第6回 学生スタッフレポート

  1. HOME
  2. 大学案内
  3. 第6回 学生スタッフレポート

「大海」をわたった、津田梅子のあゆみ

高橋 裕子 氏(津田塾大学学長)

みなさん、こんにちは。
5月23日、「総合2019」第6回は津田塾大学髙橋裕子学長による講演でした。髙橋先生は津田塾大学英文学科を1980年に卒業し、2016年から津田塾大学学長を務めていらっしゃいます。先日、津田梅子が新5000円札のデザインに選ばれ話題となりました。この機会に、津田梅子がどのような人物だったのかをより深く知るため、津田梅子の研究をしておられる高橋学長に講演をお願いしました。

今回髙橋先生には、津田梅子の人間関係、考え方、女子英学塾を設立するまでの過程などについて講演していただきました。特に、今回の講演のタイトルが「大海をわたった、津田梅子の歩み」とあるように、梅子が「大海」を渡ってどのようにネットワークを築き、国内外でそれをどのように活用してきたのについて詳しくお話していただきました。津田梅子にとって、大海を渡った経験は自分に馴染みのない文化や世の中の動向を理解して吸収する、そして自分自身を変化・成長させ、自分の力量を拡大させるような経験だったそうです。この経験が糧となり、梅子は大海を越える、強く大きなネットワークを築きました。ここで髙橋先生が紹介してくださったゆかりのある人物のうち、3名を紹介します。わたしは、この3名の女性がそれぞれ強い信念を持って女性教育を推進したという点に惹かれました。

1人目は山川捨松(のちに大山捨松)です。彼女は梅子と同様に、日本女子留学生の1人でした。捨松と梅子は留学を通して、まるで姉妹のような深い絆を築きます。1882年、2人は帰国船の中で、アメリカで経験した女子教育を日本に広める約束をします。当初は捨松が女学校を作り、それを梅子が支援するという計画を立てていたそうです。帰国後、梅子は捨松が大学を卒業したことに影響を受け、自身も教師になるために再び渡米しブリンマー大学で学び始めます。しかしその時代の風潮と環境により捨松は自身の女学校を作ることができませんでした。その後、梅子が女子英学塾を設立する計画を立てると、捨松は率先して協力します。1900年の女子英学塾設立後、捨松は女子英学塾の顧問になり、後に理事や同窓会長を務めます。このように捨松は津田梅子の女子英学塾運営に大きく貢献しました。女子英学塾の社団法人設立登記は大山捨松と津田梅子の2人の名前で申請したそうです。

そして2人目はアリス・ベーコンです。彼女は捨松のホストファミリーであり、梅子の盟友となります。アリス・ベーコンは梅子が女子英学塾を設立しようとしていることを知ると、アメリカで率先して募金活動を行います。1900年の女子英学塾設立時には女子英学塾英語教師として来日し、1902年に任期が終わるまで英語教師の役目を果たしました。2017年にこの2人の絆を讃えて建てられたのが、津田塾大学千駄ヶ谷キャンパスにあるアリス・メイベル・ベーコン記念館です。

そして、最後の3人目はM・ケアリ・トマスです。彼女はブリンマー大学学部長であり、女性高等教育のパイオニアでした。1890年、梅子はもう一度大海を渡り留学したブリンマー大学で彼女と出会いました。M・ケアリ・トマスは女性も学問ができるということを、生涯をかけて証明しようとしていたそうです。トマスと梅子は共に男女共同参画の先駆けとなる思想を持っていました。トマスの元に留学した梅子は、1891年、自分に続いて日本人女性がブリンマー大学で学べるように、日本人女性米国奨学金制度を設立します。奨学金は8000ドルほど集まりました。当時の8000ドルは一説によると現在の日本で約1億2000万円にも相当するそうです。募金の賛同者リストの中にはM・ケアリ・トマスの名前ももちろんありました。この3名の他にも、津田梅子と深い絆や関係がある人物は多く存在しました。津田梅子はその大海を超えたネットワークを活用し、女子英学塾を設立するのに必要な資金、人材、情報を用意したのです。このネットワークがなければ、今私達が津田塾大学で学ぶことはなかったと思うと不思議です。

今回の講演から、津田梅子に並外れた行動力があり、強い信念を持っていた偉大な女性だったということを再確認しました。しかし偉大な先人を前に、私たちが彼女のような偉大な女性にはなれないと思う必要はないと思います。彼女も今の私たちと同じ、一人の女学生でした。彼女のようになりたいのならば、私たちも大海をわたれば良いのではないでしょうか。「大海をわたる」というのは必ずしも留学をするということではないと思います。異なる年齢層と関わること、知らない土地への旅行に行くことなども「大海をわたること」だと思いました。そして、私たちもそれぞれの大海をわたり、多くの経験をし、自分自身を成長させることこそが津田梅子らの希望だと思いました。彼女らが熱い信念を持って築いたこの大学で、私はこれからの4年間様々な大海をわたって学んでいきたいと思います。

情報科学科1年 m.leon

コメントシートより

  • 留学して得られる経験は自分が思っているより大きなものなのではないかと感じた。
  • 女性教育を築いた人がいるからこそ、女性の私でも「学べる」ことがこんなにも身近にあるのだなと感じた。
  • 自分のこれからの大学生活に対する心構えを改めるきっかけになる講演だった。
  • 津田梅子の、誰かに流されることなく自分の人生を歩む姿は意思がやわい自分に強く突き刺さった。そして、新しいことを始めることを恐れず、新しい自分になることを楽しむことが大切だと学んだ。
Copyright©2019 Tsuda University.
All rights reserved.