2020年 第4回 学生スタッフレポート
「当たり前」の家族像を越えて
堀込 泰三 氏(子育て兼業主夫 / 秘密結社主夫の友CEO)
「総合2020」第4回、6月4日(木)は、アンコール講演という形で、「総合2018」第23回に講演をしていただいた堀込泰三さんのお話をお聞きしました。
“専業主夫”
この言葉は私も以前から知っていましたが、今までの私はどうしてもマイナスなイメージを持ってしまっていました。”主婦”とは違い、”奥さんのために”とか”普段の仕事が嫌だったから”という理由で“主夫”になった男性が多いと思っていたからです。ですが、今回の堀込さんの講演を聞いたことで、”主夫”並びに”専業シュフ(主婦・主夫)”のあり方を知り、そのイメージが180度変わりました。
堀込さんは大学院で博士号を取得し、卒業後は大手自動車メーカーでエンジン開発に携わっていました。その後2年間の育児休暇を取ります。当時は男性が育児休暇を取ることや、その期間の上限が2年間であったことはとても珍しかったそうです。そして2年間の育児休暇の後に職場復帰しますが、研究者として働く奥さんはアメリカに転勤、自分は日本で仕事という形になってしまいました。家族がバラバラになったことで寂しさと辛さを感じるようになった堀込さんは、家族で一緒に暮らすために会社に辞表を提出し”専業主夫”になることを決心します。
では、ここで”専業シュフ”の一日を見てみましょう。これからあげる例は堀込さん自身の1日ですが、まず朝は5時に起床して家族分の朝食を作り、子供を幼稚園まで送り、洗濯や掃除などの家事をこなします。お昼はママ友とランチをしながら情報交換をし、夕方には慣れた手つきで夕飯の準備をし、くたくたになったころには子どもたちと川の字になって寝る...堀込さんはそんな1日をほぼ毎日過ごしているそうです。
私はこのお話を聞いた直後、「わあ、なんて忙しい一日。休んでいる暇が無いなんて!こんなに大変なものなのか!」とその忙しさに驚きました。私自身専業シュフのいる家庭ではなく、シュフというものを間近に見てきていないため、「”専業シュフ(主婦・主夫)”は、ただ家事や育児をしているだけ」と以前は考えていました。しかし堀込さんのお話を聞いた事で、専業シュフは想像していたよりもずっと多忙で、大変で、そんな一日がほぼ毎日あると考えるとどれほど精神的にも体力的にも苦痛なものなのだろう、と感じるようになりました。「ただ家事や育児をしているだけ」そう思っていた過去の自分が恥ずかしく思えてきます。
そしてそのことに加え、男性が手早く家事をしていることにも驚きました。しかし、男性が家事をやらない、できない、なんて誰が決めたのでしょうか。「男が仕事、女は家庭」という概念が私の中にはあったようで、「男性は家事ができない、やらない」といった先入観や固定観念は良くないと実感しました。それでも男性が家事や育児をする事に違和感を持つ人が多いようで、実際に堀込さんは、お昼に子どもを抱いて街中を歩いていたら周りから好奇の目に晒された事もあったそうです。ですが、実際に男性も家事や育児を経験してみる事で家事が意外と楽しかったり、自分に向いていたりするのかもしれない、シュフが合っているのかもしれない、そう思えるかもしれません。
更に堀込さんは”専業シュフも一種の職業”ともおっしゃっていました。確かにシュフ業はこれほど多忙で大変なのですから、ひとつの”職業”と言うのにも納得がいきます。いや、たくさんある“職業”の中でも一番大変な職業のひとつに入るのではないかと私は思います。しかし、そんな多忙で大変な”シュフ業”を堀込さんは誇りに思っているそうです。私には最初、堀込さんがそう思う理由が全く分かりませんでした。堀込さんは自ら”シュフ”になることを決心したというものの、シュフはとても多忙で大変で、周りから好奇の目に晒される事があるのにも関わらずどうして堀込さんは”主夫業”を誇りに思えるのでしょうか?
その理由は「すごく今が充実して楽しく、幸せな生活を送っているから」。子どもたちと長い時間いられることや主夫業が楽しいこと、そんな時間がとても充実していて、自分は幸せだと感じるそうです。
講演の中では他にも、テレビの取材で堀込さんご夫婦がお互いにどう思っているのかについて話している場面がありました。堀込さんの奥さんは「仕事を辞めてまで家庭を支えてくれてありがとう」、堀込さん自身は「今の生活がすごく充実していて、働きに出てくれることに感謝している」とおっしゃっていました。どうですか?そうです、堀込さんご夫婦はお互いに感謝を述べているのです。私は互いに尊重して感謝し合うところも、堀込さんの言う「幸せ」に繋がっているのだと思います。そんなお話を聞いて私は、堀込さんたちのようなお互いに尊重し合える関係を、そして自分は幸せだと言える家庭を築いていきたいと思うようになりました。
堀込さんは家事を卒なくこなすだけでなく、さらに、「秘密結社 主夫の友」という団体を結成して活動していらっしゃいます。”主夫という選択肢を広めていこう、主夫の情報交換の場を作ろう”と、本の出版や講演をされていらっしゃいます。活動をしている掘込さんは、純粋に興味を持って楽しんでいる様子で、笑顔いっぱいでした。
私が同じ立場だったら、家事をすることに精一杯で他の人のために活動することはできないだろうと感じましたし、自分の仕事をやめたことに後悔が残ってしまうかもしれません。しかし「物作りじゃなくて、男性の家庭進出を進めるということも、時代を作っていることである。」と堀込さんは堂々とおっしゃっていました。
私は、こんなにも今自分がやっていることに対して前向きに捉えることのできる人に出会ったのは初めてで、今まで自分が他人のしていることに影響され、こうするのが正しいというような当たり前に囚われすぎていたことに気がつく事ができました。それによって、自分の選択肢や可能性を自分で狭めてしまっていたことに気が付きました。一人の大人になっていく中で、選択する機会はこれからたくさんあると思います。そんな時、掘込さんのように、当たり前に囚われない、今できるベストな判断ができる大人になりたいと強く思いました。
講演の最後に堀込さんは、男性は仕事、女性は家事という男女の固定観念を持つ人が一人でも少なくなる事が自分たちの活動の成果となるとお話しされています。主夫を増やすだけでなく、主夫を理解してくれる人を増やすことで、柔軟に選択できるようになるのでは、と訴えかけてくださいました。このような地道な活動によって理解が深まることで、良い社会が作られていくのだと気付かされ、自分も掘込さんのように、人に発信できるような人になりたいと思いました。
“専業主夫”
この言葉は私も以前から知っていましたが、今までの私はどうしてもマイナスなイメージを持ってしまっていました。”主婦”とは違い、”奥さんのために”とか”普段の仕事が嫌だったから”という理由で“主夫”になった男性が多いと思っていたからです。ですが、今回の堀込さんの講演を聞いたことで、”主夫”並びに”専業シュフ(主婦・主夫)”のあり方を知り、そのイメージが180度変わりました。
堀込さんは大学院で博士号を取得し、卒業後は大手自動車メーカーでエンジン開発に携わっていました。その後2年間の育児休暇を取ります。当時は男性が育児休暇を取ることや、その期間の上限が2年間であったことはとても珍しかったそうです。そして2年間の育児休暇の後に職場復帰しますが、研究者として働く奥さんはアメリカに転勤、自分は日本で仕事という形になってしまいました。家族がバラバラになったことで寂しさと辛さを感じるようになった堀込さんは、家族で一緒に暮らすために会社に辞表を提出し”専業主夫”になることを決心します。
では、ここで”専業シュフ”の一日を見てみましょう。これからあげる例は堀込さん自身の1日ですが、まず朝は5時に起床して家族分の朝食を作り、子供を幼稚園まで送り、洗濯や掃除などの家事をこなします。お昼はママ友とランチをしながら情報交換をし、夕方には慣れた手つきで夕飯の準備をし、くたくたになったころには子どもたちと川の字になって寝る...堀込さんはそんな1日をほぼ毎日過ごしているそうです。
私はこのお話を聞いた直後、「わあ、なんて忙しい一日。休んでいる暇が無いなんて!こんなに大変なものなのか!」とその忙しさに驚きました。私自身専業シュフのいる家庭ではなく、シュフというものを間近に見てきていないため、「”専業シュフ(主婦・主夫)”は、ただ家事や育児をしているだけ」と以前は考えていました。しかし堀込さんのお話を聞いた事で、専業シュフは想像していたよりもずっと多忙で、大変で、そんな一日がほぼ毎日あると考えるとどれほど精神的にも体力的にも苦痛なものなのだろう、と感じるようになりました。「ただ家事や育児をしているだけ」そう思っていた過去の自分が恥ずかしく思えてきます。
そしてそのことに加え、男性が手早く家事をしていることにも驚きました。しかし、男性が家事をやらない、できない、なんて誰が決めたのでしょうか。「男が仕事、女は家庭」という概念が私の中にはあったようで、「男性は家事ができない、やらない」といった先入観や固定観念は良くないと実感しました。それでも男性が家事や育児をする事に違和感を持つ人が多いようで、実際に堀込さんは、お昼に子どもを抱いて街中を歩いていたら周りから好奇の目に晒された事もあったそうです。ですが、実際に男性も家事や育児を経験してみる事で家事が意外と楽しかったり、自分に向いていたりするのかもしれない、シュフが合っているのかもしれない、そう思えるかもしれません。
更に堀込さんは”専業シュフも一種の職業”ともおっしゃっていました。確かにシュフ業はこれほど多忙で大変なのですから、ひとつの”職業”と言うのにも納得がいきます。いや、たくさんある“職業”の中でも一番大変な職業のひとつに入るのではないかと私は思います。しかし、そんな多忙で大変な”シュフ業”を堀込さんは誇りに思っているそうです。私には最初、堀込さんがそう思う理由が全く分かりませんでした。堀込さんは自ら”シュフ”になることを決心したというものの、シュフはとても多忙で大変で、周りから好奇の目に晒される事があるのにも関わらずどうして堀込さんは”主夫業”を誇りに思えるのでしょうか?
その理由は「すごく今が充実して楽しく、幸せな生活を送っているから」。子どもたちと長い時間いられることや主夫業が楽しいこと、そんな時間がとても充実していて、自分は幸せだと感じるそうです。
講演の中では他にも、テレビの取材で堀込さんご夫婦がお互いにどう思っているのかについて話している場面がありました。堀込さんの奥さんは「仕事を辞めてまで家庭を支えてくれてありがとう」、堀込さん自身は「今の生活がすごく充実していて、働きに出てくれることに感謝している」とおっしゃっていました。どうですか?そうです、堀込さんご夫婦はお互いに感謝を述べているのです。私は互いに尊重して感謝し合うところも、堀込さんの言う「幸せ」に繋がっているのだと思います。そんなお話を聞いて私は、堀込さんたちのようなお互いに尊重し合える関係を、そして自分は幸せだと言える家庭を築いていきたいと思うようになりました。
堀込さんは家事を卒なくこなすだけでなく、さらに、「秘密結社 主夫の友」という団体を結成して活動していらっしゃいます。”主夫という選択肢を広めていこう、主夫の情報交換の場を作ろう”と、本の出版や講演をされていらっしゃいます。活動をしている掘込さんは、純粋に興味を持って楽しんでいる様子で、笑顔いっぱいでした。
私が同じ立場だったら、家事をすることに精一杯で他の人のために活動することはできないだろうと感じましたし、自分の仕事をやめたことに後悔が残ってしまうかもしれません。しかし「物作りじゃなくて、男性の家庭進出を進めるということも、時代を作っていることである。」と堀込さんは堂々とおっしゃっていました。
私は、こんなにも今自分がやっていることに対して前向きに捉えることのできる人に出会ったのは初めてで、今まで自分が他人のしていることに影響され、こうするのが正しいというような当たり前に囚われすぎていたことに気がつく事ができました。それによって、自分の選択肢や可能性を自分で狭めてしまっていたことに気が付きました。一人の大人になっていく中で、選択する機会はこれからたくさんあると思います。そんな時、掘込さんのように、当たり前に囚われない、今できるベストな判断ができる大人になりたいと強く思いました。
講演の最後に堀込さんは、男性は仕事、女性は家事という男女の固定観念を持つ人が一人でも少なくなる事が自分たちの活動の成果となるとお話しされています。主夫を増やすだけでなく、主夫を理解してくれる人を増やすことで、柔軟に選択できるようになるのでは、と訴えかけてくださいました。このような地道な活動によって理解が深まることで、良い社会が作られていくのだと気付かされ、自分も掘込さんのように、人に発信できるような人になりたいと思いました。
国際関係学科1年 ののか
英語英文学科1年 ちーぽん
コメントシートより
- 今回の講演を聞いて一番心に残ったことは「女性の社会進出と男性の家庭進出は表裏一体である」と堀込さんが仰ったことです。ここ数年に渡って、女性の社会進出を促そうという動きが出てきており、2020年には日本の女性の管理職の割合を三割にまで高めようというものもあります。しかし、女性の社会進出を阻んでいる理由として、家事と育児を仕事と両立するのが難しいということが挙げられ、実際に両立が難しいから仕事をやめたりする人が多くいます。そのような中で男性が家庭の仕事を受け持ってくれることで、女性は身体的にも精神的にも何か解放されるものがあると思いました。家という共同体を夫婦で作っていき、その時の時代に合った生活を柔軟に対応して生きていける世の中になるといいなと思いました。
- 「人生の選択を迫られたとき、当たり前にとらわれず、その時のベストを尽くすこと」と言うメッセージが特に心に残りました。今まで私は、出産ができるのが女性だけなのだからあろうる程度の男女差は仕方のないことだろうと考えている節がありました。しかし、今日の講演をきき、私が思っている以上に埋めていける差が大きいと感じました。そして、世間の柔軟な生き方をしている人を特異に思わず受け入れよう、そして私自身も柔軟になろうと思います。
- 自分の意思で何を大事にして生きたいか選択すべきだと気付かされた。社会において当たり前とされることにとらわれてはいけない。だから、夫が家事をして「偉い」というわけでもないし、妻が世帯主であることに夫が引目を感じる必要はない。しかし、支え合う夫婦になるためには、お互いの仕事に対して尊敬する気持ちを表すのが大切である。