第7回 学生スタッフレポート

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エネルギーは願望!ないものは創ればよい!

平塚 千穂子 氏
(バリアフリー映画鑑賞推進団体 City Lights /
CINEMA Chupki TABATA代表)

皆さん、ごきげんよう。

「総合2022」第7回、6月9日(木)の講演は、バリアフリー映画鑑賞推進団体City Lightsを立ち上げ、日本で初めてとなるユニバーサルシアター『CINEMA Chupki TABATA(シネマ・チュプキ・タバタ)』を設立し、現在はその代表を務めていらっしゃる、平塚千穂子さんにお越しいただきました。かつて映画館がない街と称された東京都北区に、それも視覚や聴覚に障害のある人や車椅子ユーザー、小さな子どもがいる子育て中の世代など、普段映画館へ行っても、十分に映画を楽しめない状況におかれている人もが楽しめるようにと、日本初のユニバーサルシアターを完成させ、その設立に奮闘してこられた平塚さんが、今回、「エネルギーは願望!ないものは創ればよい!」というテーマでお話ししてくださいました。『CINEMA Chupki TABATA』では、映画の場面を逐一解説するイヤホン音声ガイドを用意したり、字幕を生成したり、じっとしていられない小さな子どもと映画を観ることができるように、防音の親子鑑賞室を設置したりしているそうです。

このように、「誰もが楽しめる映画館」をつくることを目標に、日々活動されている平塚さんですが、映画との出会いは偶然でした。27歳の時に職を失い、結婚にも失敗し、深い絶望に包まれながら、行き場をなくしていた平塚さんが、ふらっと立ち寄った場所が映画館でした。そこで観た映画の中には多様な人生が広がっており、また色々な人間模様が描かれていました。そして鑑賞中、登場人物に自分の境遇を重ね合わせて涙したり、笑ったり、勇気づけられたりしながら、「映画」に救われ、不遇な自分をも受け入れてくれた「映画館」に生きる希望を見出した平塚さんは、ここから「映画」と共にある人生を歩んでいきます。

映画をこよなく愛する仲間と出会い、何かクレイジーなことを成し遂げたいと目を輝かせていた平塚さんの次なる出会いは、「目の見えない人にも、耳の聞こえない人にも、映画というものの持つ感動を伝えたい!」という夢でした。見えない人は耳で映画を楽しみ、聞こえない人は目で楽しむ━━色々な鑑賞方法があり、どんな人とでも一緒に作品を共有することができると考える平塚さんは、誰もが当たり前に映画を楽しめるようになる日を夢見て、自身の映画館をつくり、字幕付き・音声ガイド有りの映画を上映することにしたそうです。この生き方こそ、講演のタイトル「エネルギーは願望!ないものは創ればよい!」そのものだと感じました。

加えて、平塚さんの溢れんばかりの情熱が、世界的な音響監督である岩浪美和さんをはじめ、多くの人々の心を突き動かし、皆が一丸となって夢実現に向かっていったというお話には、何だか熱く込み上げるものがありました。そして何より印象的だったのは、講演中、映画館完成に至るまでの経緯について語られる平塚さんが、とても生き生きとしていて、眩しく、輝いて見えたことです。いつの時代も、何かに一生懸命になれる人は素敵だと感じると共に、「好き」という想い一つで、そしてその「好き」をみんなと共有したいという一心で、ここまでこられた平塚さんの、その一途さと行動力には目を見はるものがありました。

その一方で、平塚さんの「ないものは創ればよい!」という考え方は、簡単そうに見えて実はとても難しいと感じます。なぜなら、人間は「ある」ものに囚われ、その中でどう生きていくのか、自分自身が現状にどう適応していくのかを考えてしまうことが多いと思うからです。しかし平塚さんは、「ない」ことを受け入れながら、「ない」を「ある」にする生き方を体現されていらっしゃいます。形のいびつなパズルのピースが、ぴったりとはまる場所を血眼になって探すことも大切ですが、初めからそのパズルの居場所をつくってしまおうという平塚さんのような在り方も、斬新で、有意義なものだと感じました。

「スクリーンの中には色々な人生があり、そこには今の自分よりも苦しい状況におかれている人もいるかもしれないし、自分が知らない新しい世界が広がっているかもしれない。何があるか分からないから映画は面白い」

どの映画館に行き、どの映画を観て、そこからどんな世界を知り、どんな人と出会うのか━━映画館での映画鑑賞は、一つの旅に例えられるかもしれません。行き当たりばったりを楽しむ旅のように、ふと立ち寄った映画館で、皆さんも一味違った旅を楽しんでみてはいかがですか。
国際関係学科1年 ひまわり

コメントシートより

  • かつて、映画を観たいという願いを持つ障害者に寄り添う映画館がなかったように、「枠」とはただ個人の中に存在するもののみならず、社会がマイノリティのニーズに対応していないことにより存在するものも大いにあるように感じた。
  • 上手くいかないことばかりのどん底にいても、夢を持ってそれに向けて着実にステップを踏んでいけば、いずれ実現させることも可能であるというお話を聞いて、自分の夢や目標を見失わないようにすることが大切なのだと、改めて実感した。また、目標を立てるだけでなく、実現に向けて一つずつ出来ることを探し、少しでも行動に移していくことが大事だと学び、自分自身も見習いたいと思った。
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