国際交流基金アジア・文化創造協働助成事業

ソーシャル・メディア・センターでは2009年以来、さまざまなニーズを持つコミュニティ（ＤＶ被害者家庭の子どもや薬物依存症更生施設で暮らす親子、不登校・ひきこもり・非行を経験している中学生など）との協働プロジェクトを推進し、映像・写真制作や講演会、ワークショップなどを企画してきました。そして、2012年からは演劇をとおしてニーズを持つコミュニティとつながるパフォーマンス・アート・プロジェクトが展開されています。
PETA (Philippine Educational Theater Association)はマニラを拠点とする非営利教育演劇団体です。1967年の創設以来半世紀にわたり、フィリピン社会の問題や歴史に材を得たオリジナルの劇を創作し国内外の劇場で上演しています。また、コミュニティに入りそこでの問題をコミュニティが一体となって考え、改善していけるようフィリピン国内外の様々な地域でワークショップを精力的におこなっており、国際的にも高く評価されています。日本とは、1980年代における劇団黒テントとの共同公演以来、長い交流の歴史があります。
本学では、2012年に学生有志で結成されたチームによる「それぞれのポスト3.11」というテーマでの取材劇創作にあたり、PETAの芸術監督と若手artist-teacherが招聘され、彼らの指導のもと、学園祭にて上演されたことをきっかけとして、交流が始まりました。2013年、2014年の夏には学生有志とともにマニラのPETA Theater Centerを訪れ、ワークショップにも参加しました。そし2015年より、国際交流基金アジア・文化創造協働助成プログラムの助成金を得て『演劇教育による子どもたちのエンパワーメント—PETAの“Safety Zone”構築に学ぶ』プロジェクトを進めています。2015年夏にはマニラ近郊を訪れ、子どもたちを暴力から守り子どもたちが安全に生活できる環境づくり構築のアドボカシー活動をおこなっているARTS Zone Projectの取り組みを取材しました。そして、9月には2013年11月に大型台風ヨランダにより壊滅的な被害を受けたレイテ島を訪れ、そこでのPETAのCommunity Managed Disaster Risk Reduction Project (コミュニティ運営管理リスク削減プロジェクト)を視察してきました。11月にはARTS Zone Project責任者およびPETA専属の舞台制作責任者を招聘し、大学での講演会やワークショップを開催しました。さらに、本学の英語教育て、コースのゼミ生たちがアシスタントを務め、近隣の市立小学校において小学5年生対象にワークショップを実施するというPETAと日本の交流の歴史のなかでも新たな試みが始まりました。演劇をふくめたアートによって子どもたちのおかれる環境と子どもたちの心に安全な「場」をつくり、生きる力を育むPETAの取り組みからさらに学んでいきます。
本プロジェクトに参加する学生や子どもたちの協働的・対話的な学びを促進し、演劇をとおして生きる力、生涯にわたって学び続ける力を育てることをめざしています。