第9回 学生スタッフレポート

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琉球語、消滅危機言語、言語の多様性

山田 真寛 氏(国立国語研究所・准教授)

こんにちは!「総合2023」第9回、6月22日(木)は、「琉球語、消滅危機言語、言語の多様性」というタイトルで国立国語研究所・准教授の山田真寛さんにご講演していただきました。山田さんは、沖縄の地域コミュニティの方々と共に、琉球語の継承に取り組まれていらっしゃいます。

山田さんは、琉球語での挨拶で講演を始められ、さらには琉球の歌謡まで披露してくださり、私は一気に沖縄の世界観に引き込まれていきました。そして、琉球語が現在、「消滅危機言語」になっているとのお話がありました。消滅危機言語とは、このまま何もしなければ無くなってしまう言語のことで、国内には全部で8つの言語がその危機にあるそうです。山田さんは、その消滅危機言語の1つである琉球語が、廃れてしまうことのないよう、現地での継承に向けての活動をされていらっしゃいます。その活動の根底には、琉球語が次世代に受け継がれず廃れてしまうのを防ぎたいという現地の方々の思いがあり、山田さんは言語学者としてその思いを応援しているそうです。

この講演では、主に琉球語を例に挙げて、言語の保存についてお話しされていました。言語の保存には、使われていた単語やその言語の文法に関する情報を記録して残すという、まるで博物館に資料を展示するような記録保存という方法ががありますが、山田さんは記録保存だけではなく世代間で継承する、「継承保存」というやり方を実践されています。そこには、沖縄に住む当事者の方々が取り組みやすい形で、地域コミュニティと共に琉球語の存続の課題を解決したいという山田さんの思いがありました。実際に現地の市民センターでは、言語サロンを開き、琉球語の継承に関心がある人達が主体となって文法の解読に取り組んでいます。方言には規則性がないように思われがちですが、文法を見つけ出すことで言語を体系化して残すことができるそうです。このような活動を通して、地域から研究者を生み出すことを一つの目標にされています。また、山田さんは常に、言語継承のプロジェクトに取り組む方が内発的に動機づけられているかどうかを大切にしていらっしゃるそうです。

実際に、参加者の内発的な動機を探ったところ、そのほとんどが「子供のため」だったそうです。そこで、山田さんは琉球語で書かれた絵本を制作するプロジェクトを始めました。もちろん絵本を通じて子供に琉球語に対して親しみを持ってもらいたいという思いもありますが、それ以上に、子供に読み聞かせをする親が琉球語の練習をして話せるようになってほしいという思いの方が強くあったのだそうです。「琉球語を母語として獲得する子供が育つ」という大きな目標に対し、親世代が話せるようになるためには、指導書が必要となり、その先には指導者が必要とされる。山田さんは、そのようなステップをイメージした上で、絵本を制作されました。

私はこれまで、研究者とそうでない人の接点は少ないように思ってましたが、このように研究者が自分で地域の方とコミュニケーションを取る場を自発的に作り、共同でプロジェクトを行うということこそ、言語の継承に必要なのだと気付かされました。また、それは山田さんが琉球語の存続の課題を解決したいと心から思っているからこそできたことなのだと思います。そして、山田さんは言語の中の方言について、「方言があると世界が豊かになる」とおっしゃっていました。地元の方言を聞くと心があたたかくなるというように、方言は自分のアイデンティティを形成し、目に見えない形で地域を豊かにしているのだと思います。そのような点から、方言を話している姿には愛と誇りを感じるのかもしれません。

私自身も普段は標準語を使っているのですが、地方の祖父母の家に帰省した際、何気ない会話で方言を聞くと懐かしさを感じ心があたたかくなります。もし、そのような方言が聞けなくなったらと考えると、自分事として嫌だという気持ちになります。琉球語を知らない沖縄の若い世代の人達も、山田さんの活動に影響を受け、消滅の危機を自分事として捉え始めているのかもしれません。

このように、地域にとって大切な意味を持つ方言。日本から方言が消滅する可能性があることに対し、この講演を通して初めて危機感を持つことができました。私たちも地域コミュニティの一員として、色々な形で方言の継承に取り組んでいきたいです。
国際関係学科1年 ヒイラギ

コメントシートより

  • 人がどうしたら嬉しいかを常に考えることが、内発的動機付けに繋がるということを学んだ。自分がやりたいことを実現するために、他人の気持ちを考える。自分軸を持つことは他人軸を尊重することに繋がるのかなと思った。
  • 今まで言葉を保全していくにあたって何かのメリットのために守っていく必要があるものだと思っていたので、言葉を心を豊かにするものとしてとらえられるということに衝撃を受けた。言葉とその言葉を話す人、話したいと思っている人のアイデンティティと深くかかわっていると思った。
  • 日本に方言が予想以上に存在していることに驚いたのと同時に、様々な言語が行き交う国に自分が住んでいるのだと気づいた。言語を意識する機会を増やし、多くの人がどんな方言があるのか、知ることが消滅危機言語を残すことにつながると思った。
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