第23回 学生スタッフレポート

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誰一人取り残さない社会の実現へ、紛争地での取り組み

秋葉 光恵 氏(特定非営利活動法人Accept International 事務局長)

みなさんこんにちは! 第23回の「総合2019」では、NPO法人Accept International(アクセプト・インターナショナル)の事務局長である秋葉光恵さんに講演していただきました。アクセプト・インターナショナルは2017年4月にNPO法人化した組織で、ソマリアやケニア、インドネシアなどで「テロと紛争」という大きな問題を解決するために活動しています。この前身の団体を立ち上げたのが大学生だったこともあり、今でも多くの大学生がメンバーとして活動しているそうです。

ご紹介くださったのがアフリカの東に位置するケニアでの活動でした。ケニアはイスラム過激派組織のアル・シャバーブによって支配されているソマリアという国に隣接しており、ソマリアから避難してきた人たちが住む地区ができています。ケニアはソマリアで内戦が起きていた時に軍を送っていたこともあり、アル・シャバーブはケニアを報復対象として大きなテロを行いました。ケニアに避難してきて住み始めたソマリア人の存在に加えて、内戦に関わったことで生まれたテロに脅かされる日々。このような背景があったことで、ケニア人の反ソマリア人感情は高まっていったのです。

ケニアで問題となっていたのはソマリア人のギャングでした。彼らはソマリア人というだけで差別され、社会的な居場所がありません。経済的な要因も加わって、過激化した若者がギャンググループを作り、窃盗や薬物、強盗といった犯罪を行って地域の治安を悪化させていきました。こういった若者はテロ組織からすると非常に仲間に誘いやすく、実際に多くの人々がリクルートされて紛争やテロに利用されてきたのです。そこで、アクセプト・インターナショナルはそのテロリスト予備軍とも言える若者に注目しました。テロ組織に入る可能性の高い人が多い地域で、若者がリクルートされないように国連と共同のプロジェクトを行うことで、テロ組織の人的勢力を下から削いでいく活動を始めたそうです。

それに加えて行っていたのがソマリア人ギャングを「脱過激化」させる取り組みです。一度ギャンググループに入ってしまうとそこから抜け出すことはとても難しく、社会からのけ者にされてしまいます。アクセプト・インターナショナルはこの悪循環を終わらせるために、刑務所に入った人たちに対してワークショップを行い、「ギャングを、社会変革のリーダーに」というスローガンを掲げて、ギャングが武器を捨てて社会へ踏み出すための手伝いを始めたのです。

脱過激化プログラムは1人につき約1.5年をかけて、個人によって内容を変更しながら行われていきます。「どうしてギャングになってしまったのか」を自分たちで話し合い、「十分な教育を受けられなかったからだ」という意見が出たので、小学校に行って自分がギャングとして生活してきたことや教育の大切さを子どもたちに語っていました。時にはギャングの人たちと地元の神父さんなどの地域活動をしている人たちが話し合いながらお互いに理解を深めたり、経済的に苦しんでいる人のためにスキルトレーニングを行ったりもしてきたそうです。

アクセプト・インターナショナルは、このような草の根の活動を通して、ケニアの首都ナイロビのイスリー地区のひとつのギャング組織を解散させることができたそうです。まだ比較的新しい団体であるのに成果を出せたのは、今までなかなかアプローチするのが難しかったギャングたち、そして国際機関や現地政府としっかりと関係を構築してこれたからだ、と秋葉さんは語ります。「人との信頼関係はどれだけ時間をかけたとしてもやらなければいけないものだと学んだ」という言葉がとても印象に残りました。

世界で起こるテロの90%が紛争地で起こっている今の時代、対話による解決が難しいこの大きな問題の一因となっているのは私たちと同じくらいの年齢の若者であり、また、その問題に取り組んでいるのも同じ大学生だということに改めて驚きを感じました。アクセプト・インターナショナルのPVや、ギャング組織の解散式の動画を見せてもらいましたが、そこにいたのは私たちと同じように未来を担うソマリア人の若者の姿で、彼らの目には「自分たちの手で社会を良くしよう」というとても強い意志を感じました。(講演の際に上演していただいた紹介動画を見ることができます⇒https://accept-int.org/activity/approach/

“We are youth leaders.”

解散式(!)で元ギャングだった彼らが壁に書いたこの言葉は、私たちの胸にも響く言葉ではないでしょうか?アクセプト・インターナショナルが積み上げてきた地道な活動を通してテロと紛争について考えると共に、同世代が世界の異なる場所で活躍する姿に刺激をもらえた講演でした。

国際関係学科1年 すみれ

コメントシートより

  • 私たちと同世代の若者がテロリストやギャングとして生活しているが、その全員が好きで紛争やテロを起こしているわけではないし、原因は社会の差別にもあるということを知って、見捨て排除することなく、更生へ導き、社会を良い方向へ変えていける人材にすることがいかに必要かを学ぶことができた。
  • 大学生だけでなく、社会人経験がある人も同じ組織にいる事はおもしろいなと思いました。大学生のうちから、そういった事に関われることは貴重なので興味がわきました。
  • ソマリア人のギャングの人たちも、アクセプト・インターナショナルの人たちも、自分と同じくらいの年代の方々で、とても圧倒された。それぞれが”自分にできること”を見つけ、行動している姿が印象的だった。
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