2020年度 第22回 学生スタッフレポート

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バカだと思われたくなくてもがいていたあの頃の私に、今、伝えたいこと。

林 利香 氏(編集者)

こんにちは。「総合2020」第22回、12月24日(木)の講演は、編集者の林利香さんにお越しいただきました。林さんは、津田塾大学英文学科を卒業後、出版社や広告代理店でのキャリアを経て、精神医学、心理学領域の編集者として独立されました。また林さんは摂食障害を抱えた過去があり、現在はその経験を活かして摂食障害の啓発・予防活動や支援者教育に力を入れています。また、体と食べ物について、そして社会との関わりについて理解を深めるワークショップ「からだのシューレ」の運営もされています。
 
講演では、林さん自身が摂食障害と闘った半生を打ち明けてくださいました。林さんは、生産性のある人間にこそ価値があるという「内なる優生思想」に囚われ、表面的に優秀な姿を必死に装う自分と、内面的なできない自分との間に乖離が生じ、多くの苦しみや葛藤を抱えたと仰っていました。そして、そのストレスを発散するために林さんが縋ったのが、過食嘔吐でした。林さんは多くの時間や人々の力を借りて摂食障害を克服されましたが、その過程で手に入れたものが「俯瞰力」だったそうです。林さんは「俯瞰力」を「自分で自分を俯瞰すること」と定義しており、3つのアプローチを紹介してくださいました。
 1つ目は「今、この瞬間の自分を観察・研究する」ことです。かつての林さんは、感情の起伏に振り回されて過食嘔吐に走っていたそうです。しかし、一歩離れた視点から自分を観察することで、自分の感情の傾向が分かるようになったり、乱れた感情に対して冷静かつ優しく対処できるようになったりしたそうです。また、苦しみや葛藤の原因である現実と理想のギャップも冷静に見つめることができるようになり、現実を受け入れることができるようになったともお話されていました。
 2つ目は「時間軸で自分を俯瞰する」ことです。林さんは自分の半生を年表に書き起こし、自分の人生を冷静に見つめなおしたそうです。すると、自分の負の側面だけでなく、自分がかつて成し遂げていたことや頑張ってきたことを思い出すことができたと仰っていました。その結果、高い理想ばかりを見つめて自分を追い込むのではなく、今目の前にある幸せに目を向けられるようになったそうです。
 3つ目は「関係性を軸に自分を俯瞰する」ことです。林さんは家庭内でわだかまりを抱えていたそうですが、両親の生い立ちを聞くことで彼らも一人の人間であることを実感し、精神的に楽になったと仰っていました。林さんは、家族だけでなく友人や恋人を含め全ての人が違う人間であることに気づき、人間関係が完全に思い通りにいかないことが当然であると実感したそうです。
 このように林さんは俯瞰する幅を徐々に広げ、現在のCMやSNSに溢れる、痩せていることを礼賛する社会風潮を煽る情報を冷静に見つめることができるようになり、摂食障害から解放されていったそうです。
 また林さんは、俯瞰力を身に付ける鍵は、無意識に形成される偏見が世の中に多くあることに気づくことだと仰っていました。津田塾大学での学びや自主的な経験を柔軟に受け入れて沢山の世界に触れ、色々な感情に触れ、多くの失敗を重ねることで、物事を様々な視点で見ることのできる「俯瞰力」が身に付くとお話されていました。
 
 私自身、現在摂食障害と闘っており、多くの葛藤や苦しみを抱えています。しかし、林さんの優しいメッセージが、内なる優生思想によってがんじがらめにされた私の心をほどいて下さるようで、とても感動し思わず涙が溢れました。また、私は第一志望に不合格となり、そのことがコンプレックスになっていましたが、林さんのお話を通して津田塾大学の学生である自分を誇りに思えるようになりましたし、更に勉学に励みたいと思いました。
 
 林さんの講演を通して俯瞰力を手にするための具体的なアプローチを学び、摂食障害を抱える学生だけでなく、全ての学生が、悩みや苦しみから解放されるきっかけになったのではないかと感じています。

国際関係学科2年 はなこ

コメントシートより

  • 私は摂食障害になったことはありませんが、なんとなくつらくて悩んでしまい、どんどん負の感情に飲み込まれてしまうことがよくあります。そのようなときに自分自身を俯瞰して観察することが大切であるということを学ぶことができました。そして、理想との乖離に悩んだときに、納得できない姿の自分と仲直りできるように俯瞰力をみにつけたいと思いました。
  • 私は今回の講義を聞いて、冒頭から涙が止まらなかった。なぜなら林さんの過去といまの自分がすごく重なったからだ。昔から休むことを知らず、自分のことが嫌いで一生懸命やっていない人を蔑ろにし、人に対してはいい印象を与えようと本当に思っていることを言わず、相手がその時に欲しい言葉を与えるようにして自分の理想と現実にすごく苦しんでいる。頑張らなければならない、努力をしなければならないと考えるあまり間違った方向に進んでしまったり行きすぎたりしてしまうこともある。お話の中で「犬にニャーと鳴けといっても鳴けないですよね」というお話があった。また、「魚にはいろんな種類があってそれぞれ住む場所が違う」ともおっしゃっていた。このお話を聞いて、自分は何にそんなに頑張っているのだろうと感じた。どう頑張っても変えられないことはあり、変えられないものを変えようとしていた自分に気づけた。「余白が人を強くする」というお話がありましたが、自分にもっと余裕を持って、自分で自分を否定しすぎずにいきていきたいと感じた。
  • 今年度の総合の授業のテーマが「俯瞰力」というので今まで多くの講演を聞いていたが、俯瞰力の意味などは分かっても実際身に付けるということになるとまだあまり理解していませんでした。しかし今回の講演で自分を俯瞰することのアプローチを学ぶことが出来ました。このアプローチ方法を自分のペースで実践していき、大学を卒業するときには身に付けていきたい。また効率よく行動することだけでなく、余白を作ることで自分が強くなるという言葉が印象的だった。余白=余裕にも繋がるので、私も余白を作っていきながら生活していくと自分に余裕もできるんだろうなと気づいた。
  • 津田塾の世間のイメージはつだつだしいという言葉もあるように、真面目で勉強熱心で頑張り屋さんというイメージが強い。実際私も入学前から真面目な生徒しかいない、優秀な生徒の集まりだといろんな噂で聞いていた。私は英語が特別得意というわけでもないし、正直、すごく辛いが津田の卒業生や先生の話を聞くと津田塾生は他大学の人が遊んだり、勉強をそっちのけにしてサークルに没頭している中でも絶対に勉強は怠らないし、むしろみんなが真面目に取り組んで相互にいい影響を与え合っていると思う。就職率が高いのも、この在学中に死ぬほど辛いと思いながらもやり遂げた課題や試練を乗り越えたからであると思う。自主的に学ぶ力から、自分からアクションを起こすことができる行動力、この2つは津田塾にいるこの4年間で必ず身につけることができる力だと、どの先生も自信満々に話しているので、私も津田塾在学中にこの2つの力と、俯瞰力を身につけられるように今は全力で目の前のことを一生懸命頑張ろうと思った。
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