第23回 学生スタッフレポート

  1. HOME
  2. 大学案内
  3. 第23回 学生スタッフレポート

生きるための読書 ~自分軸を創造するために~

秋満 吉彦 氏(NHKエデュケーショナル シニア・プロデューサー)

みなさん、こんにちは!「総合2023」第23回は、NHKエデュケーショナル シニア・プロデューサーの秋満吉彦さんにお越しいただきました。秋満さんは熊本大学大学院修了後、1990年にNHKに入局し、ドラマやバラエティーなど様々なジャンルの番組をご担当され、現在は「100分 de 名著」という教養番組のプロデューサーとしてご活躍をされています。講演では、秋満さんが自分の人生に影響を与えた本を紹介しながら、その本を読んだことでどのように学び、考えるようになったのか、そして読書をすることの素晴らしさを思う存分に語ってくださいました。その中でも特に印象に残った秋満さんのお話をここでみなさんと共有したいと思います。

まず1つ目は、人間は人生から何かを期待されているというお話です。院生時代、将来何をしようかと悩んでいた秋満さんは、同じゼミに所属していた方からヴィクトール・フランクルの『夜と霧』を薦められました。この本は、精神科医であるフランクルがナチスの強制収容所で過ごした日々を綴ったものであり、人々が絶望的な状況の中でも希望や美しさを見つけていく内容になっています。その中で、ある人たちが収容所での生活に耐え切れずフランクルに自殺をしたいと相談を持ちかけるシーンがあります。その際、フランクルが「あなたには待っている人やことはありますか」とその人たちに問いかけると、一人は科学者で執筆中の論文が残っていることを思い出し、もう一人は外国に逃げた子どもが自分の帰りを待っているはずだと思い始め、2人とも自殺願望から逃れることができました。秋満さんはその部分を読んで、人生というものは自分から期待をするものなのではなく、人生が自分に対して期待をするものなのだと捉えることができ、そのおかげで、自分は世の中から何を期待されているのだろう?と新たな視点で自分の将来を考えることができるようになったそうです。

私はこの話を聞いて、フランクルの「あなたには待っている人やことはありますか」という言葉を自分自身に問いかけてみたところ、自分にはやらなければならないミッションがあると心を奮い立たせることができ、とてもポジティブな気持ちになりました。私もよく嫌なことがあると急に無気力になってしまうのですが、きっと、人はつらさや苦しさを強く感じていると目の前にあることしか考えられなくなり、本来もっていた目的や希望を見失ってしまうのかもしれません。だからこそ、たとえどんなにつらいことがあったとしても、これは人生に何か試されているんだとある種ゲーム感覚で今の状況を捉えられれば、生きる意味や価値を見出すことができるのではないかと感じました。このフランクルの言葉は、少しでも生きるのが大変だと感じている人たちにぜひ届けたいメッセージだと思いました。

続いて2つ目は、人には無限の可能性を秘めているというお話です。秋満さんはNHKに勤めてからずっと美術番組を担当したいと思っていましたが、バラエティー番組など自分がそこまで興味を持っていない分野のものを任されることが多く、やりたいことがなかなかやれない状況に嫌気が指していた時期がありました。そんなときに出会った本が河合隼雄の『ユング心理学と仏教』で、秋満さんはその本の中で、空や無というものはすっからかんで何もないのではなく、無限に有があるということを知りました。秋満さんはそれを今の自分の状況と照らし合わせて考えてみた結果、もし自分は無限の要素から成り立っているのだとしたら、自分の得意なことや好きなことだけに注力するのはとてももったいないことなのではないか、もっと自分の中に眠っている可能性を開拓するべきなのではないかと感じるようになったそうです。そこから、当時担当していたトークバラエティーも嫌がらずに積極的に取り組むようになり、仕事がどんどん楽しくなっていったそうです。

私は自分がその当時好きだったこと、やりたかったことを振り返った際に、一貫性がないとよく感じていました。そのときそのときに興味を持つものが本当にどれもバラバラのため、自分といったらこれと表せられるようなものがないことや浅く広く物事に興味を持ってしまう自分に少しコンプレックスを抱いていました。ですが、この秋満さんのお話を聞いて、限られたものだけに縛られず多くの物事に興味を持つことは、自分の可能性を広げている最中であること、そして自分は今まで無意識のうちに自分の可能性を少しずつ見つけていったのではないかと気づくことができました。私はきっとこれからも興味を持つものはどんどん変わっていき、そのたびに様々な経験をしていくと思いますが、そのひとつひとつの好奇心は自分を構成する大切な要素であることを胸に刻みながら行動していけたら良いと思いました。

秋満さんの講演を通して、読書から学べることが本当にたくさんあると実感しました。今の私は勉強やアルバイトなどで時間に追われていると感じていますが、移動中や家でリラックスしているときなどスキマ時間に本を読むことはいくらでもできるので、普段から読書する習慣を身に着けて自分自身をレベルアップしていきたいと思いました。みなさんは普段読書をしていますか?秋満さんが今回紹介してくださった本、ぜひ手に取ってみてくださいね!
数学科4年 みずいろ

コメントシートより

  • 秋満さんは人生の分岐点で本に助けられたと学んだ。大学院生で将来何をしたいか悩んでいる中で、後輩が教えてくれた本に出会い、自分が社会に何を期待されているか考えることで、自分のやりたいことを発見できた。全く興味のないドラマの番組を担当することになり、自分がやりたいことが全くできない不満があった中で、出会った本から、自分の今ある状況を受け入れ、価値を見出すことを学んだ。また、自分が苦手なこと、やりたくなかったことから自分の可能性が見えることもあると分かった。このように、出会った本が自分に届いた手紙と考え、自分の心の中にキャラクターがいると考えることで、自分の人生を左右する本との出会いがあると分かった。また、人間は様々な軸を持って生きていると自覚することで、自分の様々な面に気づくことができると学んだ。
  • 今回の講演を通して、困難な状況や自分が想定もしていなかった状況に遭遇した際に、逃げずにまず一度その状況と向き合ってみることの重要さについても学びました。秋満さんのお話でもあったように、これまで自分が適している・向いていると思っていたことでも実際は自分が過信したほどの力はなく向いていなかった。あるいは、自分には向いていないと考えていたかもしれないが、適性があったということにそうした思いがけない経験を通して出会うことができると感じました。そして、そこから自分軸や自分が大切にしたいことを見つけていこうと考えました。また、秋満さんにとっての本のように自分にとって常に影響を与え続けてくれるものを見つけ、そこに対してのアンテナを高く持っていようとも考えました。
  • 私は読書が好きなので今回の講演では本に絡んだお話が聞けてとても楽しかった。手にとった本を自らに届いた手紙だと思って読むという言葉がすごく素敵だなと思った。本がくれる様々な体験は実際に自分が経験することのできない感情や事柄を共有してくれる。大人がよく、たくさん本を読みなさいと言うが、最近になってその理由がよくわかるようになった。根底にしっかりとしたぶれない軸を持っていることを前提に、環境によって自分を柔軟に変えることが必要である。頑なに自分を貫こうとするのではなく、しなやかに、そして少しのことは跳ね返す力を持っていると良い。
Copyright©2019 Tsuda University.
All rights reserved.