数学科 授業紹介

  1. HOME
  2. 学部・大学院
  3. 数学科 授業紹介

3年セミナー

物理現象を学んで数学の理解を深める

数学科教授 小西 由紀子

数学科では、1年次から少人数セミナーがあり、学生が事前にテキストで学んできたことを発表する輪読形式で行われます。1年次のセミナー分けは自動で振り分けられますが、2年次以降は指定された数冊から学生が希望の本を選んで各セミナーに分かれます。
私が担当している3年セミナーでは「数学で物理を」(武部尚志著、日本評論社)という本を取り上げています。この本では物理法則が数学のことばで丁寧に説明されていて、とても面白いです。たとえば、質点の運動方程式「力=質量×加速度」から運動量保存則と力学的エネルギー保存則が導かれますが、なぜ2つの保存則が出てくるのでしょうか? それは運動方程式を時間で積分したか、位置座標で積分したかの違いによるものであることが、この本を読めばわかります。
3年セミナーの目標は、2年次までに学ぶ微分積分学、線形代数学、ベクトル解析といった数学を用いて力学、電磁気学を理解することです。逆に物理現象を学ぶことを通じて数学の理解を深めることが目標でもあります。積極的な参加が求められる少人数セミナーで一緒に数学の奥深さを楽しみましょう。



学びのアイテムは?
教科書 『数学で物理を』

単振動、惑星の運動、電磁場、波動方程式といった物理現象や保存則が取り上げられている。
それらを理解するために必要な線形微分方程式、線積分、微分形式、フーリエ級数についてもわかりやすく説明されている。



幾何学B

新たな知の扉を開こう

数学科准教授 井上 歩

数学科では、1・2年次に現代的な数学の基礎を広く学習します。そして3・4年次には、各自の興味に従って、より高度で専門的な内容を深く学びます。
私が担当する幾何学Bは、現代的な幾何学を扱う、3年次の講義です。
例年、位相幾何学(トポロジー)の一分野である、結び目理論をテーマに取り上げています。蝶結びした紐は両端を引っ張るとほどけますが、固結びした紐は両端を引っ張ってもほどけません。これは直感的に明らかでしょうが、では、なぜでしょうか? このような問いに答えを与えるものが結び目理論です。実際に授業では、紐をあるルールに従って3色に塗り分けたり、バラバラに分解したりすることで、蝶結びと固結びが区別できることを学習しました。
「紐の結び方が数学になるなんて」と驚くかも知れませんが、生物学や材料科学などにも応用のきく、れっきとした数学です。結び目理論に限らず、大学で出会う数学は、高校までに学んだものとは異なって見えるかもしれません。しかしそれらを学ぶことで、新たな考え方を知り、多角的な視点も身につけることができるようになるでしょう。

学びのアイテムは?
参考書 『The Knot Book』
『結び目理論とその応用』

結び目理論を体系的に学べる入門書。特に『The Knot Book』は、高校生でも学べるようにと、著者の工夫が凝らされている。なお、参考書の上に乗っているものは、授業に用いた手製の教材。




3年セミナー(曲面積の一般化)

少人数セミナーによる
きめ細やかな学習

数学科教授 三上 敏夫

数学科には1年次から各学年ごとに必修のセミナーがあります。セミナーは、学生が自分で教科書を勉強し、それを教員や他の学生に説明する輪講形式の授業です。発表の準備は大変ですが、それが学生の力になります。また、セミナーは少人数で行われるため、担当教員が学生のことを把握しやすく、学生にさまざまなアドバイスもしています。

1年次のセミナーでは、入門的な本を使って数学の発表の仕方などを中心に学びます。2年次以上のセミナーでは、学生自身が勉強する内容を選び、英語で書かれた数学の本を使って本格的な輪講を開始します。3年次のセミナーでは、講義では扱わないような数学の内容を学び、4年次のセミナーでは、それまでのセミナーの2倍の時間を使って、4年間の集大成となるべく、さらにじっくりと数学を学びます。そして、年度末には、卒業論文を提出し、卒業論文発表会でその内容について同級生や教員の前で発表します。

私が担当する3年セミナーでは、自分の専門分野である確率論かその関連分野を扱います。確率論はランダムな現象を数学的に解析することを目的にした分野で、社会のさまざまなところに応用されています。確率論は測度論という解析学の一分野の言葉を使って記述されます。
測度というのは面積や体積を一般化した概念で、1902年にフランス人数学者H.L. Lebesgueの博士論文で導入されました。また、1933年に旧ソ連の数学者A.N. Kolmogorovはそれを使って確率論を数学的に定式化しました。確率論が数学的に定式化されてまだ100年も経っていませんが、私はそこに確率論という分野の大きな可能性を感じています。
 

今年度の3年セミナーでは、幾何学的測度論の入門的な事柄を、英語で書かれた本を使って学んでいます。第1タームには、津田梅子が留学したアメリカのBryn Mawr大学からの留学生も履修しました。幾何学的測度論は、曲面の面積を研究するための理論で、アメリカ人数学者H. FedererとW. H. Fleming(私の大学院時代の恩師)による1962年の論文が原点です。難しい理論ですが、学生たちはそれにくじけず立ち向かっています。「なぜこのような定義をする必要があるのか?」、「なぜこのような証明に至ったのか?」など、発想の根本を探っています。このような訓練を受けた人は、社会に出ても、表面的なことに惑わされることなく、物事の本質を見抜くことができるでしょう。
 

 
 

学びのアイテムは?
教科書『Measure Theory and Fine Properties of Functions』

面積や体積の概念を一般化した理論である測度論を用いて、曲面積だけでなく複雑な形をした図形の表面積を研究することを目的にしてできた幾何学的測度論の入門書。

Copyright©2019 Tsuda University.
All rights reserved.