第20回 学生スタッフレポート

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孤立し困窮する若者支援の現場から

今井 紀明 氏(認定NPO法人D×P理事長)

皆さん、こんにちは!
「総合2023」第20回講演は今井紀明さんにお越しいただきました。今井さんは10代の孤立の解決を目指している「認定NPO法人D×P」の理事長を務め、悩みを抱えた10〜20代の若者を対象に居場所や相談先を作る支援活動をしています。今井さんは、高校生時代にイラクで武装勢力に拘束され、帰国後に強烈なバッシングを浴びたことにより、対人恐怖症に陥った経験があります。自身が10代の頃に生きづらさを経験したことから、不登校や貧困などにより孤立に苦しんでいる若者の支援をしています。

初めに、今井さんが取り組んでいる若者の社会課題についてお話しされました。日本には貧困に苦しみながらも、親を頼ることができず、生活に不安を抱えている若者が多くいます。そのような若者に対して、今井さんは「ユキサキチャット」というオンラインで気軽に相談できる窓口を提供しています。相談者の状況に応じて、食糧の支援や現金の給付を行う「ユキサキ支援パック」を送ります。講演内で、利用者である東京で一人暮らしをする女子大生について紹介されていました。彼女は1日1食の満足に食事が取れないほど生活に困窮していましたが、「自己責任」と言われることを恐れなかなか助けを求めることができませんでした。しかし、ユキサキチャットの伝えている利用対象者が「苦しんでいる人」ではなく、「不安を抱えている人」であったために、安心して気軽に相談をすることができたそうです。今井さんたちの取り組みはこれ以外にもたくさんあります。興味のある方はウェブサイトなどをみてみるとこの問題の裾野の広さと複雑さがわかると思います。

講演の後半で、今井さんは自分軸と受講生へのメッセージについてお話しされました。今井さんは18歳の時に経験したイラク人質事件で対人恐怖症に陥り、社会復帰できたのは大学卒業後の24〜25歳であったそうです。しかし、今井さんは現在も高校生時代のように、活動的で献身的です。そしてそのような今井さんの行動軸は、自分とは異なる立場の人に思いを馳せ、自分にできることを考え、現地に赴くなどして深掘りをすることです。自分とは異なる立場の人について興味を持つためには、本を読む、ドキュメンタリーを見る、人の話を傾聴してインタビューをする、現場に行く、ボランティアに参加する等ができるそうです。大学内にも様々な視点があり、学びの観点が広まれば世界の見え方も変わっていきます。そこで感じた面白そうなこと、現場に行って考えたことを深掘りしてみる必要があります。そのようにして、知的好奇心が広がっていくのだとお話しされていました。今井さんは具体的に、イベントを企画する、現場に行く、会社を起こす、署名行動をする、のような行動を起こすのだそうです。受講生へのメッセージとして、「一人の力は小さいけれど、積み重なれば強くなれる」と一人ひとりが行動を起こすことの大切さについて伝えられていました。私は小学生の頃から募金活動や貧困問題について考える機会がありましたが、微力な貢献では問題を解決できないのではないかと考えていました。しかし、今井さんの「自分一人の影響力は大きい」という言葉で、少しでも慈善活動に携わりたいと思うようになりました。さらに今井さんは、社会を変えるための行動をする際には、なかなか結果が出なかったり、他者との関係の構築に苦労したりすることがあるけれど、そのようなときは、諦めないこと、しっかりと休むこと、他者に対して無理に共感しようとせずに受け入れることが大事だとおっしゃっていました。このように、他者と自分を尊重しつつ、行動を起こしていくことが大切であると伝えてくださいました。

日本では約7人に1人の子どもたちが相対的に貧困と言われ、支援を必要としている子どもたちは多くいます。私は未来を担う子どもたちの教育に貢献することが夢で、家庭環境に問題を抱える子どもの学習支援ボランティアに参加したことがあります。しかし、私は課題を解決するためにリーダーシップを取ることや人付き合いが苦手で、自分は何も貢献ができていないのではないかと考え込んでいました。今井さんの講演を通して、様々な立場にいる人について主体的に調べ、自分のできる範囲で自信を持って社会に貢献したいと考えるようになりました。

英語英文学科3年 紗菜

コメントシートより

  • 自分は何をしたいのか、何を思っているのか、様々なことを改めて考え直すきっかけになりました。ありがとうございました。
  • 学びは多様であること、また、行動を起こすためにすべきことの内容に共感した。自分の能力を発揮するためにも、意見を外に出し、自分から行動することが大切である。また、1人の力をみくびらず、周りを巻き込み、積み重ねると大規模なものになるということを忘れずに、恐れず挑戦してほしいという意見に感動した。
  • 講師の苦しかった経験から、子供の不条理な環境を変えたいと行動し始めたことに驚き、何かを感じたきっかけから行動することの大切さを学んだ。
  • 講演の中で、「興味・関心がないものにも、あえて挑戦してみることが大事」だと講師がおっしゃっていた。私は、将来何がしたいのか漠然としているため、自分の視野を広げる上でも何事にも挑戦してみたいと感じた。インターンや大学が紹介してくれるプログラムに自分からアクセスして、興味・関心を広げていきたい。
  • 「生活に困っている人」ではなく、「生活が不安な人」という表現をしていたことに驚いた。食べ物をパターン別に支援したり、相談できる場を作ることもとても大事だが、その場に導くために工夫をしなければならないのだと学んだし、たった一言で意識を変えることが可能なのだなと感じた。
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