第9回 学生スタッフレポート

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「楽しさ」を軸に描く設計図

澤村 信哉 氏(児童養護施設ハウスオブジョイ事務局長)

みなさんこんにちは!第1ターム最後の講演である第9回の「総合」では、フィリピンでハウスオブジョイという児童養護施設の運営に携わっておられる澤村信哉さんに講演していただきました。フィリピンからリアルタイムで講演してくださったこともあり、通信が途絶え気味になってしまうなどのハプニングはありましたが、澤村さんが大切にしておられる「楽しさ」という基軸が印象的な講演になったのではないかと思います。

私にとって印象的だったのは、ハウスオブジョイの生みの親である烏山さんとの出会いのお話です。大学に入ってボランティアツアーとして参加したプログラムでフィリピンに行った澤村さんは、自分がボランティアとして行っている作業を隣で何倍ものスピードでこなし、給料をもらっている現地の若者を見たそうです。そして「自分はボランティアとして良いことをしているつもりだけど、現地の人たちの仕事を奪っているだけではないのか…?」と気づき、悩んでしまいます。帰国後しばらくしてから、「自分には何ができるのだろうか」という問いに対する答えを探すためにもう一度フィリピンへと旅に出た澤村さんは、ハウスオブジョイの前運営者である烏山さんに出会いました。フィリピンの中でも最も南に位置し、貧しい地域であるミンダナオ島で孤児院を設立した日本人だと聞いて、「きっと聖者のようにすごい人なんだろう」と思っていた澤村さんの予想はひっくり返されます。そこにいたのは子どもたちと楽しそうに遊んで暮らす、どこにでもいるような普通のおじさんでした。それまでは「自分の楽しみを犠牲にしないと国際貢献のような活動はできない」と思い込んでいた澤村さんでしたが、烏山さんに出会ったことで「活動をすることと自分の人生を楽しむことは両立できる」と考えが変わったそうです。これは私にとっても驚きでした。「国際貢献とは能力があり義務感のある人がやるものだ」と思っていたため、烏山さんとのエピソードや澤村さんの活動の様子を知って、「こんなにも楽しそうに活動に関わっている方々がいるのか」と視野が広がったように思います。

もう一つ印象的だったのが、ハウスオブジョイに来た子どもたちの話でした。烏山さんとの出会いを通して将来の方向性を見定めた澤村さんは、フィリピンとブルガリアで日本語教師として働いた後、烏山さんが倒れてしまったことをきっかけにハウスオブジョイの運営に携わるようになります。そんなある日、ハウスオブジョイに全く笑いも泣きもしない1歳の赤ちゃんがやってきました。母親が知的障害を持っており、抱きしめたり話しかけたりすることなしに育てていたため、1歳になってもその赤ちゃんは笑うということを知らなかったようです。赤ちゃんは生まれつき笑うのではなく、周りの人が笑顔で取り囲むからそれを真似して笑うようになります。その当時は、楽しさという感情を習得するのには臨界期があり、それは心理学的に大体10か月だと言われていたため、「この子は一生笑わないだろう」と医者に言われたそうです。しかし、ハウスオブジョイにいた子どもたちはなんとか赤ちゃんを笑わせたいと思い、たくさん話しかけて一緒に遊びました。そして8か月経ってやっとその子が笑ったのです。赤ちゃんを笑わせることができたのは子どもたちが笑顔で取り囲んだからでした。しかし、それを見守る大人たちが笑顔であるからこそできることなのだと澤村さんはおっしゃいます。大人を信用できない状態で入ってくる子どもを、先にハウスオブジョイで暮らしている子どもたちが笑顔にする。そしてハウスオブジョイにいる子どもたちが笑顔で暮らすためには、何よりも自分たち大人が日々を楽しみ、笑顔でいることが大切だ。そんな笑顔の循環とハウスオブジョイという名前に込められている想いがとても素敵に思えて、私もこれからの日々の中で大切にしていきたいと思うようになりました。

今年度の「総合」のテーマである「Rebuild myself」とは、澤村さんの中では「目から鱗が落ちる」ということだそうです。ボランティアに行って自分が現地の人の仕事を奪っているのだと気づいたことも、烏山さんと出会って国際貢献と自分の人生を楽しむのは両立することができるのだと教えてもらったことも、すべて周りの人が自分の「目から鱗を落としてくれた」のだとおっしゃっていました。私も今回澤村さんのお話を聞いて、たくさん「目から鱗が落ちる」ことがありました。そして何よりも、活動を紹介する写真の中や、打ち合わせ、講演の間も澤村さんはずっと楽しそうに話したり楽器を弾いたりしていて、自分の人生を楽しんでいる人はこういう人なのだなぁと感じました。きっと将来は海外で働いたりボランティアとして活動したりしたいと思っている津田塾生は多いと思います。そんな時、澤村さんのように「楽しさ」を基軸に活動することの大切さを思い出していただけたら嬉しいです。

国際関係学科3年 すみれ

コメントシートより

  • 途上国の支援というと、貧しくてかわいそうだから支援しているというイメージがあった。しかし、講師の方がかわいそうだからではなく楽しいからやっているということをおっしゃっていたことを聞いて、楽しみながら物事に取り組むことの大切さを学んだ。
  • 国際協力というのはかなり大変なことというイメージがありました。しかし、澤村さんも、烏山さんも本当に楽しそうに運営をされていて、楽しんでやるということが大切なのだということを学びました。好きなものを本気でやることができるのは本当にすごいことだと思います。一見、ボランティアを海外でやるというのはとても良いことに思えますが、裏を返せば現地の人の仕事を奪ってしまうということになるということは考えたことがありませんでした。このようなことはしっかりと考えなければならないということを感じました。
  • 深い心の傷を負った子供たちを国の壁を越えて笑顔にできる仕事はやりがいのある素晴らしい仕事だと思いました。一週間前は不愛想な顔だった子供や専門家にまで笑うのは無理だと言われた子供がハウスオブジョイで笑顔尾を見せたというエピソードは感動しました。私も誰かを笑顔にできるような仕事に就きたいと思いました。澤村さんにとってのフィリピンのような特別な場所そこで充実した生活をしているのはとてもうらやましく思うし、自分にとっての特別な場所を自分の人生の中で見つけて、そこに貢献できるようになれたらいいと思いました。私はまだ日本から出たことがないので、今後海外に行けばたくさん目からうろこの出来事があると思います。そういう経験をたくさんしてどんどん自分の固定概念を覆していきたいと思いました。今はコロナで直接行くことは難しいですが、募金など今からできることはたくさんあるので積極的に参加していきたいと思いました。
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