第18回 学生スタッフレポート

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もしすべてのことに意味があるなら~大学生の皆さんにお伝えしたいこと~

鈴木 美穂 氏
(認定NPO法人マギーズ東京 共同代表理事)

こんにちは!「総合2021」第18回・11月11日(木)の講演は、鈴木美穂さんに講演していただきました。鈴木さんは、元日本テレビの記者・キャスターで、現在は「マギーズ東京」の共同代表理事をされています。

マギーズ東京

がん患者やその家族などが、無料で医療の専門家に相談したりゆっくり過ごしたりできる施設を運営しているNPO
まずは鈴木さんご自身の人生を振り返られていました。行動力があり活気があった学生時代を経て、小学生のころから憧れていたキャスターとなった鈴木さん。しかし、社会人2年目だった2008年に乳がんが発覚しました。もう未来がないのではないのかという絶望感、なんで自分だけがという孤独感、治療等の情報に対する不信感、家族に対する申し訳なさといった多くの気持ちがあふれたそうです。もし私が大きな病気と診断されたら、これらの気持ちを持ち続けてしまい未来に向かって動き出せないのではないかと思いますが、鈴木さんは違いました。診断後少し落ち着いてから、自分が死ぬまでにやりたいことを考えたそうです。それらは「自分にしかできない仕事・結婚・出産・世界一周旅行・親孝行」の5つでした。

講演では、死ぬまでにやりたいこと5つのうち、「自分にしかできない仕事」について多くの時間を割いて話してくださいました。キャスターとしてがんと医療・福祉について取材し伝える仕事を行ったり、若いがん患者に向けたプロジェクトを創設したりなど、鈴木さんは多様な場で活躍されていました。その中で私にとって印象に残った話を書いていきたいと思います。印象に残ったのは、病気を乗り越えた人々が集まるIEEPO(International Experience Exchange Patient Organization)という国際会議に、鈴木さんが初めて参加したときの話です。自分ががん患者であることを告白すると、「Congratulations!」と言われたそうです。私はこの話を聞いたとき、なぜこの言葉が返ってきたのだろうと疑問に思いました。実は、「Congratulations!」というメッセージの中には「生きているだけでめでたい、ありがたい」という意味が込められていたというのです。そして、この会話が鈴木さんが「マギーズ東京」を設立しようと思ったきっかけの一つになったそうです。

日本では病気の話となると、重くネガティブな雰囲気になってしまいがちです。そのため、話し手も話すのにかなり勇気を必要とし、聞き手もどのように受け止めるべきか迷うことが多いのではないかと思います。しかし、闘病の大変さなどを理解した上で「生きていてくれてありがとう」「生きていてくれてうれしい」といった前向きな言葉を交わせば、病気の話をしているのに双方の雰囲気が少しは明るくなるのではないでしょうか。私にとって、このエピソードは価値観が再構築されたと感じた瞬間でした。

講演は鈴木さんから受講生へ伝えたいメッセージをもって、締めくくりとなりました。闘病生活を通して「人生は一度しかなく、いつ終わるかわからない」「いつ誰にどんな困難や課題が降りかかるかわからない」ことを学んだ鈴木さん。これを元に、3つのメッセージを授けてくださいました。1つ目は、時薬(ときぐすり)はあるということです。辛いときや頑張れないときは、自分に優しくして「生きているだけでえらい」と思うようにすることが大事と教えてくださいました。そして、「もしすべてのことに意味があるなら」という講演タイトルを使いながら、辛いことを乗り越えたときに、困難や課題にどんな意味があったのかを考えることで、新しい道や学びを得る大切さを伝えてくださいました。2つ目は、やらないまま死んだら後悔することは何かを考えるということです。その際のポイントは、生き方・幸せの感じ方は人それぞれで、周りと比べる必要はないということ、自分が本当にやりたいことをやる重要性を語っておられました。3つ目は、明日が来ることは当たり前ではないこと、感謝の気持ちを忘れず、大切な人を大切にすることを挙げておられました。

中でも私が印象に残っているのは、1つ目のメッセージを伝えた際におっしゃっていた「辛いときや頑張れないときは「生きているだけでえらい」と思う」ことです。講演を聴いていた受講生の中には、やらなければいけないことを抱えすぎて、辛い思いをしている方もいたかもしれません。私も普段の生活でそのように思うときがありました。私は講演を聞きながら、この言葉は私だけでなく多くの受講生に刺さった言葉なのではないかと思いました。辛いことがあったときに、乗り越える術の一つとして心に留めていきたいと考えました。

講演を通して感じたことは、鈴木さんのやりたいと思ったことを成し遂げる、ブレない意思の強さです。死ぬまでにやりたいこととして挙げた5つのうち、このレポートでも書いた仕事の他、世界一周旅行・親孝行もひとまずできたと講演内でお話しされていました。結婚と出産はひとりではできませんが、鈴木さんはご結婚されており、講演された11月には妊娠されていました。このお話を聞いて、死ぬまでにやりたいことの5つはただの「やりたいこと」ではなく、自分の「使命」だという覚悟を持っていたように私は思いました。だからこそ、この覚悟が結婚・出産を支えてくれるパートナーとのご縁を引き寄せるパワーに変わったのではないかと感じました。私は、毎日やるべきことに追われてライフプランを考えることはありませんでした。講演を聴いて、自分にとってやらないまま死んだら後悔することは何だろうかと考えることが、これからの進路を考えるときの一つの軸になるだろうと思いました。
国際関係学科3年 あじさい

コメントシートより

  • 鈴木さんの行動力に驚いた。鈴木さんの講演では一貫して思いついたら即調べて即行動する、というスタンスを取っていることに気がついた。「思い立ったが吉日」という言葉があるように何かが頭に浮かんだときにまずは行動してみることは大切な心がけだと思った。
  • 「たまたま」という言葉が多く使われていて、鈴木さんのように諦めないで自分にしかできないことを追求している人にはそういった繋がりや縁が降ってくるのだと感じました。諦めないことはよく聞く言葉ですが、実際に鈴木さんのように諦めないことは誰でもできることではないと感じました。また、自分がとても辛いときには時薬を使って自分を労ることも大切だと学びました。
  • 急にこれまでの生活が崩れることは本当にあり得ることなのだと実感しました。人生が一変した話を聞くことはよくありますが、きっかけがあまり身近なものではなかったり、私とは状況が全く違ったりと、どこかフィクションのような気がしていました。しかし、乳がんは私にも発症するかもしれないので、鈴木さんのような状況になる可能性があるのだと考えさせられました。また、「やらないまま死んだら後悔すること」の話を聞いて、私も自分のやりたいことを見つめ直してみようと思いました。
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