第19回 学生スタッフレポート
相田みつを「しあわせ」を追い求めた67年の生涯
相田 一人 氏(相田みつを美術館 館長)
みなさん、こんにちは!第4ターム最初の「総合2021」では、相田一人さんに講演をしていただきました。一人さんは、「つまづいたっていいじゃないか にんげんだもの」などの詩で広く知られている相田みつをさんの長男で、東京にある相田みつを美術館の館長を務められており、全国各地で講演やメディア出演など様々な活動をされています。
今回の講演では、一人さんから作品や写真と共にみつをさんの生涯についてお話をしていただきました。私たちがよく見るみつをさんの作品は個性的な書体なものばかりだと思いますが、当初からそのような字を書いていたわけではありませんでした。17才のころに書を始めたみつをさんは基礎をしっかりと身につけ、様々な書のコンクールで表彰をされるほどの実力者でした。しかしある時、みつをさんは「自分の書を見た人は"感心"はしてくれるけれど、"感動"はしてくれないのではないか」と自分の書のスタイルに疑問を持つようになりました。そこから、どうしたら人が感動する作品を作ることができるのか試行錯誤をし、たくさんの人に知られているあの書体になったそうです。
私はそのような過程で書体の変遷が行われたということを初めてお聞きしました。書がとても上手だったみつをさんですが、そのことに感心してくれるよりも作品を見てくれた人々の胸に自分の伝えたい思いが刻まれることを一番望んでいたということがよくわかりました。実際、一人さんがみつをさんの作品とその作品の言葉を活字に起こしたバージョンの2つを紹介してくださったのですが、同じ言葉であっても書体が変わるだけでその言葉から伝わってくるものは全く違い、書体の重要性というものを感じ取ることができました。そしてそのことに自分自身で気づいたみつをさんは、自分の作品に対してとても真摯に向き合っていたということを改めて知ることができました。
また講演では、みつをさんの人生の中で2回の挫折があったということをお話してくださいました。1つ目の挫折は、軍事教練の指導教官からのいじめです。当時の旧制中学校には軍事教練と呼ばれる軍事訓練の指導を受ける授業がありました。その指導教官と相性が合わなかったみつをさんは、その教官から濡れ衣を着させられたり暴力を受けたりし、しまいには軍事教練の成績が不合格となり、進学の道を断たれてしまいました。2つ目の挫折は、大きな怪我を負ったという経験です。終戦後、会計の仕事をしていたみつをさんは金額が合わないことからお金の行方について上司に問いただすと、後日見知らぬ3人から頭や背中などを殴打され、大怪我を負ってしまいました。事件の後入院をし、身も心もボロボロになってしまったみつをさんは人間不信になり、暗い青春を送りました。
私はみつをさんの作品集を購入した際、たくさんの素敵な言葉に勇気をもらったとともに、なぜみつをさんは人生に対してこのような捉え方ができたのだろうという疑問も抱いていました。しかしこの挫折経験のお話を聞いて、きっと大きな痛みや苦しみを経験してきたからこそ、人生における様々な視点をもった、そして人に対する思いやりや魂のこめられた作品をたくさん作ることができたのだろうと感じることができました。当時のみつをさんに起こった辛い出来事は私の想像を絶することですが、その経験を経て得ることができた人生に対する価値観を自らの言葉と字で残してきたことは、本当に素晴らしいことだと思いました。私はみつをさんの作品を見て今までたくさんの感銘を受けてきましたが、もしかしたらみつをさんの言葉の意味を完全には理解できていないのかもしれません。もっと多くの人生経験を積めば、みつをさんの作品に対して今よりも深く受け止められるようになるのではないかと思いました。みつをさんの残してきた言葉をしっかりと理解ができるように、これからの自分の人生を豊かなものにしていきたいと感じました。
今回の講演で、みつをさんの過去のお話をたくさん聞くことができ、改めてひとつひとつの作品がとても奥深いものなのだと認識することができました。これからみつをさんの作品を鑑賞する際は、みつをさんの過去の背景やそこから得た知見はどのようなものだったのかなどを考えながら見ていきたいです。ぜひみなさんもみつをさんの作品をご覧になって、様々な思いを吸収してみてください。
今回の講演では、一人さんから作品や写真と共にみつをさんの生涯についてお話をしていただきました。私たちがよく見るみつをさんの作品は個性的な書体なものばかりだと思いますが、当初からそのような字を書いていたわけではありませんでした。17才のころに書を始めたみつをさんは基礎をしっかりと身につけ、様々な書のコンクールで表彰をされるほどの実力者でした。しかしある時、みつをさんは「自分の書を見た人は"感心"はしてくれるけれど、"感動"はしてくれないのではないか」と自分の書のスタイルに疑問を持つようになりました。そこから、どうしたら人が感動する作品を作ることができるのか試行錯誤をし、たくさんの人に知られているあの書体になったそうです。
私はそのような過程で書体の変遷が行われたということを初めてお聞きしました。書がとても上手だったみつをさんですが、そのことに感心してくれるよりも作品を見てくれた人々の胸に自分の伝えたい思いが刻まれることを一番望んでいたということがよくわかりました。実際、一人さんがみつをさんの作品とその作品の言葉を活字に起こしたバージョンの2つを紹介してくださったのですが、同じ言葉であっても書体が変わるだけでその言葉から伝わってくるものは全く違い、書体の重要性というものを感じ取ることができました。そしてそのことに自分自身で気づいたみつをさんは、自分の作品に対してとても真摯に向き合っていたということを改めて知ることができました。
また講演では、みつをさんの人生の中で2回の挫折があったということをお話してくださいました。1つ目の挫折は、軍事教練の指導教官からのいじめです。当時の旧制中学校には軍事教練と呼ばれる軍事訓練の指導を受ける授業がありました。その指導教官と相性が合わなかったみつをさんは、その教官から濡れ衣を着させられたり暴力を受けたりし、しまいには軍事教練の成績が不合格となり、進学の道を断たれてしまいました。2つ目の挫折は、大きな怪我を負ったという経験です。終戦後、会計の仕事をしていたみつをさんは金額が合わないことからお金の行方について上司に問いただすと、後日見知らぬ3人から頭や背中などを殴打され、大怪我を負ってしまいました。事件の後入院をし、身も心もボロボロになってしまったみつをさんは人間不信になり、暗い青春を送りました。
私はみつをさんの作品集を購入した際、たくさんの素敵な言葉に勇気をもらったとともに、なぜみつをさんは人生に対してこのような捉え方ができたのだろうという疑問も抱いていました。しかしこの挫折経験のお話を聞いて、きっと大きな痛みや苦しみを経験してきたからこそ、人生における様々な視点をもった、そして人に対する思いやりや魂のこめられた作品をたくさん作ることができたのだろうと感じることができました。当時のみつをさんに起こった辛い出来事は私の想像を絶することですが、その経験を経て得ることができた人生に対する価値観を自らの言葉と字で残してきたことは、本当に素晴らしいことだと思いました。私はみつをさんの作品を見て今までたくさんの感銘を受けてきましたが、もしかしたらみつをさんの言葉の意味を完全には理解できていないのかもしれません。もっと多くの人生経験を積めば、みつをさんの作品に対して今よりも深く受け止められるようになるのではないかと思いました。みつをさんの残してきた言葉をしっかりと理解ができるように、これからの自分の人生を豊かなものにしていきたいと感じました。
今回の講演で、みつをさんの過去のお話をたくさん聞くことができ、改めてひとつひとつの作品がとても奥深いものなのだと認識することができました。これからみつをさんの作品を鑑賞する際は、みつをさんの過去の背景やそこから得た知見はどのようなものだったのかなどを考えながら見ていきたいです。ぜひみなさんもみつをさんの作品をご覧になって、様々な思いを吸収してみてください。
数学科2年 みずいろ
コメントシートより
- 私は幼い頃からみつをさんの詩を知っていました。独特な書体とほとんどがひらがなで構成された詩は、理解するのに時間がかからず、とても温かい詩だと思っていました。しかし今回の講演で一人さんがおっしゃていた、実体験をもとにして作られた詩であるということを聞き、今まで見ていた詩がまるで違う詩であるかのように思え、詩に深みが出たと思いました。困難を経験し、解決策を見出して乗り越えたみつをさんだからこそ書ける詩だと感じました。彼が本当に伝えたいメッセージが、今回の講義を通して学ぶことができました。しあわせとはなんなのか。しあわせをつくり出すのにはいつもじぶんという存在が必要で、自ら作っていかなければいけないものだと学ぶことができました。大変貴重で興味深いお話をありがとうございました。
- アーティストや芸術家などの作品を見ると、天才ってすごいなと簡単に考え、思っていたけれど、相田みつをさんの素晴らしい作品は壮絶な過去の経験によるものだと知って、人の心を動かすことのできる作品を出すのは、本人の苦労があってのものなのだと学んだ。また、相田みつをさんの作品はすぐに元気づけられるものだけれど、作品に向き合うとすごく深くて、考えさせられるものばかりだと気付いた。
- 相田みつをさんが、「他の人の好きな詩や短歌もあるが、人の言葉を自分が書くと言葉と書の間に隙間ができるから書かない」と仰っていたというのを聞いて、その言葉が就活などの自己プレゼンをするときも同じであると感じました。例えば、御社に入りたい理由を言うとき、テンプレートの言葉を言うだけでは気持ちは伝わりません。自分の経験や思いがあってこそ、それが言葉に乗せられ、相手に伝わるのだと最近特に感じていました。そのため、「人の言葉を自分が書くと言葉と書の間に隙間ができる」という言葉を聞いて、自分のことと被って感じました。