第21回 学生スタッフレポート

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関係の中で自己を捉える

仲岡しゅん 氏(弁護士)

「総合2023」第21回講演、11月30日は仲岡しゅんさんにお越しいただきました。仲岡さんはトランスジェンダーであり、当事者としての視点からアイデンティティの変遷と性別移行のプロセス、周囲との関係性についてお話ししてくださいました。

仲岡さんは自己紹介をする際、「男性生まれの女性弁護士です」と言うそうです。生まれ持った性別は男性で現在は女性弁護士である仲岡さんは、つまり、トランスジェンダーかつ性同一性障害ですが、トランスジェンダーは一人の人間の在り方、性同一性障害は移行のための治療を受ける際に必要な診断名であり、イコールで結ばれるものではないそうです。また、男性がセーラー服を着て「今日から女性です」と言ってもそれはトランスジェンダー女性であるということにはならないこと、そもそもトランスジェンダーは長い時間をかけて性別を越境していくものであることもお話しされました。

仲岡さん自身、中学生の頃から違和感を抱き始めたものの、今よりもみんな同じが当たり前の社会で「あいつはおかしい」「おかまだ」と言われることが怖く、違和感を抱えつつ見て見ぬふりをしたまま大人になったそうです。女性が性の対象ではないことに気づいても隠して女性を好きなふりをし、生まれ持った男性という性別に違和感を覚えていることにうっすら勘づいても直視できずに見て見ぬふりをしていて、見た目や身体が変わったのは二十歳を過ぎてからだったということ、加えて性別移行に至るまでの過程をお話ししてくださり、時間をかけて越境していく過程が確かにそこにあるのだと感じました。

また、性別移行は性別適合手術を受けて身体を移行することだけを指すのではなく、女性として働くといった社会生活実態の変化、家族や友人など周囲との関係性の変化、身体の変化、法律上の性別を変更するなどの様々なプロセスがあります。さらに身体の変化一つをとっても、性同一性障害の診断をもらう、ホルモン治療を受ける、性別適合手術を受けるなどの過程があり、長い時間がかかることがわかりました。

さらに仲岡さんは、弁護士になる前に女性として働いていた職場での関係性についてもお話ししてくださいました。この中で私は、「気づかないうちに当事者とすれ違っている」「多くの当事者は見えない」という言葉がとても印象に残っています。仲岡さんが職場を離れる際、同僚から「仲岡先生みたいな(セクシャルマイノリティの)人と一緒に働けてよかった」「最初は(トランスジェンダー女性が来ると聞いて)どうなることかと思ったけど、やってみたらなんの問題もなかった」と言われたそうです。このお話を聞き、よく知らないからこそ「トランスジェンダー」という言葉につられて偏見や不安を抱いてしまうかもしれないけれど、同僚の一人として一緒に働くなどの距離感に居ればトランスジェンダーであろうとなかろうと何のことはないと感じるのだと思いました。

私は、今回のご講演を聞くまで、仲岡さんは強い人だと感じていました。しかし、中学生の頃はゲイだとバレるのが怖かったと話されていて、最初からずっと強かったわけではないのだと知りました。そして、自分自身が立っていられるように、過去から今に至るまでご自身で足場を作ってこられたのかなと感じました。 また、仲岡さんは自身が当事者であるLGBTを切り口にお話ししてくださいましたが、セクシャルマイノリティでも障害者でも、所謂マイノリティと言われる人々は身近に普通にいるのだということに気づかせられる講演でした。多くの当事者は見えないかも知れないけれど、普段生活している中ですれ違うくらい身近に存在しているということを心に留めて、当事者について知って的外れな偏見や不安を無くしたり、自分の中の偏見や不安との付き合い方を考えたりしていきたいと思いました。

また、仲岡さんは自身が当事者であるLGBTを切り口にお話ししてくださいましたが、セクシャルマイノリティでも障害者でも、所謂マイノリティと言われる人々は身近に普通にいるのだということに気づかせられる講演でした。多くの当事者は見えないかも知れないけれど、普段生活している中ですれ違うくらい身近に存在しているということを心に留めて、当事者について知って的外れな偏見や不安を無くしたり、自分の中の偏見や不安との付き合い方を考えたりしていきたいと思いました。

国際関係学科4年 どんぐり

コメントシートより

  • 今日の講演を通じて、まずは正しい知識を得ること、そしてバイアスのない目で理解することの大切さを学んだ。日本では6月から「LGBT理解増進法」が採択された。私はこれをきいて、とんでもないことになったと思った。なぜならネットでこのことについて調べていく中で、「心は女性だから」と偽って女子トイレや女湯に入ってくる男性が現れると危惧したからだ。しかし今日の講義で、仲岡さんはそれは誤解であり、LGBTだからといって犯罪を犯すことが許されるわけではないとおっしゃっており、私の理解が知識不足やバイアスから来る誤解だったと知った。私たちはネットなどの感情的な意見に左右されることなく、正しい知識を選択して摂取していかなければならない。そして双方のすれ違いや対立の背景には、理解不足があることを学んだ。
  • LGBTQという分類が存在しているが、実は誰もが同じような悩み、感情を抱えていて、当事者、当事者以外の人関係なく同じように生きているということを感じた。LGBTの話以前に、今私たちが生きる社会で、ひとりひとりの権利が損なわれている状況がたくさんあるのだということに気づいた。
  • 今回の講演会では、自分自身のことをどう捉えて受け止めるかということを学びました。自分のことについて考え、自分の悩みについて受け止めるということは簡単なことでは無いですが、自分が幸せに生きていくためには性別など関係なく、誰にでも必要な過程であると思うため、私は自分のことについて考え、自分という存在を理解してあげる時間をこれから作っていきたいと思った。
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