第11回 学生スタッフレポート

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モヤモヤからはじめる政治参加 —私たちが生きたい社会のつくり方

能條 桃子 氏
(一般社団法人NO YOUTH NO JAPAN代表理事 / 慶應義塾大学院経済学研究科修士2年 / ハフポスト日本版社外編集委員)

皆さん、こんにちは!

「総合2022」第11回講演は、NO YOUTH NO JAPAN代表理事として活躍されている能條桃子さんにお越しいただきました。能條さんは若者の選挙の投票率が80%を超えるデンマーク留学をきっかけに、2019年、政治の情報をわかりやすくまとめたInstagramプロジェクトNO YOUTH NO JAPANを立ち上げられ、後に団体化されました。現在は、ジェンダーと気候変動に関心を持ちながら、「参加型デモクラシー」のある社会をわたしたちがつくっていくために活動されています。能條さんには今回、「わたしたちが生きたい社会はわたしたちがつくる」というテーマでお話をしていただきました。

講演の冒頭、能條さんの自己紹介は次のように始まりました。「こんにちは、能條桃子です。私はNO YOUTH NO JAPANの代表理事であり、慶應義塾大学経済学研究科修士2年であり、アクティビストです」。アクティビスト、皆さんはこの言葉に馴染みはありますか?能條さんはこれまで、東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員長の森喜朗会長による女性蔑視発言に対する抗議や再発防止を求める署名運動、石炭火力発電の輸出を行う日本企業に対する質問状の提出など社会にあるさまざまな問題に声をあげ、行動を起こされてきました。つまり、アクティビストは「たくさんの課題に対して声を上げていく人」であり、能條さんは私たち若者を代表するアクティビストではないでしょうか。

能條さんが若者の政治参加に向き合うようになったのは、投票率が80%を超えるデンマークへの留学がきっかけだそうです。デンマークでは、選挙はワクワクするイベントであり、選挙・政治が身近な国だと説明してくださいました。能條さんが留学された2019年は気候変動が大きな争点になっており、同世代の若者が政治家として気候変動に声を上げて行動している姿を目の当たりにした能條さんは、この経験をきっかけにNO YOUTH NO JAPANの活動を始められました。

「若者の投票率は3割から4割」、これが今の日本の現状だと能條さんはおっしゃいました。さらに、この社会にはたくさんの課題があるにもかかわらず、わかりやすく政治を教えてもらう機会は乏しく、政治について気軽に語れる場が少ないともおっしゃっていました。その状況を変え、より多くの若者が政治に参加できるように、NO YOUTH NO JAPANの活動では政治や選挙に関する情報を発信されています。Instagramではさまざまな問題に対して各政党がどのような政策を掲げているのかを比較する投稿、47都道府県別に全候補者をまとめた投稿、初めて選挙に行く人に向けた投稿など、「#だから選挙に行かなきゃ」という言葉を添えて若者向けにポップなイラストで発信されています。2022年7月に行われた参院選の取り組みの1つに、マッチングアプリTinderでの投票を呼びかける広告があります。女性参政権獲得のために尽力された平塚らいてう氏の画像と共に、「逆に投票に行かない理由ってなんですか」と問いかける言葉が画面上に表示されました。これは、参政権獲得のために努力された先人たちから現代人に向けた核心をついたメッセージではないでしょうか。

このように若者の投票率が低いと言われている日本ですが、当事者である私たちが政治に参加できる方法はたくさんあります。能條さんは6つの政治参加についてお話してくださいました。まず1つ目は投票です。これは、私たちの意見を反映してくれる代表を決める方法で、政治参加といえば1番に思い付くものではないでしょうか。2つ目は署名です。問題に関心を持っている人を可視化し、相手に届く形にすることです。3つ目は陳情・パブリックコメントです。まず陳情は、政府や地方自治体に要望を伝え、問題を改善してもらうことです。パブリックコメントは、広く意見を求める政府や地方自治体に、国民がさまざまな提案を行うことです。4つ目は集団で声を上げ、意思表示をするデモです。5つ目は自分の意見を言葉にしてSNSやそのほかの媒体で伝える意見発信です。誰でも気軽に意見を発信することのできる現代において、重要な手段となっているのではないでしょうか。最後は立候補です。有権者の意見を掬い上げ、より良い社会の仕組みを作っていくことで、政治に近い距離で関わることができます。

能條さんは自分たちのことを自分たちで変えていくことがデモクラシー(民主主義)だとおっしゃいました。これは、社会にある課題を知り、スタンス(意見)を持ち、行動することです。情報を集めて「知る」ことで、自分が生きたい(望んでいる)社会がどのようなものか考えるきっかけになるのではないでしょうか。このように、情報を集める過程でそれまで知らなかった事柄や問題について触れることは、社会にある「枠」を知ることにつながり、新たな視野を得ることになります。また、さまざまな問題を知る中で、きっとモヤモヤすることがあると思います。このモヤモヤを言語化することで、スタンス(意見)を持つことができます。選挙や署名、陳情などの行動を通して、スタンスを届けることこそ私たちの望む社会に一歩近づくのではないでしょうか。

「社会をつくっているのは誰?大企業の社長?偉い政治家?」この社会をつくっているのは私たちであり、私たちが動くことで社会は変わる。今回の講演は「わたしたちが生きたい社会をつくるのはわたしたち」と強く感じることのできた機会になったと思います。これから先、あなたはどんな社会で生きていきたいですか?
国際関係学科2年 リーフィ

コメントシートより

  • 私はあまり政治に興味を持っていなかったため、政治を知ろうとしたり、行動したりしようとしていなかった。しかし、能條さんの行動力とデンマークでの経験の話を聞いて、政治に関心を持ち、政治に参加することは私達若者の存在意義であるように感じた。また私達が生きやすい世の中を作るには自分から行動する力も重要であると思う。これからはニュースをよく見て情勢を把握し、政治や私達が暮らす社会にもっと目を向けていきたい。
  • 選挙権を得てから毎回選挙に行っており、また日頃からニュースをみるようにしているため日本の政治や社会についてはある程度知っているつもりでいた。だけど、選挙に行っていることや、問題について知っていることに満足しているだけで、実はそれらの問題がどのような経緯で発生して、どのように政治や社会に影響しているのかは全く知らないということに気づいた。また、問題があることは知っているけど、自分には関係ない他人事であると思ってしまっている部分があることにも気づいた。そのため、まず自分が関心のある分野の政治や社会の問題について調べたり本を読んだりして、自分のスタンスを明確に持てるようにしたいと思う。
  • 将来に漠然とした不安があったり、社会に不満があるなら、小さなことからでも行動を起こす必要があると学びました。投票に行く際も、自分の一票だけで何が変わるのだろうと思ったことがありますが、社会に自分の意見を届けるには、不平を言うだけでなく届けようとする意識を持つことが大切で、その行動で社会を変えることができるのだと今回の講演を通して気づきました。まずは今の社会問題を知ること、自分の不安を明らかにすることから始め、意見を伝える手段を考えていきたいと思います。そのためにもただ漠然と生きるのではなく、日頃から社会への問題意識を大切にしていきたいです。
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