第3回 学生スタッフレポート

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人生の転機を自分の力に変える方法

永井 由美 氏(株式会社LINK代表取締役 / mam&kids salon-Yui-代表)

みなさんこんにちは!「総合2022」第2回、5月12日(木)の講演は、「親子のためのサードプレイス作り」を通じて街の子育て課題解決に取り組む、株式会社LINK代表取締役/mam&kids salon 結-Yui-​​代表の永井由美さんにお越しいただきました。永井さんは、3人の子供を育てながら、転職、資格の取得、大学編入、起業と、様々なことに挑戦されてきた方です。子育てと仕事の両立は難しい、それに加えて自分のやりたいことなんてできないという既存の選択肢にとらわれず、自分から新しい「枠」を作り上げていった永井さんのパワフルな人生に、私を含め勇気づけられた方はたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。

「皆さんは『ソーシャルビジネス』という言葉を知っていますか?」この質問から永井さんの講演は始まりました。恥ずかしながら、私は今回の講演で初めて知りました。「ソーシャルビジネス」とは、社会問題解決を目的としながら、自分たちが行った事業の収益で事業を継続したり、新事業を立ち上げたりすることができるビジネスです。永井さんの会社もソーシャルビジネスの会社で、「子育てをママの自助努力だけに委ねない社会へ」をスローガンに、お母さんたちの子育てを手助けするサービスを提供しています。それらの事業の一つが「mam&kids salon」です。この施設は、家庭や仕事場以外の、親子が気楽に過ごせる第三の場所が欲しいという要望から設立されました。施設には、お母さんが自分の仕事や勉強に取り組むことができるカフェスペース、保育士資格を持ったスタッフのいる、安心して遊べる遊び場、そして気軽に子供を預けることができる託児所があります。特に託児所では、お母さんたちが気兼ねなく子供を預けられるように、預ける理由を問わないそうです。このように「mam&kids salon」は、子供はのびのびと遊ぶことができ、お母さんは少しの間子供と離れて自分の時間を作ることができるということから、たくさんの親子に愛され、利用されています。今では、遠いところから約一時間かけて来てくださる方もいらっしゃるそうです。

今年の総合のテーマにも含まれている「枠」。皆さんは「枠」をどのように考えているでしょうか?永井さんは講演の中で、「枠」とは「自分が大切にしているもの、こだわっているもの、譲れないもの」ではないか、とおっしゃっていました。現在は多種多様な生き方がありますが、特に女性は結婚や出産をした場合、仕事人から妻、母親へとライフステージが大きく変化します。その後さらに、地域人や介護人へと役割が変化するかもしれません。しかし、永井さんは、ライフステージや役割の変化の中で自分の「枠」にもがき、新しい「枠」を受け入れ、他者の「枠」との調和・理解に悩むことでそれらを自分の力に変えていったそうです。

永井さんは、これまで転職、大学編入、そして出産・子育てと、ここでは十分に書ききれないほど多くの経験をされてきました。永井さんが自身のこれまでの人生について語ってくださった中で特に印象に残った出来事は、起業をしたことです。起業を決断したきっかけは、第3子の子育てだったそうです。永井さんは、第3子の子育てをしている中で、第1子を出産してから約10年も経っているのに子育てのしづらさが変わっていない、むしろ後退していることに気が付きました。そこで、行政に頼ってばかりじゃ現状は変わらないぞと思い立ち、子育てをしながら今の会社を設立したそうです。私はこのお話を聴いた時、永井さんの行動力に大変驚きました。もし私が子育てをしていたならば、多少子育てのしづらさを感じていても、我慢してしまうと思います。しかし永井さんは、「なぜ子育てしづらいのか」というちょっとした疑問から目をそらさずに、その疑問を自分にとって重要な問題としてとらえ、解決しようと実際に行動へ移しています。最初は永井さんも他者の目を気にしたり、絶対出来っこないという思い込みを持っていたそうです。それでも起業することが出来たのは、永井さんが子育てと自分のやりたいことは両立できないという社会の「枠」=「固定観念」を取り払い、チャレンジしたからだと思います。すでにある選択肢から自分の人生を選ぼうとしている人たちが多くいる中で、子育てをしながら起業をはじめとする様々なことに挑戦してきた永井さんは、この社会に新しい選択肢を作り上げてくださったのではないでしょうか。

ここで一つ、その新しい選択肢のおかげで、自分の生きたいように生きることができた方のエピソードを紹介致します。その方は永井さんの会社のメンバーで、子供が産まれるから会社を辞めたいと永井さんに相談をしました。その時永井さんは、「何で?」と思わず聞き返してしまったそうです。そして、社会の中では出産するなら退職といった風潮があるけれども、自分がどう生きたいかが大切だと伝えたところ、その方は仕事を続けるという選択をしました。それからは、その方が仕事を続けやすいように、子連れ出勤を会社に取り入れました。今でもその方は仕事を続けています。このように、すでにある選択肢によって自分を縛りつけるのではなく、自分は何をやりたいのかに焦点を当てて考え生きていくことが大切なのだと、このお話を聞いて気づかされました。また、置かれた環境によって柔軟にしなやかに新しい「枠」を取り入れることで、より自分らしい生き方をすることができるという永井さんのお言葉からも、一つの考え方に固執せず、こうしたら自分らしく生きられるかな、と考え方をどんどんアップデートしていくことも必要なのだなと感じました。


最後に、津田塾生へのメッセージとして、永井さんは以下のようにおっしゃっていました。

「変化の激しい時代の中だからこそ、自分の心がくすぐられるものは何か?社会に対して自分は何ができるのか?何が求められているのか?を考え、自身が今持っている力を世の中にどんどん還元してほしい。」

大きなことを成し遂げようとしなくてもいいと思います。日々生きている中で生まれる、自分の心が少しでもくすぐられるもの、どうしてだろうというちょっとした疑問。こんなに小さいことでも立派な自分の「枠」です。それを深掘りして一歩足を踏み出すことが出来れば、自分の力を社会に還元したことになるのではないかと思います。今回の永井由美さんの講演が、自分はどう生きたいのかを考える一つのきっかけになりました。

国際関係学科1年 マーマレード

コメントシートより

  • 子供を持つ女性の苦悩がわかるとともに、永井さんが関わる子連れ専用のカフェなどをはじめとするお母さんにとって非常に助かる活動があるということを知った。今、自分に出来ることは限られていると思うが、質問に対して永井さんが電車で声をかけるだけでも少し気が楽になると仰っていたので機会があれば是非やってみようと思った。
  • 自分はとても頑固で自分らしさを重視し過ぎてしまう。枠を柔軟に変えること、素直であること、挑戦することの重要性を、経験談とともにお話ししていただいたため深く理解できた。また、母親の大変さを今になって知る事ができ、とても良い経験になった。
  • 女性だからキャリアを諦めるのではなく、子育てや家庭や仕事のバランスを上手くとる事が大切であり、社会の制度や環境が整っていないことを言い訳にせずに挑戦することの大切さを知りました。また、自己犠牲は美徳ではなく、自分が好きなものを好きと思い、表現し、行動することが人生の豊かさに繋がるような気がしました。
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