第11回　学生スタッフレポート

皆さん、こんにちは！

「総合2023」第11回講演は「注文に時間がかかるカフェ」の発起人である奥村安莉沙さんにお越しいただきました。奥村さんは幼いころから吃音（きつおん・どもり）があり、人との違いに悩んでこられました。現在全国各地で、吃音当事者が生きやすい社会を作るために、吃音のある若者たちが接客の夢に挑戦できる1日限定のカフェ「注文に時間がかかるカフェ」を全国各地で開催中されています。今回、奥村さんには「生きづらさの中から見つけた自分軸」というテーマでお話ししていただきました。

奥村さんは、幼少期の頃から声が出にくいという症状を抱えていたそうです。他の人と同じように過ごせるよう一生懸命努力した結果、学生生活は順調だったものの就職活動の時に壁に直面します。症状を隠して普通であるように振る舞っていたこれまでとは異なり、就職活動では他の人よりも優れた部分をアピールしなければなりません。他人と異なる吃音を隠してきた奥村さんにとって、人とは異なる強みを押し出すことは難しかったと言います。結局、就職することはできたものの、2年で会社を辞めてしまいます。そしてその後、奥村さんはオーストラリアに渡ります。

私は、オーストラリアでの経験を振り返った奥村さんが、「普通じゃない私からの解放だった」とおっしゃっていたのが印象に残っています。奥村さんが働いていたオーストラリアのカフェでは同僚に、障害のある男性がいました。彼は、身振り手振りでお客さんに接客をしていました。奥村さんは、自分を偽らず、自分にできるやり方で接客をしている彼の姿を見て、感動したと言います。彼の接客する姿が奥村さんに、人それぞれに「普通」があると教えてくれたことで、奥村さんは生きづらさから解放され、自分自身の軸を見つけたのだと思いました。

また、奥村さんは、生きづらさには実はすごい価値があると語ってくださいました。吃音には、最初の音が繰り返される、特定の言葉や音が言いづらい、言葉がなかなか出てこないなど様々な症状がありますが、奥村さんは特にア行から始まる言葉が言いづらいそうです。そのため、例えば「ありがとうございました」が言いづらい時、「どうも」など別の言葉に言い換えているそうです。これは、自分なりにアプローチして問題を解決する力になります。また、奥村さんは吃音という障害があることで社会問題に興味を抱くようになったそうです。これは、自分ごととして社会をより良くしたいと思い、行動することに繋がります。このように、生きづらさがあるからこそ、「困難の中で生きてきた経験は誰にも真似できない凄い価値」になるのだと言います。このお話を聞き、私は、困難を乗り越えてきた経験が今の自分をつくっていることを再認識しました。

奥村さんのご講演の中で「障害は隠しがちだけど、周りに話してみることで自分と同じ生きづらさを感じている人に出会えることもあるかも」という言葉がとても心に響きました。自分の弱みや苦手なことを周囲の人に見せることは簡単ではありませんが、誰かに話すことで過去の自分が救われ、今の自分が勇気づけられたりすることがあると感じたご講演でした。私は、自分の弱みや苦手なことを見せるのはあまり得意ではありませんが、少しずつ人に話し、自分と同じ生きづらさを抱える人と繋がっていけたらと思います。