第12回 学生スタッフレポート

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セクシュアリティを「⾃認する」ということ

今徳 はる香 氏(NPO法人にじいろ学校代表)

9月22日の第12回「総合2022」では、NPO法人にじいろ学校代表の今徳はる香さんにご講演いただきました。講演は学生スタッフとの対談形式で行われ、学生の視点からの質問にも丁寧にお答えいただきました。今徳さんはにじいろ学校、As Loopという2つの団体で、アロマンティックやアセクシュアルなどのセクシュアリティに関わる活動をしておられます。アロマンティックは人に恋愛感情を抱かないセクシュアリティ、アセクシュアルは他者に性的に惹かれないセクシュアリティを指します。活動では、当事者が気持ちを共有したり、ライフプランを考えたりするための交流会の開催、アロマンティック・アセクシュアルに関する調査や関連のメディア作品の監修などをされています。講演では、今徳さんの活動や、アロマンティック・アセクシュアルのこと、セクシュアリティへの考え方についてお話を伺う中で、枠との関わり方について考えることができました。

様々なお話をしていただいた中で、特に印象に残っていることが2つあります。1つ目は、今徳さんがセクシュアリティの多様性を大切にされていることです。今徳さんは情報を発信する時に、ステレオタイプを作らないことを意識されているそうです。それぞれのセクシュアリティには、明確な条件があるわけではありません。例えば、恋愛感情を抱かないという1つのセクシュアリティの中にもグラデーションがあり、様々な人がいるそうです。今徳さんがAs Loopで行なっている調査(2022年の調査結果)からもその多様性がよく分かります。そんな多様性があるセクシュアリティですが、その多様性を他の人に伝えることには難しさがあるそうです。少人数のテレビドラマの登場人物や、有名人などの人物像や発言から、枠のイメージ像が形成された経験がある人もいるのではないでしょうか。特にマイノリティであると、全体の情報量の少なさから、1度作られたステレオタイプのイメージを変えることがとても難しいそうです。今徳さんは、調査を行って数値として示したり、監修を行ったドラマ内で同じ枠内の両極端な2人の人物を描いたりすることで、その枠の存在を伝えるだけではなく、その中に多様性があることも一緒に伝える工夫をされています。認知度はもちろん大切ですが、いかに多くの人に伝えるかを考えるだけではなく、伝えられた相手の思考を考えることが、その枠が存在する社会を作る上ではとても重要であると感じました。そうすることで、自分自身が「枠」に当てはまるかどうかを意識しすぎたり、他人によって「枠」を作られてしまったりすることがなくなり、自分や他人の気持ちを尊重することにも繋がるのだと考えます。

2つ目は、今徳さんのセクシュアリティを今の自分を表す「ラベル」として捉える考え方です。ここには、セクシュアリティというラベルをいつ貼っても、いつ剥がしても良い、という今徳さんの思いが表されています。私は今徳さんのお話を聞くまで、セクシュアリティなどの枠によって分類されているという感覚があり、常にどこかの枠に属していると感じていました。属しているという意識から、人生において常に認識をせざるを得ないものであると無意識のうちに思っていたため、自分はいったいどの枠に属しているのか、その枠ならばどのような行動をとるべきなのかと考えることがありました。そのため、その枠が必要かどうかの選択をしても良い、さらにその選択は時によって変えても良いという今徳さんの考え方を知った時には驚きました。枠には悩みを抱えた時に自分を救う役割や、自分に合ったライフプランを考えるために使える道具としての役割があります。セクシュアリティをはじめとする多くの枠は、自分を制限するものとして捉えるのではなく、あくまで自分のために利用するものとして捉えることで、自己理解や判断の助けとなるようなプラスのものとして使えると考えます。

このように人はそれぞれ自分なりの「枠」を持つことができます。それらを全て理解し、共感することは難しいかもしれません。ですが、講演中に今徳さんがおっしゃっていたように「そういう人もいるよね」と枠を受け入れることはできるのではないでしょうか。自分の枠にある当たり前を振り返ってみたり、様々な枠の存在を知ったりすることでも枠の見え方は変わります。「そういう人もいるよね」を増やして、多様な人々が自己理解をしやすく、生きやすい世界にしていきたいです。
情報科学科4年 すみっこ

コメントシートより

  • セクシャリティというのは先天的なもので、変わる可能性はあるとしてもセクシャリティという枠に自分を置かなければならない、という認識でいました。しかしセクシャリティを自認するということは、どこまで行っても自分次第な行動なのであり、絶対に必要で絶対に決めなくてはならないもの、というわけではないことに気付かされました。むしろ自認するという行為を、自分がよく生きられるように上手く利用することが重要なのではないかと思いました。​​
  • 自認することの意味を学んだ。今徳さんのお話の中で、自認した結果、心の中のもやもやの原因が分かりライフスタイルを変えられるという話があった。私は自分にラベルを貼ったことで何も変わらないのではないかと感じていた。例えば、私が人見知りだと自認しても、初対面の人と話すことが得意になるわけでもなく必ずしも相手に人見知りだと伝えられるわけでもない。自認することの意味や自認することでどう楽になるのかということに疑問を抱いていた。しかし今徳さんは、自認することで自分の生きる環境を選択できるなどの次のステップを考えられると話しており自分の中で納得した。認めてから自分でどう行動するかが大切なのだと気が付いた。​​
  • 性自認をすることは自分を理解したり、生きやすいライフスタイルを形成する上でも大切なことだと分かりました。また、自分がそれを認めるか認めないかは自由であり、どんなことにも多様性を認めることが大切だと感じました。性自認=着脱可能なラベルという新たな見方を知ったことで、どこか自分にとって未知の世界がライフスタイルや個人の性質の一つとしてより身近に感じられるようになりました。​​
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