2020年度 第3回 学生スタッフレポート

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かぞくのかたち—かぞくってなんだろう—

長村 さと子 氏(一般社団法人こどまっぷ 共同代表) / 茂田 まみこ 氏(一般社団法人こどまっぷ メンバー) / 新ケ江 章友 氏(一般社団法人こどまっぷ メンバー / ⼤阪市⽴⼤学教員)

 みなさんこんにちは!第3回「総合2020」では、一般社団法人こどまっぷ 共同代表の長村さと子さん、メンバーの茂田まみこさん、新ケ江章友さんに講演していただきました。一般社団法人こどまっぷは、「LGBTQが子どもを持つ未来を当たり前に選択できる」社会を目指して、2010年から活動を開始し、2018年に法人化された団体で、様々な都市を訪ね、全国の仲間とのつながりを作ることを大切にされています。今回は、こどまっぷの活動のお話を通して、セクシュアルマイノリティと呼ばれるLGBTQの人々が直面している、パートナーと家族になることや子どもを持つことなどの問題について知ることができました。

 講演では、まず初めに新ケ江さんが日本におけるLGBTQの現状について話してくださいました。新ケ江さんはご自身のパートナーが同性であることから、こどまっぷのスタッフになって活動されており、それと同時に研究者としてLGBTQの問題を調査されている方です。新ケ江さんによると、日本におけるセクシュアルマイノリティを取り巻く環境は近年変化しているそうです。例えば、2015年4月に渋谷区が行政として初めて同性のカップルをパートナーとして認める証明書の発行を始めてから、その動きが全国に徐々に広まり、同性婚についての裁判も行われたりしています。しかし、同性カップルは養子縁組や提供精子を用いた人工授精に関する制度が使えないことなど、法制度上の制約はかなり厳しいままになっているのが現状です。また、日本では海外に比べてLGBTQについての認知度が低く、日本におけるセクシュアルマイノリティによる出産・子育ての実態については、学術的にほとんど明らかになっていないそうです。

 新ケ江さんはそのようなLGBTQの現状を変えるための一歩として、2018年からこどまっぷのスタッフになり、こどまっぷのイベントの参加者であるLGBTQの方々にインタビューを行うことによって、未だに学術的に明らかにされていないセクシュアルマイノリティによる出産・子育てに関する実態調査に尽力されています。こどまっぷでは主に「子どもが欲しい」、「子どもを育てたい」と考えているLGBTQの方々を応援するために、当事者同士のお茶会や交流会、「妊活」のための初心者講習、法律講座などを開催しています。実際に子育てをしている方々から情報提供をする場や子どもが欲しい人同士の交流の場を提供することで、参加者は一人ではなく、みんなで子どもたちを育てていくという意識を高めているそうです。新ヶ江さんのお話を聞いて、マイノリティと呼ばれる人々が社会の中で自分たちの居場所を見つけるのは簡単ではないということを知りました。しかし、自分の周りからでも情報や知識を発信していくことが、LGBTQ当事者の大きな支えになるということも気がつきました。全員が同じ方向を向くことが出来なくても、色々な考え方や見方があるという意識を一人一人が持つことが、これから多様化が進んでいく社会を生きていく上で大切なことなのではないでしょうか。

 新ケ江さんの次に、長村さんと茂田さんが同性カップルが抱える諸問題の例として、ご自身の体験談を含めた様々な例を紹介してくださいました。私が一番印象に残ったのは、自分のパートナーと家族になるために相手を自分の養子にするという例です。日本では現在、同性カップルの結婚は法的に認められていないため、家族としての関係性を保障できるひとつの方法として、養子縁組を利用する方々がいます。パートナーの両親から理解を得られる場合には、相手方の両親と養子縁組を利用することで、法的にパートナーと姉妹や兄弟になる場合もあるそうです。そこまでして家族になる必要があるのか、一緒に暮らすだけではだめなのかと思ってしまいますが、法的に家族でないと医療の同意書にサインが出来なかったり、相続人になれなかったりという不利益が生じます。異性同士なら難なく獲得出来る権利を、同性であるが故にここまでしないと獲得できない事実に衝撃を受けました。

 また、こどまっぷが海外でプレゼンをしたときの資料を使い、日本と海外において同性カップルが子どもを持つことに関する周囲の人々の反応がどのように違うのかを紹介してくださいました。その中でも印象に残った言葉が「同性カップルであることを打ち明けたら、犬でも飼えばいいねと言われた」というものです。同性カップルの子ども事情を知らない人からすればそう思ってしまうのも無理はないかもしれませんが、知っている人からすればとても失礼で悲しい発言です。これは日本で言われた言葉だそうですが、海外であればそのような反応はされないようで、この点からも日本のLGBTQに対する認識の低さが伺えます。これは、“知らない”ということが他の人にとってナイフになりうるひとつの例だと思います。どんな人にも共通して言えることですが、これから生きていく上で困難に遭遇したとき、私たちは持っている知識の数だけ問題解決の方法を増やすことが出来るのではないでしょうか。問題解決の手段を増やすためにも、“知らない”という理由で他の人を傷つけないためにも、津田塾大学で沢山のことを学び、沢山の知識を身につけようと思いました。

国際関係学科1年 A.W 
英語英文学科1年  K.K 

コメントシートより

  • 私は同性婚が日本で認められていないことやLGBTのカップルが子供を持ちたいと思うことについて聞いたことがあり、なんとなく理解している気でいた。だが、彼らが、法律が変わることだけを求めているわけではなく、今ある制度の中で工夫して家族になろうとしていることや、同性のカップルが養子縁組で子供を養子にすることが認められていないことなどは全く知らなかった。考え方や価値観は人それぞれだし、それを変えるのは難しいことだが、自分の価値観に合わない人たちを差別したり傷つけたりするのはやめなければいけないと思う。もし法律が変わったとしても、一番変わらなければならないのは私たち自身なのではないか。
  • LGBTQの存在が一般的に広く知られてきている現代でも、未だに根強く偏見は残っており、LGBTQの人々は偏見に悩まされているのが現状だ。LGBTQについて深く考えたり、詳しく知るきっかけがないために、固定概念的な家族像に囚われ、偏見を抱いている人が多いのではないかと思う。具体的な法整備は勿論のこと、加えて、幼少期からLGBT教育を充実させたり、学校や会社などでセミナーを開催するなどの取り組みが必要なのではないかと思った。様々なマイノリティを持つ人を始めとした全ての人が暮らしやすい社会になるといいなと強く思った。
  • LGBTQの人達の中でも子育てに関する多様な考え方があることを知った。私は同性カップルの場合、子供を持ちたいと思ったら養子をもらうのが一般的な方法なのかと思っていたので養子縁組ができないということを聞いて驚いた。また性別変更も手術をしないとできないという負担が大きいものであることを知った。法もあまり整っていない日本だが海外ではどのようなサポートが行われているのか知りたいと思った。様々な人が子どもをもちたいと考えているということを忘れてはいけないし、父、母、子どもという形が家族であるという固定観念に囚われずに、何がかぞくなのかを考える機会になった。
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