第26回 学生スタッフレポート

  1. HOME
  2. 大学案内
  3. 第26回 学生スタッフレポート

Between Nature and Architecture
〜伝統の継承と未来の創造〜

藤本 壮介 氏(建築家)

みなさん、こんにちは!

今年度最後の総合である今回は、建築家の藤本壮介さんにご講演いただきました。藤本さんは、津田塾大学小平キャンパスの将来的な建て替えを視野に入れた、マスタープラン設計を担当されています。講演では、藤本さんが今までに手がけた建物についてや、藤本さんが建築をされるうえで大切になさっていることについて、そして小平キャンパスの魅力や将来計画についてお話しいただきました。

藤本さんはお話の中で、講演タイトルにあるような「自然と建築」、また「古さと新しさ」、「公共と個人」、「屋内と屋外」などさまざまな対比を挙げ、それらを融合させ、引き立て合うことを大切にしているとおっしゃっていました。今ある良さを、伝統として引き継ぎながら新しいものを創造する。これは、大量生産・大量消費が当たり前となった現代では、特に実践が難しいポリシーであるように感じます。しかし、藤本さんは丁寧な思考のもと、そのポリシーに基づいた建築を実現していらっしゃいました。

藤本さんが手がけられた建築の中で一番印象に残ったのは、南フランスの都市モンペリエに建てられた、まるで木の枝のようなたくさんのバルコニーが特徴の集合住宅「L’ Arbre blanc(白い木)」です。南フランスに住む人々は昔から、外で昼食を取るなど、その温暖で過ごしやすい気候を楽しむ生活を送ってきました。藤本さんは、その伝統をいかに将来に残すかを考え、広いバルコニーをつけることにしたそうです。建築の面白いところは、規模、場所、用途などの条件が毎回違うことである、と藤本さんはおっしゃいました。既にあるものを真似するだけではなく、依頼主の要求に答えるだけでもなく、その土地に昔からある伝統を見極め、再解釈するというプロセスのもと造られたL’ Arbre blanc。今までに見たこともないような形のはずなのに、周りと調和した、人々の営みが見えてくるような建物だと私は感じました。

小平キャンパスも、藤本さんが手がけられた他の建築と同様に「伝統」であり、私達学生が生活する現在進行形の「日常」であり、そして「未来」に繋がっていくものです。藤本さんは、小平キャンパスの何よりのアイデンティティはその豊かな森であるとおっしゃいました。小平キャンパスは、無限の多様性を秘めた森と、ハーツホンホールなどの、私達の学びの軸となる建物が適度に共存し、良い影響を与えあっています。このような、多様性とぶれない軸の融合性を更に高めることで、小平キャンパスはクリエイティブな学びの場、意外性との出会いの場になるのではないかという考えのもと、計画を練っていらっしゃるそうです。

私は今日の講演を聴いて、建築に対するイメージが大きく変わりました。自分の設計した建物が、昔からあるその土地に生きる人々の営みに溶け込み、新たな伝統となるかもしれない。建築とは、歴史の上で重大な責任を担う行為であり、しかし同時に今を生きる人間としての自身の働きを後世に残せる嬉しさもある、魅力的な職業なんだと知ることができました。これまで私は、小平キャンパスを始めとする日常で使っている建物を、ただの場所として捉えていましたが、どの建物ひとつを取ってもその土地の過去、現在、未来が見えてくることに気付かされました。これからは建物を見る目ががらりと変わる気がします。

マスタープランの建て替え計画は、今年度末に完成するそうです。大好きな小平キャンパスが、藤本さんの手によってどのように伝統を継承し、どのように生まれ変わるのでしょうか。津田塾生として、未来の小平キャンパスがとても楽しみになった、今年度を締めくくるにふさわしい講演でした。

国際関係学科1年 枝豆

コメントシートより

  • 藤本さんが建築する上で大切にしてきた”自然との融合”は、私たちの根底にある内面的な自然とのつながりを思い出させてくれるようなデザインを作り出すことができていて、とても斬新だと感じた。
  • 異なるものが共存している方が豊か、という考えは現代の多文化共生社会においても重要な考えであると感じた。いつも当たり前に通っている津田のキャンパスに込められた意味を知ることができ、ありがたかった。
  • ものづくりをする時、今まで当然だと思っていた固定観念にとらわれず、固定観念自体に疑問を持つことが大切なのだと思った。
Copyright©2019 Tsuda University.
All rights reserved.