2020年度 第7回 学生スタッフレポート

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知らないことを、知ること。

幡野 広志 氏(写真家)

みなさんこんにちは! 6月25日の第7回授業は、写真家の幡野広志さんのアンコール講演をお届けしました。幡野広志さんは多発性骨髄腫という難病を抱えるも、病気になったことを悲観するのではなく、自分のやりたいことに従う生き方をしている方です。主な作品として、著書『ぼくが子どものころ、ほしかった親になる。』『ぼくたちが選べなかったことを、選びなおすために。』写真集『写真集』が挙げられます。

幡野さんのお話の中で、二つ印象に残ったことがあります。一つ目は、人生プランに「病気にかかること」も入れておくべきだということです。「あなたの人生プランは?」と聞かれて、皆さんは何と答えますか?きっと「〇歳で留学して、その後就職、結婚」というように将来やりたいことはすぐに思いつくでしょう。しかし、具体的に想像しにくいといったことのため、病気にかかることを想定する人は少ないと思います。病気はいずれ誰もが経験する可能性が高いうえに、人生を大きく変えかねないものです。具体性に欠けるとしても、病気で自由に使えない時間を想定しておくことが必要だと幡野さんは言います。辛い時間も想定しておくことがいざその場面に遭遇した時に辛さを軽減することや、後悔しないように今を生きることに繋がるのでしょう。

二つ目は、仕事をアイデンティティにしない方が良いということです。幡野さん自身が他の癌患者さんのお話を聞いたところ、仕事一筋で頑張ってきた男性の多くは口を揃えて、「仕事を頑張らなきゃよかった」と言ったそうです。病気にかかったことでいざ自分を見つめ直してみると、家族と過ごした時間の少なさに気づき、家庭を顧みず働いたことを後悔する人が多いのです。一生を共にする家族と、その生活を支える仕事とのバランスが重要なのでしょう。また、幡野さんは自分の人生を選んでいく上で、「職業を将来の夢にしないこと」を勧められています。夢とは職業選択の先で何をするのかということであり、小さい頃から「夢=職業」と教えられてきた私たちには新しい考え方かもしれません。私は志望大学を考える時に、「どの大学に合格したいか」ではなくて「合格した先で何をしたいか」を考えるべきだと言われてきました。夢もまた同じことで、就職をゴールにするのではなく、就職した後に長く続いていく未来を考えるべきなのです。

幡野さんはお子さんを持つ身として、親についてのお話もしてくださいました。親はつい子どもに「就職は大丈夫なの?」などの言葉を投げかけることがあります。これは、親にとっては「子どものためを思ってしたこと」であり、実際にそうでもあるのだと思います。しかし、幡野さんはそれは「本人の幸せのためではなく、親が安心したいから」していることなのだとおっしゃいました。私はその言葉を聞いて、「そうかもしれない」と納得している自分に気が付きました。皆さんは、「親が言っているからそうしようかな」と物事を決めたことはありませんか?それは、もしかしたら親の「こうあってほしい」という願望が詰まっている言葉に、無意識に従っていた部分があったのかもしれません。親を安心させるために夢を選んだり、親の勧める「親が生きた時代に求められていたもの」に自分をはめ込むことはするべきではないと幡野さんはおっしゃいます。親の時代と私たちの時代は異なります。ですから、その意見は参考程度にして、自分の人生を自分で選ぶことが幸せに繋がるのです。

私たちは今後数えきれないほどたくさんの人と出会いますが、その出会いで得られる「知らないことを知る」という経験が人生の楽しさなのだ、と語っていた幡野さんは、今のご自身の人生を思い切り楽しんでいるように思えました。それと同時に、ご自身の周りの人の幸せを願いながら生きていることも、この講演を通してよく伝わってきました。「幸せは人それぞれであり、誰かがつくった幸せの型に自分を当てはめない」という幡野さんの言葉を胸に、これからの人生をより良いものにしていけたら、と思います。

英語英文学科1年 M.N

コメントシートより

  • 幸せとは何か自分で想像することができる人になりたいと強く感じた。親に言われたから、と自分は思考を停止していると、一度しかない人生で、本当に自分がやりやたかったことをできないまま、本当の幸せとは何か見つけることができずに死んでしまうと思った。自分はやりたいことのためにもっと貪欲になりたいとこの講演を通して、強く思った。
  • 私は今まで自分の好きなことをしてきた反面、周りの人の目を気にして生きていました。両親から安定した職業をとるべきだ、資格をとるべきだなどと教えられて育ちました。その結果資格取得ができ自分に自信を持てた反面、周りの同級生たちは遊んでいて羨ましいと感じる部分もたくさんありました。私は将来的にドイツの難民問題に携わりたいと考えていますが、親からは地方公務員になりなさいと言われていてずっと悩んでいましたが、今日の講演で自分が一番やりたいことを優先しようと決心することができました。「誰かが作った幸せの形に自分をはめない」という言葉が本当に心に響きました。
  • 幡野さんは病気なのに、健康な人よりも明るくて、亡くなる時のことを全く恐れていないような感じがして衝撃を受けた。それは、幡野さんが病気になる前からいつも自分にとっての幸せや好きなこと、やりたいことを追求してきたから、いざ病気になった時にも自分の人生に後悔がないんだなと思った。まずは自分が幸せにならなければ何も始まらないと思う。自分の中で興味がある分野をどんどん突き詰めて、他の人と話す時に色々な話題を楽しめるようにしたい。
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