第17回 学生スタッフレポート

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バルカンから響け!歓喜の歌

栁澤 寿男 氏(指揮者)

みなさん、こんにちは!

「総合2024」第17回、10月24日(木)の講演は、指揮者として活躍されている栁澤寿男さんにお越しいただき、「バルカンから響け!歓喜の歌」というテーマでお話いただきました。今回のご講演では、バルカン半島に位置する旧ユーゴスラヴィア地域(マケドニア、コソボなど)を拠点としたオーケストラでの活動や、バルカン室内管弦楽団を設立した経緯、楽団の意義、そして、栁澤さんが楽団を通じて目指したいことについて、お話いただきました。

私は、栁澤さんを「総合」に迎えるまで、東京でのバルカン室内管弦楽団の演奏会を聴きに行ったり、栁澤さんに密着したドキュメンタリー番組を拝見したり、著書を拝読したりと、色々な角度から栁澤さんのことをよく知ろうとしました。そのため、栁澤さんのお話の中には、私がもうすでに知っていることもありました。一方で、ステージ越し、画面越し、文章越しではなく、実際に栁澤さんにお会いしお話いただいたことで、知ることができたこともあります。それは、「世の中では当たり前ではないことを、栁澤さんは『当たり前』にできる」ということです。栁澤さんは、日本人の全くいない、かつ、紛争の傷跡が強く残っている環境に身を置き、時に打ちひしがれるほどの挫折を経験しながらも、バルカン半島での活動を続けてきました。だからこそ、その継続の結果として、バルカン室内管弦楽団を設立することができたのではないか、と思います。対立関係にある民族同士を一つにまとめるということは、対立が戦争という形へと発展し、多くの人々の心に傷を残せば残すほど、至難の業でしょう。しかし栁澤さんは、ごく自然に、「いろんな民族が一緒に音楽を奏でる楽団」を設立し、そのような楽団の存在を「当たり前」のものとして、現在に至るまで世界各地を飛び回り、たくさんの人々に感動を与えています。

また、私の心に残る、忘れられない言葉もありました。それは、「世界市民」「地球市民」という言葉です。この言葉は、バルカン室内管弦楽団を通じて目指したいところ、というお話の中で使われていました。「世界市民」「地球市民」とは、出身国や民族、宗教に関係なく、今、地球上に住んでいるすべての人々を、対等な「市民」として考えるということです。この言葉を初めて聞いた時、まさにその通りだよなぁと深く感銘を受けました。そして、「世界市民」「地球市民」というあり方は、一部の人だけが目指すところではなく、世界中に住むすべての人々が目指すべきところだと、強く思いました。

私は、栁澤さんにご講演を依頼する際、長い間音楽と共に人生を歩んできた栁澤さんならではの「学び」、つまり、「音楽には、人を動かす力がある」という「学び」があるのではないか、と考えていました。しかし栁澤さんは、バルカン半島で活動を始めた頃は、あまり音楽の力を信じていなかった、と講演の中で打ち明けます。その上で、そのような考え方が180度ひっくり返ったきっかけがあったと、コソボのオーケストラで初めて指揮をした際の出来事をお話いただきました。その出来事とは、「もしまた戦争が起こったら、銃を持って戦争へ行く」と言っていたコソボのオーケストラの音楽監督さんが、栁澤さんの奏でる音楽を聴き、「戦争に行くのはやめて、人に優しく生きていきたい」と気持ちが変わったという出来事です。音楽の力で、人の気持ちを、行動を、動かすことができたのです。

自分の身の回りでも、日本社会でも、世界でも、自分とは異なる存在としての他者をどう受け止め、他者とどう共存していくのかということが、大きな話題になっているように感じます。一方で、それについて考えることすらやめて、他者への暴力に走る事態も世界各地で、たくさん発生しています。そのような現状に心から嫌になることもありますが、しかし、私たちには、栁澤さんから学んだ「世界市民」「地球市民」というあり方や、人と人とを繋げる音楽の力といった、私たちの心を支える拠り所があります。これらの拠り所に支えられながら、未来に少しでも希望を持ち、生きていきたいと思います。
国際関係学科3年 マーマレード

コメントシートより

  • 自分が生きている環境や習慣を決して正解と思わず、異なる文化や価値観を理解して、お互いに尊重することが大切だと学びました。それを実現できるため、相手の背景や歴史を学び、偏見や誤解をなくし、戦争を招くような行為も減ると考えます。戦争は誰にとっても悲惨なことであって、戦争によって多くの人命が失われ、戦争の影響を受けた人々や家族が苦しんでいます。なので、戦争の悲惨さを理解することで、私たちはより良い未来を築くことができると思います。大きなことはできないかもしれないが、まずは他国の人を尊重し、自分の価値観を他人に押し付けないことが大切です。平和への考えが深まりました。
  • 世界規模のコンサートやスポーツなどは、世界や人々をつなぐ力を持つというのは聞いたことがある。私はそれを受動的に体験したことがあったが、柳澤さん自身が供給者として体験されたお話はとても壮大なものだった。世界に音楽を届ける指揮者として奮闘されているのはもちろん、挑戦をやめず、自分の職業に誇りと責任を持って取り組む一人間としての姿がとても素敵だと感じた。私は音楽という形ではないかもしれないが、自分の取り組むことに誇りと責任を持って、人々に感動を届けることができる人物になりたいと思った。
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