第23回 学生スタッフレポート

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ぼる塾と私、ぼる塾の私

ぼる塾 酒寄 希望 氏(お笑い芸人)

こんにちは!2022年度第23回講演は、お笑い芸人として活動する「ぼる塾」の酒寄希望さんにお越しいただきました。酒寄さんはぼる塾が結成されたタイミングで育休に入ったため、皆さんの中には、ぼる塾は3人組だと認識している方もいるのではないでしょうか。講演では、酒寄さんがお笑い芸人になった経緯や、ぼる塾結成までのお話、自分がいないぼる塾が知名度を上げていく中で生まれた葛藤とそれを乗り越えた経験を話してくださいました。「自分の居場所はここなのだろうか」と一度でも考えたことがある人は、その問いと向き合う時間になったのではないかと思います。

最初に、酒寄さんはお笑い芸人になる前のお話をしてくださいました。酒寄さんはお笑い芸人になる前に就職をされていますが、就職先の環境は合わなかったそうです。仕事ができないと罵られる中で、自分は何のために生まれてきたのだろうと考えるようになり、退職を決めました。そんな酒寄さんを心配した友人が吉本興業のライブに誘い、酒寄さんはライブで見たお笑い芸人の明るさに魅了されました。そして「今の自分は真逆だけど、こうなりたい」と考え、心のリハビリとしてお笑いを始めました。

お笑い芸人の養成所に通い始めると、ピンでネタを披露する田辺智加さんに出会いました。それを見て、面白い!と感じた酒寄さんは田辺さんに声をかけて「猫塾」というコンビを結成しました。田辺さんは面白くて魅力的で、毎日生きているのがつまらないと感じていた酒寄さんは、田辺さんとの出会いによって、毎日が楽しくなったそうです。しかし、お笑い芸人として売れず、もう売れないから辞めた方が良いと言われることもありました。辞めようと考え、それでも他の芸人仲間や社員の方に引き止められ、そんな中で酒寄さんの妊娠が分かると、田辺さんは「酒寄さんが続けたいなら、私が酒寄さんの居場所を作るから」と言い、ピンとして活動するようになりました。同じ時期に、猫塾は「しんぼる」というきりやはるかさん、あんりさんによるコンビとのライブを計画していました。酒寄さんが体調不良で休むようになると、しんぼると田辺さんの3人でライブをすることになり、作家の方の提案で、3人のネタを作ることになりました。こうして生まれた3人のネタは評判が良く、猫塾としんぼるを合体したぼる塾を結成するきっかけになりました。ぼる塾を結成したいと田辺さんから伝えられた時、酒寄さんは3人で結成するのだと考えたそうですが、田辺さんは「4人でいた方が楽しいから、4人で結成したい」と返しました。

このような過程を経て結成されたぼる塾は、想像していた以上に人気が出て、売れていきました。テレビに映るぼる塾を見て、最初は嬉しかった酒寄さんでしたが、田辺さんの横にいるはずだった自分がいないのを見る度に、自分が田辺さんの足を引っ張っていたのではないかと考えるようになりました。同時に、インターネットなどの書き込みにあった「ぼる塾に4人目はいらない」という声に傷つき、自分はぼる塾にいなかったことにして欲しいと考え、田辺さんに伝えました。田辺さんは「酒寄さんがいて、ぼる塾だよ」「もし酒寄さんが辛いならぼる塾の方向性が間違っているから話し合おう」と返しました。酒寄さんは、自分を一番苦しめていたのは自分自身だった、全て悪い方に考え、味方まで敵だと思っていたと気付いたそうです。

酒寄さんのこの言葉を聞いて、自分のいるコミュニティの中で居心地の悪さを感じた時のことを思い出しました。みなさんもこれまで何となくそんな風に感じたことはありませんか。時にはそれが原因で塞ぎ込んでしまうこともあるかもしれません。そんな時、自分が考えすぎていたせいで、周りが差し伸べてくれていた手に気が付かないこともあります。酒寄さんの講演を通して、そういった悩みがある時こそ、自分の思いを素直に相手に伝えることで、自分の視点だけではなく、他者の視点から気付きを得ることができるのだと感じました。自分の思いを相手に素直に伝えることは簡単ではないと思いますが、それが自分の悩みと向き合うことに繋がり、状況を好転させる鍵になるのだと思います。周りの意見に耳を傾けることは様々な枠を知ることだと考えます。様々な枠から世界を眺めることで見える世界が広がり、結果的に自分の中のモヤモヤが晴れることがあるのだと思いました。

講演の最後に酒寄さんは自分がやりたいことを明確にしようと受講生に伝えました。酒寄さんの場合、やりたいことを明確にしなければ、ぼる塾の方向性が定まらなくなり、3人に迷惑をかけてしまうと考えています。例えば、育休ひとつをとっても、酒寄さんが主体性をもって育休の期間を決めなければ、ぼる塾の3人は「酒寄さんはまだ育休中なんだな」と考えて、永遠に育休の状態になってしまいます。自分の意志がなければ、ぼる塾が今後どのように活動していくかがブレてしまうので、酒寄さんは自分のやりたいことを明確にすることの重要性を強調しました。私たち大学生はモラトリアム期間の真っ只中で、自分が何をしたいのか考える機会が多いと思います。自分が何をしたいのか、突き詰めて考えていくと、分からなくなることもあると思います。酒寄さんは、受講生の皆さんにそんな時に思い返して欲しい言葉を、田辺さんから預かってきてくださいました。それは、「日本の女性の寿命は87歳だから、人に迷惑をかけないなら何をしたって良い」という言葉です。そう考えると、やりたいことは大きなことであってもなくても良いし、いつ始めても遅くないと思えます。やりたいことは明確にしつつ、そのハードルは下げても良いと考えられると良いと思います。酒寄さんのやりたいことは、自分の思う「面白い」を発信することだそうです。今回の講演を通して、自分がやりたいことは何か、改めて考える機会になったのではないでしょうか。
国際関係学科2年 シンシン

コメントシートより

  • 私も酒寄さんのように、自分はこの場には要らないと感じることがある。酒寄さんの場合は、ぼる塾のメンバー、とくに田辺さんの影響が強く、今はぼる塾として居られることに喜びを感じていると感じた。酒寄さんは勇気をだして田辺さんに自分の気持ちを話せたこと自体がすごく勇敢で、人のことを思ったからこその行動であると感じた。「声に出すこと」で周りが助けてくれたり、自分が本当にしたいことを自覚できたりすると学んだ。
  • 酒寄さんは田辺さんと接することによって前向きな気持ちになったり、楽しいという感情を教えてもらったと言っていましたが、田辺さんも酒寄さんだからこそ助けたいという気持ちや、一緒に活動したいと思ったのだろうなと思い、お互いがお互いにとって大切で必要な存在なのだと気がつきました。また、私も酒寄さんのように一人で悩み続けてしまって、精神的に辛いことが時々あるので、もう少し友人を頼ってみようと思いました。
  • 自分なんて要らないんじゃないか、と思ったことや味方となってくれる人を疑ってしまうことなど、4月から新たな環境となりコミュニティに多く属してきた私にとってタイムリーであり、ハッとさせられる講演内容でした。しかしぼる塾の一員の酒寄さんの、「自分が何をしたいのか明確にする」とのお言葉に、自分の道が見えた気がします。悪い方向、悪い方向に物事を考えるのではなく、視点を変えて今自分が何ができるのか。自分が楽しいと感じることができるのは何かに目を向け、次の行動に活かすことを心がけていきたいです。また周りの人を大切にすることの重要性も今回のご講演で深く学びました。
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