第8回 学生スタッフレポート
言語学者の世界冒険紀行:『他人軸』から『自分軸』へ
佐藤 陽介 氏(津田塾大学学芸学部英語英文学科准教授)


こんにちは!
「総合2024」第8回、6月6日(木)の講演は、当初予定していた講演が中止になった関係で、昨年度第6回の録画映像を視聴するアンコール講演でした。講演者は、津田塾大学学芸学部英語英文学科准教授として教鞭を執っている佐藤陽介先生で、「言語学者の世界冒険紀行:『他人軸』から『自分軸』へ」というテーマの講演を聞きました。
佐藤先生は本学で「文法論」や「対照言語学2」などを教え、理論言語学、アジア言語の比較文法研究、シングリッシュを中心とした世界言語の研究をしていらっしゃいます。今回の講演では、先生の学問や人生における挑戦、失敗、挫折についてお話しいただきました。大学受験がうまくいかなかった佐藤先生は、高校がいわゆる進学校だったこともあり、周囲と自分を比べてしまったそうです。そんな中、人生に3つの「雷様」が落ちてきます。この「雷様」とは、講演中に用いられた「出会い」や「到来」を指す表現です。
1つ目の「雷様」は、アメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)での『心のガリレオ先生』との強烈な出会いです。大学時代、ナサニエル・ホーソーンの小説『The Scarlet Letter』に出てきた湖が見たくなったことをきっかけにアメリカに行った際、MITのNoam Chomsky先生の講義に参加する機会がありました。そこで佐藤先生は、言語研究とは人間の本性の研究であることを知り、その『言語を』ではなく『言語で』研究する文系・理系を超えた壮大な研究発想に感動したそうです。Noam Chomsky先生との出会いが、佐藤先生を言語学に引き付けました。帰国後、生成文法を学ぼうと東北大学の大学院に進学、その後アリゾナ大学に留学しました。『冬の時代』と比喩された大学時代は過酷でしたが、今となっては、佐藤先生はこの時代を「修行・引き出しを増やす時代」だとして賢明に生きるべきであると語っていらっしゃいます。
2つ目の「雷様」は奥様との運命的な出会いです。アメリカに留学して最初の頃は英語ができず、周囲に圧倒される日々が続き、先生は挫折を経験しました。ちょうどその時期、将来的に奥様となるインドネシア人の女性に出会ったのです。先生はこの出会いを、語学のためにナイアガラ近くの学校に行かされたことにかけて『ナイアガラの滝には落ちなかったが、恋には落ちた』と表現しています。その後、アリゾナ大学の博士課程時代に結婚され、結婚してよかったと感じられることが2つあるそうです。1つ目は、イスラム教との出会いです。とにかく心がきれいで暖かいインドネシアの人々に囲まれ、結婚を機にイスラム教に改宗しました。2つ目は、奥様の話すインドネシア語とジャワ語に魅力を感じたことです。これは、現在の先生の研究にも大きな影響を与えています。これらから先生が得た教訓は、「何があるかわからない予定不調和な生き方に面白さを感じること」や「周りの目を気にせずに自分のやりたいことをやる」という、決定を急がないやり方をしてみようということです。
3つ目の「雷様」はエピファニー(「啓示」を意味する)との出会いです。ここでの啓示は、言語学から見える人の生き方そのものを指します。先生がシンガポールで言語学の講義をしていた際の出来事です。言語学は「不思議な現象がある→仮説を立てる→検証する→間違えていたら仮説を立て直す」の繰り返しで、人生は「難問が出てくる→乗り越える→達成感を得る→次の難問が出てくる」の繰り返しです。この比較から見えてくることは、「生きる意味」を探すより「生きることから生まれる意味」を探すべきであるという考え方です。先生は『これこそ人生の縮図ではないか』と考えています。
以上3つの「雷様」が、先生のこれまでの人生を動かした衝撃的な出会いでした。私は今回の講演の中で、「生きる意味」を探すより「生きることから生まれる意味」を探すべきであるという考え方や、他人と自分を比べるのではなく「自分ができればそれはそれで良い」という考え方がとても印象的でした。そうした考え方の源は、佐藤先生が「修行・引き出しを増やす時代」と言われた大学時代に培われたものです。これは、大学時代に学んだことがその後の未来の生き方に影響を与えているということだと思います。先生の「他人ではなく、自分自身と勝負する」というスタンスは、私が今まで大事にしてきたものでもありました。そのスタンスを今まではどう表現したら良いか分かりませんでしたが、今回の講演を聞いて、先生の経験を以てはっきり言語化された気がして自分の中の消化不良な感じが晴れました。困難に直面しても乗り越えようと足掻いたり「雷様」の衝撃を受けたりしながら、学び続けられてきた佐藤先生の強い生き方は、人生を豊かにする学生時代からの学びが根底にあってこそ実現されてきたのではないでしょうか。
「総合2024」第8回、6月6日(木)の講演は、当初予定していた講演が中止になった関係で、昨年度第6回の録画映像を視聴するアンコール講演でした。講演者は、津田塾大学学芸学部英語英文学科准教授として教鞭を執っている佐藤陽介先生で、「言語学者の世界冒険紀行:『他人軸』から『自分軸』へ」というテーマの講演を聞きました。
佐藤先生は本学で「文法論」や「対照言語学2」などを教え、理論言語学、アジア言語の比較文法研究、シングリッシュを中心とした世界言語の研究をしていらっしゃいます。今回の講演では、先生の学問や人生における挑戦、失敗、挫折についてお話しいただきました。大学受験がうまくいかなかった佐藤先生は、高校がいわゆる進学校だったこともあり、周囲と自分を比べてしまったそうです。そんな中、人生に3つの「雷様」が落ちてきます。この「雷様」とは、講演中に用いられた「出会い」や「到来」を指す表現です。
1つ目の「雷様」は、アメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)での『心のガリレオ先生』との強烈な出会いです。大学時代、ナサニエル・ホーソーンの小説『The Scarlet Letter』に出てきた湖が見たくなったことをきっかけにアメリカに行った際、MITのNoam Chomsky先生の講義に参加する機会がありました。そこで佐藤先生は、言語研究とは人間の本性の研究であることを知り、その『言語を』ではなく『言語で』研究する文系・理系を超えた壮大な研究発想に感動したそうです。Noam Chomsky先生との出会いが、佐藤先生を言語学に引き付けました。帰国後、生成文法を学ぼうと東北大学の大学院に進学、その後アリゾナ大学に留学しました。『冬の時代』と比喩された大学時代は過酷でしたが、今となっては、佐藤先生はこの時代を「修行・引き出しを増やす時代」だとして賢明に生きるべきであると語っていらっしゃいます。
2つ目の「雷様」は奥様との運命的な出会いです。アメリカに留学して最初の頃は英語ができず、周囲に圧倒される日々が続き、先生は挫折を経験しました。ちょうどその時期、将来的に奥様となるインドネシア人の女性に出会ったのです。先生はこの出会いを、語学のためにナイアガラ近くの学校に行かされたことにかけて『ナイアガラの滝には落ちなかったが、恋には落ちた』と表現しています。その後、アリゾナ大学の博士課程時代に結婚され、結婚してよかったと感じられることが2つあるそうです。1つ目は、イスラム教との出会いです。とにかく心がきれいで暖かいインドネシアの人々に囲まれ、結婚を機にイスラム教に改宗しました。2つ目は、奥様の話すインドネシア語とジャワ語に魅力を感じたことです。これは、現在の先生の研究にも大きな影響を与えています。これらから先生が得た教訓は、「何があるかわからない予定不調和な生き方に面白さを感じること」や「周りの目を気にせずに自分のやりたいことをやる」という、決定を急がないやり方をしてみようということです。
3つ目の「雷様」はエピファニー(「啓示」を意味する)との出会いです。ここでの啓示は、言語学から見える人の生き方そのものを指します。先生がシンガポールで言語学の講義をしていた際の出来事です。言語学は「不思議な現象がある→仮説を立てる→検証する→間違えていたら仮説を立て直す」の繰り返しで、人生は「難問が出てくる→乗り越える→達成感を得る→次の難問が出てくる」の繰り返しです。この比較から見えてくることは、「生きる意味」を探すより「生きることから生まれる意味」を探すべきであるという考え方です。先生は『これこそ人生の縮図ではないか』と考えています。
以上3つの「雷様」が、先生のこれまでの人生を動かした衝撃的な出会いでした。私は今回の講演の中で、「生きる意味」を探すより「生きることから生まれる意味」を探すべきであるという考え方や、他人と自分を比べるのではなく「自分ができればそれはそれで良い」という考え方がとても印象的でした。そうした考え方の源は、佐藤先生が「修行・引き出しを増やす時代」と言われた大学時代に培われたものです。これは、大学時代に学んだことがその後の未来の生き方に影響を与えているということだと思います。先生の「他人ではなく、自分自身と勝負する」というスタンスは、私が今まで大事にしてきたものでもありました。そのスタンスを今まではどう表現したら良いか分かりませんでしたが、今回の講演を聞いて、先生の経験を以てはっきり言語化された気がして自分の中の消化不良な感じが晴れました。困難に直面しても乗り越えようと足掻いたり「雷様」の衝撃を受けたりしながら、学び続けられてきた佐藤先生の強い生き方は、人生を豊かにする学生時代からの学びが根底にあってこそ実現されてきたのではないでしょうか。
国際関係学科1年 さくら
コメントシートより
- 私は最近人生において悩むことが多くありました。上手くいかないことが多く、親元はなれて1人暮らしをした結果、「1人で生活を成り立たせるには、私はあまりにも未熟すぎる」、そう思いながら生活していました。でも今回の講演を聞いて、この状況はもっと自信を持つための、次に進むためのステップなのだと前向きに捉えることができ本当に1時間半全て意味のある時間でした。「困難は成長するためのステップだ」この言葉を忘れないように、自分を好きになれるように前向きにいきたいです。しっかり自分軸を持ちます。またデジタルデトックスにもトライしてみたいです。
- 今回お話を聞いて今まで18年間生きてきて今後のビジョンがとても不明瞭なことに不安を感じていたけれど、そもそもこうなりたいという目標がある人でさえ未来がどうなるかなどわからないということを知れて以前より将来に対して楽観的に捉えられるようになったように感じた。まだ完全に不安がなくなったとは言えないけれど何が起きるかわからないということを不安ではなく楽しみだと思えるような生き方をしたいと思う。