平成30年度 私立大学研究ブランディング事業

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「変革を担う女性」の持続的育成を目指した「インクルーシブ・リーダーシップ研究」拠点の形成

文部科学省 平成30年度 私立大学研究ブランディング事業の支援対象校の選定結果が公表され、本学がタイプB(世界展開型:先進的・学術的な研究拠点の整備により、全国的あるいは国際的な経済・社会の発展、科学技術の進展に寄与する取組)として申請した「『変革を担う女性』の持続的育成を目指した『インクルーシブ・リーダーシップ研究』拠点の形成」が採択されました。

事業の概要

激動する現代社会では女性の活躍が様々な場面で期待されています。本事業ではそうした状況で求められる国内外の「変革を担う女性」を、持続的に育成することを目指した「インクルーシブ・リーダーシップおよびダイバーシティ研究」のグローバルな拠点を形成。創立1900年以来、自立して社会に貢献できる女性を輩出してきた歴史に新しい光をあて、未踏の道を切り拓く女性リーダー像としての津田ブランドを社会に発信していきます。このブランディングの方向性のもとで、本学は、主に次の4つのテーマに取り組むプロジェクトを設け、諸活動を推進します。

  1. 国際的女性リーダーシップ英語教育の方法論開発 (Leadership Research)
  2. データ活用型政策研究と実践的教育プログラム開発 (Data-Driven Policy Research)
  3. 社会的インクルージョン研究基盤形成 (Social Inclusion Research)
  4. 津田アーカイブを用いた多様で先進的な女性ロールモデル研究推進 (Archive-Based Research on Women Role Models)

期待される研究成果

1.国際的女性リーダーシップ英語教育の方法論開発(Leadership Research)

英語は、国際社会における女性の社会進出において必須条件です。本学卒業生は、英語能力が高いだけではなく、異文化理解に裏打ちされた国際社会のリーダーとして大きな変革を担ってきました。そのような卒業生たちの実績から、これからの多言語・多文化社会における、国際的女性リーダーシップ英語教育のプログラム開発と国際的ネットワークの構築を進め、変革を担える女性を育成することが期待できます。

本事業では、英語を用いた異文化理解教育を通じて、地域・エスニシティ・ジェンダー・宗教など、文化の違いを越えて、相手にアピールし、ネゴシエーションや仲裁を経て、国際的に交渉していけるコミュニケーション力のある女性を育成することのできるユニバーサルな教育課程開発研究を行い、具体的なカリキュラムを策定します。今や約63億と言われる世界人口の3分の2にあたる、20億の人々が英語を用いてコミュニケーションを図る時代です。英語コミュニケーション力、交渉力、とりわけ世界のダイバーシティに対応できる言葉の力は、21世紀のグローバル社会を生き抜くための必須の道具といえます。多言語・多文化社会における、英語を用いたコミュニケーション力の涵養は、日本全国におけるこれからの大学教育のミッションとして必要です。

具体的には、Bryn Mawr, Wellesley, Sarah Lawrenceなど北米大陸、アジア諸国、中近東諸国、アフリカ等の海外の大学、教育機関、といった組織と連携し、国際共通語としての英語教育の方法論や教授法に関する情報を収集。併せて、本学の教育の歴史(津田梅子、Anna Hartshorne、Alice Baconなど)から、人文系・社会系・理系教育と女性リーダーシップ教育の知見を抽出していきます。

また本学女性研究者支援センターでは、女性の研究リーダーの育成に向けて様々なプログラム・事業を行ってきた実績があり、こうした先行事例も積極的に活用していきます。

国際的女性リーダーシップ英語教育の方法論のカリキュラムを策定し、実践に向けて取り組むことで、以下のような場面で活躍する女性を育成できることが成果として期待できます。

  1. non-violent communication (compassionate communication)を中心に据えた、人々・コミュニティ・組織・社会・国などにおける交渉(negotiation)、仲裁(mediation)、リーダーシップ
  2. 国連等、国際機関で働くための実践的コミュニケーション力
  3. ダイバーシティに富む世界的背景に目を向け、実践的に人との交渉にあたれるような、英語による異文化コミュニケーション力

2.データ活用型政策研究と実践的教育プログラム開発(Data-Driven Policy Research)

政府、地方自治体や企業などの意思決定機関において、立案・政策決定・検証などに、当事者である女性自身の参画は欠かせません。さらに、多様な環境の中で多様な女性が多様に活躍できる社会の創出に向けては、立案者個々人の経験のみならず、様々な白書や統計データなどから得られる客観的根拠の十分な活用と、現場に対する深い洞察をもとに、真に求められる課題解決策を講じられる能力が求められます。このため、本プログラムは、データ活用型社会において、ICTを活用し、社会的課題に対して政策を提言できる「データ活用女性リーダーの人材」を育成し、女性活躍社会の創造を担う新しい女性リーダーの輩出を目指します。

開発するプログラムは、これまで共同研究を行ってきた研究機関とも連携しながら、女性等が直面する社会的課題に関わる政策決定・検証の根拠データを集積したデータベースを構築しその活用を進めるとともに、連携協定を結んだ地域の社会問題(地域経済活性化、地域ケア等)に実地に取り組み、データ収集・分析とそれを提言に結び付ける能力形成を目標とする実践的教育プログラムとしていきます。

3.社会的インクルージョン研究基盤形成(Social Inclusion Research)

現在、政府内では「人生100年時代」を視野に入れた政策が構想されている。また国連経済社会理事会が、2016年に“Leaving no one behind”としてその責務を訴えたように、社会的インクルージョンの推進は、まさに国際的潮流のただ中にあります。実際、社会医療技術の向上は、少子・高齢化などの人口バランスの変動や、障害者や高齢者などの社会的マイノリティとされてきた層の一般化や普遍化を、加速させています。このような状況の中、「シニア女性の転身・活躍・社会貢献のあり方」など様々な生き方が求められています。

一方、これまでに本学は、障害者世界会議の日本代表や視覚障害者向け支援のリーダーなど、国際的なインクルージョンのフロンティア・ランナーを輩出してきた。本プロジェクトでは、彼女らが牽引してきたインクルージョン(福祉・教育・支援・男女共同参画領域)を調査し学びつつ、現在の問題のデータサイエンス的分析を生かして、超高齢化を増す未来の課題の解決を多様な視点と工夫によって主導しうるインクルーシブ・リーダーシップとしてモデル化することで、本学がインクルージョンの歴史の中で貢献してきた蓄積を解明して、世界に発信しうるブランドとして確立することを目指します。

具体的なインクルーシブ・リーダーシップは、まさに「過去に学び、現在を知り、未来に活かす」温故知新の観点から、(1)「すべての人々を包摂できるように発揮されるリーダーシップ」と、(2)「これまで社会環境によって制約を受けてきた女性や障害者・高齢者が獲得しうるリーダーシップの力」の2面として整理できよう。このインクルーシブ・リーダーシップのモデル化によって、インクルージョンを牽引しうる「変革を担う人材」を育成するための教育モデルや、活動の基盤モデルを構築し公表していく効果が期待できます。

4.津田アーカイブを用いた多様で先進的な女性ロールモデル研究(Archive-Based Research on Women Role Models)

本学では1981年に「津田梅子資料室」を設置し、2000年には「史料室」機能の更なる充実を目指して整備を行いました。その後、同資料室では創立者津田梅子およびその周辺の人物や事項に関する史料、本学の歴史および教職員や卒業生を含む本学関係者の資料を収集・整理して、学内外の研究者の利用に供するとともに、2010年からはデジタルアーカイブを通じて広く情報を公開しています。今般、本プロジェクトを設けて、多様で先進的な活動の実績のあった本学卒業生・関係者を対象として、関連する史・資料を収集・整理し、上に挙げた3つのプロジェクトの架け橋ともなる「津田アーカイブ」の構築を目指します。

このアーカイブでは、本学のこれまでの「女性の社会貢献」の実績を踏まえ、研究者ばかりでなく、次世代の学びのための、多様で先進的なロールモデルの史・資料およびオーラルヒストリーのデータベース化を試みます。特に、70歳代以降の対象者は、インタビューを動画で視聴できるよう、映像記録を残していく予定です。このアーカイブで「変革を担う女性」の様々なロールモデルを提示することによって、女性のリーダーシップのあり方を、学問・研究の対象のみで終わらせず、リアルワールドにおける女性の戦略や展開、そして、社会的マイノリティの活躍のあり方を提言し、複雑化した現代社会で相応の役割が担える女性リーダーの育成に資することを図っていきます。
以上までの4つの各研究プロジェクトは、既に独立した研究プロジェクトとして始動しています。本事業として4つのプロジェクトを相互に関連させ統合しながら総合的・加速的に推進することで、新しい時代を作り出す「インクルーシブなリーダーシップ」を備えた「変革を担う女性」の「生涯にわたる持続的研鑽」の機会を提供することが可能となるでしょう。その上で、こうした「津田ブランド」を活かした大学教育・研究活動・社会貢献に効果的に取り組めることが期待できます。

【文部科学省ウェブサイト】平成30年度「私立大学研究ブランディング事業」の支援対象校の選定結果について

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