2020年度 第9回 学生スタッフレポート

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インサイトとは何か?俯瞰力を身に着けるためには?

原田 曜平 氏(マーケティングアナリスト)

「総合2020」第9回、9月17日の講演は、サイバーエージェント次世代生活研究所所長であり、マーケティングアナリストでもある原田曜平さんにお話ししていただきました。原田さんは大学卒業後に株式会社博報堂に入社し、博報堂生活総合研究所研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーを務められました。そして博報堂を退社した後に、2018年12月からマーケティングアナリストとして活動されています。

私は原田さんのお話の中で、「次世代生活研究所」が一番印象に残っています。原田さんは、「日本も含む世界中で、超不確定で超不透明な時代を迎える中、いち早く『未来』を見ることができるシンクタンクの存在が求められる。」と考え、「21世紀を代表する会社」になるための1つの基幹エンジンとして、「世界で最も“未来”が見られる研究所」になることを目標に、次世代生活研究所を立ち上げられたそうです。この次世代生活研究所では、高校生から大学生の研究員が30名ほど、協力員が100名ほど在籍し、日々世の中にある身の回りのトレンドや広告を研究しています。

原田さんは若者の研究員を起用する理由として、3つのメリットを挙げています。それは“Reality”、“Diversity”、“Specialty”です。各々を訳すと、“現実性”、“多様性”、“専門性”となります。若者自身が日常生活の中で得ているリアルな気持ちを、若者が実際に調査する事で圧倒的な“リアリティ”を得ることができ、また、若者が日常的に利用するSNSにおける若者同士のネットワークをたどることで、志向や世代に偏らない実態を“幅広く”把握する事ができるそうです。そして、若者世代の研究生による情報や仮説の解釈・再構築にあたって、原田さんを中心とした研究所のスタッフが分析する事で、テーマに限らない“専門的”な深度ある分析が可能となるとおっしゃっていました。このようなメリットを“Reality”、“Diversity”、“Specialty”の3つで表現しているそうです。

原田さんは若者の研究員の活動の例として、ユニ・チャームと共同で女子高生向けに生理用品の広告を作った経験をお話してくださいました。チームビルディングから実態調査、その調査を元にしたターゲット設定、広告の配信媒体や出演者の提案まで若者研究員がチームで行っているというお話を聴き、自分と同年代の人たちが広告制作にそこまで深く関わっていることに驚くとともにとても興味が湧きました。私は今まで、若者が研究に参加すると年上の研究員の方々に「若者だから...」といった理由で煙たがられてしまうのではないかと思っていました。しかし原田さんは、「この先の将来を担うのは若者たちで、その若者たちの心情や行動を若者自身が調査して研究する事で、私たちのような世代とは全く異なる結果が出るかもしれない。」とおっしゃいました。「若者研究は未来研究に近い」という言葉も強く印象に残っており、原田さんは本当に様々な角度から未来を見ようとしているのだと感じました。

お話の中では、講演タイトルにもある「インサイト」という言葉が何度も使われました。これは原田さんが研究所での活動や広告制作で大切にしていることだそうです。辞書では「洞察」と訳されますが、非常に様々な考え方があって一言で表すことは難しい言葉です。原田さんによると、マーケティングにおける「インサイト」とは、プランナーの洞察により新たに見えてくる潜在的な未充足のニーズであり、その「インサイト」が分かったうえで広告を制作すれば消費者にグッと刺さるものができるそうです。「インサイト」を発見するためには徹底した調査が必要であり、マーケティングは客観的であるべきだというお言葉を聴いて、これは私たちがこれから社会の中で生きていくことにおいてもとても重要なことではないかと思いました。人々が気づきにくい潜在的なことを考えていくためにも、原田さんのように「俯瞰力」を持って様々なことを客観的に見ることができるようになりたいと感じさせられる講演でした。

国際関係学科1年 N.A
国際関係学科2年 すみれ

コメントシートより

  • SNSやYouTubeで目にする広告一つ一つが、調査やマーケティングを元に綿密に計画されていることを聞いて、今までより広告に注意を向けられるようになるだろうなと思いました。なんとなく広告業界に興味を持っていたのですが、自分のしている職業にやりがいと楽しさを感じていらっしゃる原田さんの姿を見て、もっと広告業について知るために、広告業界の仕事について調べてみようと思いました。
  • インサイトとは結果的に私たちを突き動かすような力のようなものだと感じた。そして上手にまとめられないけれど、それは広告だけでなく生活の中でも重要だと感じた。人と話すときや議論するとき、人々やものことを見通す時など。何にしても勝手に自分の価値観の中で考えることはプラスにならず、いまの様々な人々とよく接する社会では特に多方面から考えることが重要になってくるのだなと感じた。
  • 今の若者の良いところ、悪いところはどこですか、という質問に対して、良い悪いでは見ていない、とおっしゃっていました。良いか悪いかで見てしまうと、それは客観ではなく主観で、それぞれのもの、人にそれぞれの長所や特徴があるのでそれを客観的にみることが大事だ、とおっしゃていました。私はこのお話を聞いて、これはマーケティングや若者研究にとって大事なだけでなく、実生活においてもとても大事なことだなと感じました。主観的に良い悪いだけを見て物事を判断するのではなく、その物事を客観的に見られるようになりたいと思いました。
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