第15回 学生スタッフレポート
這い上がる時に必要なもの—ルワンダで義足を作る理由
ルダシングワ 真美 氏(ムリンディ/ジャパン・ワンラブ・プロジェクト副代表)
みなさんこんにちは!第15回の「総合2021」では、ムリンディ/ジャパン・ワンラブ・プロジェクト副代表のルダシングワ真美さんにルワンダから講演していただきました。みなさんはルワンダといったらどのようなことを思い浮かべるでしょうか?きっと多くの人にとってはあまり馴染みのない国だと思います。ルワンダはアフリカ大陸の真ん中あたりに位置しており、真美さんはそこでルワンダ人のパートナーとともに、紛争や交通事故などで手足を失くした障害者のために義手や義足を作り続けられている方です。団体名にある「ムリンディ」は真美さんのパートナーが義肢作りの活動を始める決意をスピーチした小さな村の名前です。
私がいちばん心に残っているのは、「生きるうえで大切なのは“想像力”なのではないか」という真美さんのお言葉です。講演の中ではルワンダの障害者の方たちの写真を見せてくださり、そこには手にサンダルをはめて足を引きずるようにしている方たちが映っていました。多くの人は「大変そうだ、可哀そう」というように感じるだけで終わるかもしれません。しかし、それだけでは不十分で、この写真に映る人々にとって何が大変であり、辛いのかまでを考えてほしいと真美さんはおっしゃいます。日本では足が不自由になれば車いすや義足を買えば良いと思います。けれどもルワンダではそのようなものを買える人は少なく、彼らはきちんと舗装されていない道路に膝小僧をつきながら手に靴をはめて移動するしかないのです。また、すべての家にトイレがあるわけではなく、家から共同のトイレへと移動しなければならないそうなのですが、足の不自由な人は衛生的ではない箇所を触らなければならないことが健常者よりも多くなります。雨が降っていれば傘をさすことができないため、ずぶ濡れになってトイレに行かなければなりません。
若い頃の真美さんは見たものをそのまま受け取ることしかできなかったそうなのですが、ルワンダで活動を続けるうちに、こうした1枚の写真からもたくさんのことを考えさせられるようになったとおっしゃいます。私は、このお話にある“想像力”とは、講演の冒頭に触れられたルワンダ大虐殺のお話にも通じることなのではないかと思いました。ルワンダを語る上で切っても切り離せないのが1994年に起こった虐殺です。100万人以上の人が殺されたとされているこの出来事は、日本のニュースでは「ツチ族とフツ族が対立して虐殺が起こり、フツ族がツチ族を殺しました。」というように簡単に済ませられていたり、きちんと事実を伝えていなかったりします。しかし、物事にはそこに至るまでの背景が必ずあり、この場合は西洋がアフリカを植民地化したことが根本的な原因でした。ベルギーは統治しやすいようにルワンダの人々を分断し、政策に差をつけることで民族がお互いを憎しみあい、対立するような構造にしてしまったのです。
この虐殺は決してルワンダの人たちが望んで自ら起こした出来事ではないのだと、これだけは覚えていてほしいとおっしゃる真美さん。私たちは、自分とは直接関係のない場所で起こっていること、未経験のことなどに対して、あまり深く考えることはないと思います。しかし、そういった事柄だからこそ、“想像力”を働かせてきちんと背景について考えるべきだと思いますし、それが今年度の「総合」のテーマでもある「価値観の再構築」をするうえで重要になってくるのではないかと思います。すべてのことについて深く考えることは難しいとは思いますが、身近なものや人に対してその目で見た表面上のもの以外についても考えることは、本当の意味で相手に寄り添うことに繋がるのではないかと思いました。
また、今回の講演ではお話の端々に真美さんの人間としての力強さを感じさせられたのも印象的でした。もともと専門学校卒業後にOLとして働いていた真美さんは、その生活が嫌になり、逃げるようにケニアへと飛び出していきます。そこで今のご主人であるルワンダ人の男性に惹かれたことがきっかけで義肢装具士という職に就くことになるのですが、もちろんすべてが思い通りに進んでいくわけではありません。たくさんの困難があった中でも2019年のクリスマスに起こった出来事はさすがに衝撃を受けたとおっしゃっていました。ルワンダでは近年雨が降りやすくなっており、真美さんたちが運営している義肢製作所も何度か近くの川の洪水を受けたそうです。特に5度目の洪水は今までにない被害を受け、皆で復旧作業を進めていたそうなのですが、突然ルワンダ政府の人が来て「1週間以内に雨が降る予報が出たから今すぐ立ち退け」と言われます。もちろん無理だと答えた真美さんたちでしたが、政府は次の日には重機で義肢製作所を取り壊してしまったのです。日本では考えられないようなことですが、レンガも一つ一つ手作りをして建てた建物が目の前で壊されるというのは本当に衝撃的なことだったと思います。
立ち直れそうにないほどの出来事が起きた後、製作所の復興まで真美さんを導いてくれたのは、壊された建物の中から一生懸命鳴いている猫と、生活費を稼ぐためにレンガや鉄くずを拾い集める子どもたちでした。「助けてくれ」と言っているように鳴き続ける猫は真美さんを「私がやらなきゃいけない、私が助けなきゃいけない」という気持ちにさせてくれ、たくましい子どもたちは「こんちくしょー!ここで泣き寝入りしちゃいけないんだ!この子どもたちだって自分が生きるために一生懸命やっているじゃないか!」と思わせてくれたそうです。挫折が人を強くするものだから、困難にぶち当たったらそれは自分が受けなきゃいけない試練だと思って自分で対応していってほしい、とおっしゃる真美さんの言葉は芯があって、たくさんの困難を乗り越えてきたからこそ言える言葉なのだと思いました。私も真美さんのように、またルワンダの人々のように、困難があってもそこから這い上がれるようなたくましさを持てるようになりたい。そんな風に感じた人は私以外にもいたのではないでしょうか。多くの受講生にとって様々なことを考えさせられる、素敵な講演になったと思います。
私がいちばん心に残っているのは、「生きるうえで大切なのは“想像力”なのではないか」という真美さんのお言葉です。講演の中ではルワンダの障害者の方たちの写真を見せてくださり、そこには手にサンダルをはめて足を引きずるようにしている方たちが映っていました。多くの人は「大変そうだ、可哀そう」というように感じるだけで終わるかもしれません。しかし、それだけでは不十分で、この写真に映る人々にとって何が大変であり、辛いのかまでを考えてほしいと真美さんはおっしゃいます。日本では足が不自由になれば車いすや義足を買えば良いと思います。けれどもルワンダではそのようなものを買える人は少なく、彼らはきちんと舗装されていない道路に膝小僧をつきながら手に靴をはめて移動するしかないのです。また、すべての家にトイレがあるわけではなく、家から共同のトイレへと移動しなければならないそうなのですが、足の不自由な人は衛生的ではない箇所を触らなければならないことが健常者よりも多くなります。雨が降っていれば傘をさすことができないため、ずぶ濡れになってトイレに行かなければなりません。
若い頃の真美さんは見たものをそのまま受け取ることしかできなかったそうなのですが、ルワンダで活動を続けるうちに、こうした1枚の写真からもたくさんのことを考えさせられるようになったとおっしゃいます。私は、このお話にある“想像力”とは、講演の冒頭に触れられたルワンダ大虐殺のお話にも通じることなのではないかと思いました。ルワンダを語る上で切っても切り離せないのが1994年に起こった虐殺です。100万人以上の人が殺されたとされているこの出来事は、日本のニュースでは「ツチ族とフツ族が対立して虐殺が起こり、フツ族がツチ族を殺しました。」というように簡単に済ませられていたり、きちんと事実を伝えていなかったりします。しかし、物事にはそこに至るまでの背景が必ずあり、この場合は西洋がアフリカを植民地化したことが根本的な原因でした。ベルギーは統治しやすいようにルワンダの人々を分断し、政策に差をつけることで民族がお互いを憎しみあい、対立するような構造にしてしまったのです。
この虐殺は決してルワンダの人たちが望んで自ら起こした出来事ではないのだと、これだけは覚えていてほしいとおっしゃる真美さん。私たちは、自分とは直接関係のない場所で起こっていること、未経験のことなどに対して、あまり深く考えることはないと思います。しかし、そういった事柄だからこそ、“想像力”を働かせてきちんと背景について考えるべきだと思いますし、それが今年度の「総合」のテーマでもある「価値観の再構築」をするうえで重要になってくるのではないかと思います。すべてのことについて深く考えることは難しいとは思いますが、身近なものや人に対してその目で見た表面上のもの以外についても考えることは、本当の意味で相手に寄り添うことに繋がるのではないかと思いました。
また、今回の講演ではお話の端々に真美さんの人間としての力強さを感じさせられたのも印象的でした。もともと専門学校卒業後にOLとして働いていた真美さんは、その生活が嫌になり、逃げるようにケニアへと飛び出していきます。そこで今のご主人であるルワンダ人の男性に惹かれたことがきっかけで義肢装具士という職に就くことになるのですが、もちろんすべてが思い通りに進んでいくわけではありません。たくさんの困難があった中でも2019年のクリスマスに起こった出来事はさすがに衝撃を受けたとおっしゃっていました。ルワンダでは近年雨が降りやすくなっており、真美さんたちが運営している義肢製作所も何度か近くの川の洪水を受けたそうです。特に5度目の洪水は今までにない被害を受け、皆で復旧作業を進めていたそうなのですが、突然ルワンダ政府の人が来て「1週間以内に雨が降る予報が出たから今すぐ立ち退け」と言われます。もちろん無理だと答えた真美さんたちでしたが、政府は次の日には重機で義肢製作所を取り壊してしまったのです。日本では考えられないようなことですが、レンガも一つ一つ手作りをして建てた建物が目の前で壊されるというのは本当に衝撃的なことだったと思います。
立ち直れそうにないほどの出来事が起きた後、製作所の復興まで真美さんを導いてくれたのは、壊された建物の中から一生懸命鳴いている猫と、生活費を稼ぐためにレンガや鉄くずを拾い集める子どもたちでした。「助けてくれ」と言っているように鳴き続ける猫は真美さんを「私がやらなきゃいけない、私が助けなきゃいけない」という気持ちにさせてくれ、たくましい子どもたちは「こんちくしょー!ここで泣き寝入りしちゃいけないんだ!この子どもたちだって自分が生きるために一生懸命やっているじゃないか!」と思わせてくれたそうです。挫折が人を強くするものだから、困難にぶち当たったらそれは自分が受けなきゃいけない試練だと思って自分で対応していってほしい、とおっしゃる真美さんの言葉は芯があって、たくさんの困難を乗り越えてきたからこそ言える言葉なのだと思いました。私も真美さんのように、またルワンダの人々のように、困難があってもそこから這い上がれるようなたくましさを持てるようになりたい。そんな風に感じた人は私以外にもいたのではないでしょうか。多くの受講生にとって様々なことを考えさせられる、素敵な講演になったと思います。
国際関係学科3年 すみれ
コメントシートより
- 自分のやりたいことをやりたいと思うだけではなくて行動に移すことができる人というのはとてもかっこいいなと思いました。私はいままで、目標を掲げても、後回しにしてしまったり、結局行動しなかったりというようなことが多かったのですが、旦那さんと出会って、自分のやりたいことを見つけて、それに向かって行動を起こせるという真美さんのその積極的な姿勢と、勇気は見習うべきものであると感じました。行動しないと何も変わらないのだなということを考えさせられた気がします。
- 障がいを負った人を見て、ただ見たままの事実に悲しむのではなくて、その裏側を考えるのがとても大事だと気づきました。裏側を考えるだけで、「可哀想だ。」から「生活する中でここに困っているのではないか、強く生きていてかっこいい。」などに印象も変わるし、もし、自分に障がいがあったなら、可哀想とは言われたくないなと思いました。
- 最後の質問コーナーで、「海外で挑戦する勇気がない」という言葉に対し、「勇気が出ないというのは言い訳に過ぎない」「誰かに思い切り背中を押してもらうことが必要」という言葉を聞いて、自分のできない、という思い込みは怖いけど捨てるべきだと思いました。それから、勇気が出ない時は自力で解決するだけでなく、誰かに背中を押してもらってもいいんだ、と思いました。