第13回 学生スタッフレポート

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紛争地からの伝言:私たちはどう生きるか

村田 慎二郎 氏(国境なき医師団(MSF)日本事務局長)

みなさんこんにちは!
「総合2023」第13回、9月28日(木)の講演は、国境なき医師団日本事務局長の村田慎二郎さんに、「紛争地からの伝言:私たちはどう生きるか」というテーマでお話いただきました。

村田さんは、国境なき医師団の活動に参加して以来、現地の医療活動を支える物資輸送や水の確保などを行うロジスティシャン、また事務職であるアドミニストレーターとして経験を積んでいらっしゃいました。2012年には、派遣国の全プロジェクトを指揮する「活動責任者」に日本人で初めて任命され、援助活動に関する国レベルでの交渉などに従事されています。以来、延べ10年以上を派遣地で過ごされてきました。一方で、国境なき医師団の活動に参加する以前の村田さんは、大学卒業後、外資系IT企業の営業職として勤務されていました。今回の講演では、「国境なき医師団日本事務局長」としての経験談をはじめとして、私たちのような多くの大学生が経験する「就職活動期」、そしてそこから得ることのできた村田さんの「人生観」についてお話しいただきました。

紛争地でのエピソードの中でも、特に衝撃的なお話がありました。ある時、国境なき医師団チームがスーダン西部のダルフールにある避難キャンプに向かうと、そこには学校も家もなく、ただ、かろうじて「命はある」状況だったといいます。そんな中で、村田さんは、ある少年に「君の夢は何?」と何気なく問いかけたそうです。そこで返ってきた少年の答えは、「カワジャ(外国人)になりたい」という言葉でした。少年たちが想像している外国人は、恐らく、外の世界から避難キャンプに援助をしにきている「国境なき医師団」のような人々のことでしょう。小奇麗な恰好をしていて、医療者としての知識があり、自力ではこの状況をどうすることもできない彼らからすれば、切望する存在だったかもしれません。村田さんは、少年の答えを聞き、強い衝撃を受けたといいます。日本の子どもに同じようなことを聞いても、きっとこのような答えは返ってこない。紛争地で懸命に生き延びるしかない子どもの口から出た言葉は、誰もが想像することのなかった答えでした。

村田さんのお話を通じて感じたのは、国境なき医師団のスタッフの方々に共通している「信念の強さ」でした。「同僚たちは、自分の国で暮らしていればより快適な暮らしができるはず。だけどそんな自由をいったん置いて、この紛争地にきて全くかかわりのない人たちを助けている。みんな、モチベーションがピュア。みんな、何かしらのプロフェッションを持っている。」というお話がありました。「自分のことは差し置いて、困難にある人の助けになりたい」と、この職を任された自分自身の使命を果たそうと、その一心で活動されている真っ直ぐな気持ちが伝わってきました。

さらに、シリア北部のアレッポで活動責任者になった際には、医師団の活動地である病院近辺も空爆の被害にあったといいます。そんな危機にさらされている中で村田さんは、活動責任者として、ある判断を迫られました。「このまま現地に残るかどうか」。村田さんがスタッフ全員に意志を聞くと、返ってきた答えは全て「残る」というものでした。このような緊急時においても迷いなく決断するスタッフの方々は皆、揺るぎない信念を、「自分軸」を持って援助活動をしているのだと、お話を聞いて実感しました。

「夢を求めることのできる環境が、人間にとって本来どれだけありがたいか。」村田さんの人生に大きな影響を与えた著書、『絶対内定』の著者である杉村さんの言葉は、村田さんの大胆な生き方そのものを表しているように感じました。そして、村田さんはまた、「人生、そんなに無い。」「どうやって自分の命を使っていくか。」ともお話しされていました。この言葉は、これまで、「自分の”命”を、誰かの、何かのために”使う”」という考え方に至らなかった私にとっては、衝撃的な言葉でした。自分のために生きることも一つの生き方ですが、誰かのために命を”使う”という生き方もあるのだと、また一つ世界が広がったような気持ちになりました。

さらに、人生設計の上では重要な要素が3つありました。「Being-どうなりたいか」「Having-何をやりたいか」「Giving-どんな影響を与えたいか」。この3つの問いの答えを埋めることで、はじめて見えてくる「自分軸」もあるかもしれません。

「私たちはどう生きるか」。今回の講演タイトルでもあるこの問いに対して、みなさんはどんなことを考えたでしょうか。「自分の生きる目的ってなんだろう」「自分はこれから、どんなことをして生きていこう」。過酷な紛争地からの伝言を受け取り、自分の頭の中が、ぐるぐると忙しく動き回る講演だったように思います。そして、これらの答えは、必ずしも一つとは限りません。私たちが夢を追い求める過程で、点と点が繋がる瞬間がきっとあるのだと思います。私たち1人1人の心を大きく奮い立たせられるような、行動する勇気を与えられたような講演であったように感じます。
国際関係学科4年 みけ

コメントシートより

  • 同じ地球なのに全く違う世界だと感じました。同じ年齢の人たちが第一線で戦っていることもあるのだろうと思うと、何も考えずにただ生きるということをやめたいなと感じました。明確な強い夢を見つけるために、大学生活で様々な経験をして、絶対に叶えたい夢を見つけたいと思いました。夢を持つこと、持てることの大切さを実感を持つように、学ぶことができました。
  • 私自身今まで具体的な夢などなく、流されるまま生きてきたような人生だったので、今回の講演で自由に夢を持てない人が大勢いることを知り、自分がどれだけ楽に何も考えずに生きてきたのかを実感させられました。そして、やる前から諦めてしまうことも多々あったので、今後は自分の人生をかけてできるような夢を見つけられるように探していきたいなと思いました。
  • 将来を考える上で、Being・Having・Givingという三つの観点を持つことの重要性を学びました。自分は今就職活動真っ只中ですが、「自分は結局何をしたいんだろう」という問いに悩まされることが、多々あります。そんな中で本日の講演をお聞きして、まず「どんな人になりたいのか、ありたいのか」を考え、その次に「そこで何を得たいのか」、そして最後に「自分がどのような人にどのような影響を与えたいのか」まで考えることができたら、自分が将来心から取り組みたい、これができたら本望と思える究極の夢に近づける気がしました。
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