第26回 学生スタッフレポート

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失ったものではなく、今あるものを数える

山田 千紘 氏(モチベーショナルスピーカー)

皆さんこんにちは!
「総合2023」第26回講演は山田千紘さんにお越しいただきました。山田さんは20歳の時に事故で両足と右腕をなくされましたが、その状況の中で自立して生活するという目標をクリアして、現在ではYouTubeなどでご自身の経験を発信されています。講演では、事故に遭った日から現在にいたるまでどのように考えて生きてこられたのかお話しくださいました。

事故に遭った当日、毎日がむしゃらに働いて疲れ果てていた山田さんは、電車を乗り過ごし駅のホームで寝ていました。意識がほとんどないまま、入ってきた最終電車に乗ろうとして足を踏み外し、ホームに転落したことで事故に遭ったそうです。助からないと言われたほどの状況から命を助けてもらった山田さん。意識が戻ってしばらくは体がなくなったと感じなかったそうです。腕や脚の感覚があるのに見えない「幻肢」という現象が起こっていました。朝起きていつも通り歩こうとベッドから起き上がっても、歩くことはできないためベッドから落ちてしまったそうです。山田さんは絶望し、明日の自分の姿が見えなくなり、毎日死にたいと思っていたと当時を振り返りました。

そんな山田さんの気持ちが切り替わる出来事が2つありました。1つ目は友人によるお見舞いです。山田さんは最初、合わせる顔がないと感じて事故に遭った体を隠していましたが、「元気そうじゃん」といつも通りに話しかけてくれる友人を見て、彼らと別れた後に涙が出てきたそうです。「お前は何も変わってないよ」という無言のメッセージのように感じられ、周りは変わらず接してくれるのに自分の気持ちだけが悪い方向に変わってしまっていることに気付きました。2つ目は家族の存在です。親からもらった体を傷つけてしまったことへの後悔や、障害年金がもらえないことでお金の面でも親に迷惑をかけてしまうことを考えていました。こんなに迷惑をかけるなら死んだ方がマシなのではないか、しかし死ぬことが一番の親不孝なのではないか、このように感じた山田さんはこの先どうすれば良いのかを考え、自立という目標を掲げました。山田さんの考える自立とは、自分の足で歩き、自分の力でお金を稼いで生活するということです。

そして山田さんは、目標を立てるからにはいつまでに達成するかという期限を決めなければならないと思い、同世代の大学生が社会に出る22才の4月までに自立することを決めました。そう決めるとするべきことは沢山あり、寝ている場合ではない、死にたいと言ってる場合ではないと行動をするようになります。まずは自分に残された左手を使いこなせるように左利きの練習をし、義足歩行の練習も行いました。期限内に目標を達成するためには他の人の何倍もの時間をリハビリに費やす必要があり、毎日1万歩歩いたそうです。義足で歩けるようになると次は車の免許を取得し、資格を取得するために職業訓練校に通いました。こうして事故から2年後に障がい者雇用で就職することができました。同時に一人暮らしを始め、料理や洗濯も自分一人の力でできるように努力されました。障がい者雇用では同期と同じ土俵に立てないという心苦しさと今後のキャリアを考え、現在では一般雇用で別の会社に就職されています。

山田さんは親や周りの人を安心させるためにSNSで自立して生活している様子を発信していました。すると思わぬところから反響があったそうです。先天性の障がいを持つ子どもの親から、山田さんを見ていると勇気と希望がもらえる、自分の子どもにもこういう風に育ってもらいたいというメッセージが届くようになりました。山田さんは事故に遭って迷惑をかけてばかりの人生になると思っていたけれど、自分が生活している様子を見せることが他の人に勇気を与えることに気付き、発信したいという思いが強くなったそうです。それからはYouTubeなどで、日常やチャレンジしている姿を発信していくようになりました。昨年の夏には富士山に登頂し、その時の様子がテレビで特集されました。テレビで山田さんが話していた中で印象的だったのは、「迷惑ばかりかけてきたから、誰かのためになるということが頑張る活力になる」、「多くの人に助けられて支えられてきた、彼らに返せることを考えた時、片腕一本で全力で生きてその姿を残すことで恩返しをしたい」という言葉です。

講演の最後に受講生へのメッセージとして2つのことをお話しくださいました。1つ目は一歩踏み出すことが大切ということです。今立っている場所が±0だとすると一歩踏み出すことは+1にも2にも3にもなります。失敗しても元の位置に戻るだけで、そこには経験値がついてきます。考えているだけで何もしなければ±0のまま経験値も上がりません。必ず成功するとは限りませんが、必ず成長することはできるとお話しされました。2つ目は誰にでも失敗はあるということです。失敗すら経験値に変えていく姿勢が大切だと話されました。山田さんは手足3本を失いましたが、今あるものを見つけることができました。左腕、言葉が話せること、見ることができること、聞くことができること…。失ったものではなく、今あるものを見つめることが大切だとお話しされました。

私は山田さんの講演を通して、家族や友人の存在など周りとの繋がりの中で山田さんは自立という目標を持ち、達成することができたのだと感じました。また、周りの人たちに支えられた分、誰かのためになることをすることが頑張る活力になると話されていたことが印象的で、支えてくれた人に恩返しがしたいということが山田さんの原動力、ひいては自分軸を構成する要素の一つなのだと思いました。また、山田さんの軸には色んなチャレンジをして可能性を広げていきたいという思いもあると思いました。失敗を経験値に変えて行動していく山田さんの姿勢はとてもパワフルで、聞いている私たちを前向きにする講演だったと感じました。
国際関係学科3年 シンシン

コメントシートより

  • 私は今まで、ついつい過去に失った物にばかり執着してしまうことが多かったが、その行動は何も生まないと薄々気づいていた。それが今日の講演を聞いて確信に変わった。今日の講師の方は不注意から生まれた事故で片腕両足を失ったにも関わらず、一言も「あの時もっと注意していれば」といった過去を悔やむワードを言わなかったのがとても印象に残ったと同時に、本当に自立して前を向いて人生を生きているんだなと感じた。失ったものを数えても何も人生にはもたらさないので、私も前向きに生きていけるよう努力をしたい。
  • どんなに挫折を経験しても、挑戦し続ける勇気と希望。自分の叶えたい目標を具体的に掲げ「続ける」ことがどれだけ希望に溢れた人生を送ることができるのか。 一番大事なことだが、日常生活では忘れがちな人生の本質のようなものに気付かされた。 常にこれまでの経験や失敗、周りの目、失ったものを見てしまうが、ただ明日を見つめることはできていそうでやっていなかったことだと思う。
  • 絶望を味わった後、すぐに目標を設定している姿に山田さんの行動力の速さを感じた。目標をいつまでに達成するか決めることが、達成するために必要だということを学んだ。自分が返せる恩返しは全力で生きて、誰かを励まそうと努力することだと述べていたことが印象的である。私は頭の中で考えるだけで、すぐに行動できないことがあるので、今日の講演を生かして、一歩踏み出し、行動したいと思う。失敗を恐れず挑戦していきたい。少しの幸せを自分自身で感じることで楽しい人生を味わい、後悔のない人生を歩んでいけるなと山田さんの講演から感じた。
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