、長期休暇には海外へ行くなどして、知見を広めていったのです。その中で東南アジアに興味を引かれ、小島先生の「東南アジア研究」セミナーを志望しました。現在は多民族国家のマレーシアを研究しています。
小島 3年次のある日、「後期からマレーシアに行ってきます」と報告を受け、そこから1年間語学留学とインターンシップに行きましたね。自らフィールドに飛び込んでいく積極性に感心します。
野口 マレーシアは、マレー系、中華系、インド系の3民族で構成されていて、いろいろな考え、宗教があります。系統の異なる人びとがひとつの国をどう成り立たせているのか、関心をもったのです。現地で1年間暮らして感じたのは、実際にはマレーシア人でない人もたくさん生活しているということ。近隣国の人びとが労働者として生計を立てているのです。
でも実は、政府側には外国人を減らしたい意向がある。そこで、実際の労働市場を調査したいと考えました。
小島 今年の夏も10日間のフィールドワークに行ってきましたね。
野口 はい。外国人労働者を雇用している企業に打診し、企業担当者と労働者双方にインタビューを試みました。調査に当たっては、英語を話せないミャンマー人が多く、小島先生にご相談したら、なんと現地まで通訳に来てくださいました! 大変助かったのと同時に、学生ひとりのためにここまでしてくださる熱心な指導に感銘を受けました。
小島 マレーシア政府が外国人を増やさないようにしているという先行研究は既にありますが、外国人労働者を雇用する企業経営者側、さらには多様な契約に基づいて雇用されている労働者側、その3者なり4 者それぞれがどう考えているのか、フィールドワークによって立体的に明らかにしていくというのは特徴的で、すばらしい研究です。私も現地で直接話を聞き、勉強になりました。

多様な分野を横断的に学ぶ

染宮 私も2年次に小島先生の「東南アジア研究」を受講していました。授業では、先生のミャンマーでの実体験を映像資料で見られたことなどが、面白く印象に残っています。また、授業の最後に提出したコメントペーパーについて次の授業で答えてくださり、丁寧に指導していただいていると実感でき嬉しかったです。
小島 みなさんが熱心に書いてくれて、いい質問も出てくるので、こちらもやりがいがあります。国際関係というと国家間の政治がイメージされやすいですが、それだけではなく世界のさまざまな地域の経済、社会、文化、そして地域をまたぐ研究までありますし、各学問分野を連携したり地域間を比較してみることもできます。津田塾大学の国際関係学科は、多くの学問分野をカバーしているので、学生が学びを選択し、組み合わせながら研究対象を定めていくことができます。
野口さんがフィールドワークで調査を行ったマレーシア企業の製造現場。外国人労働者へのインタビューでは、小島先生に2日間協力を仰いだ。

調査対象を定め、次のステップへ

小島 染宮さんは来年フィールドワークですね、調査対象は決めましたか。
染宮 大学での学びを通じて興味をもった、ジェンダー問題の分野を調査対象にしようと考えています。そこで今期は単位互換制度を活用し、他大学のジェンダーの講義も受講してフィールドワークに備えています。
小島 何かに興味をもつきっかけは、偶然でいいのです。ふとしたことで出合い、関心をもったら深く掘り下げてみる。本を読み、話を聞く。そうするとたまたまぶつかった問題から、自分自身が思いもかけない世界が広がっていくことがあります。思い込みや世間の常識みたいなものがくつがえされる瞬間が、調査研究の魅力といえます。
野口 私は研究テーマにたどり着くまで苦労しましたが、東南アジアの旅で現地に魅了され、小島先生のセミナーで学びがさらに面白くなりました。現地調査で生の声を聞いてみると、自分の経験ともリンクして、社会の仕組みや世界との繋がりが見えてくるようになりました。もっと知りたいと思う“感性の動き”をこれからも大切にしていきたいです。
染宮 私は4年次のフィールドを性について多様性のあるタイに絞りました。男女が比較的平等だと言われるにもかかわらず、事実上の国教である仏教においては男女格差が存在する現状を研究し、卒業論文のテーマとしたいと考えています。
小島 タイでは女性の地位が比較的高いと言われていますが、実際に調べてみないとわからないですからね。ぜひ挑戦してください。野口さんは卒業ですね。
野口 はい。大学生活をとおして、インプットとアウトプットの双方が大事だということがわかりました。大学での学びはインプット、インターンシップやボランティアなど学外での実践はアウトプット、その掛け算で物事を包括的にとらえられるようになり、新しい知見も得られました。社会人になってからも、自分自身を成長させていきたいと思います。

小島敬裕准教授の取材は、以下Webサイトにも掲載しています。
大学公式ウェブマガジン「plum garden」
 

 

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