第21回 学生スタッフレポート

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自由に生きる人を取材して

川内 有緒 氏(ノンフィクション作家)

みなさん、こんにちは!

誰でも一度は、自分が今いる居場所に疑問をもち、そこから離れて本当に自分がしたいことをやってみたいと思ったことがあるはずです。だけど、この先もレールが敷かれている安定的な道を捨てて、全く未知なる世界に飛び込むのはとても勇気がいること。12月5日の「総合2019」第21回は、そんな誰しもが悩む人生の分岐点で、いつも自分らしく自由に生きることができる道を選んできた、ノンフィクション作家の川内有緒さんにご講演頂きました。

映画監督になりたくて、日大の放送学科に進学した川内さん。しかし、映画よりもテレビ業界に関心のある周りの学生と合わず、卒業後は就職せずに、アメリカの大学院に進学することを決めたそうです。大学院を卒業し、アメリカのコンサルティング会社に3年、日本のシンクタンクに3年お勤めになった後、1000倍近くの倍率を勝ち抜いて国連機関のユネスコに就職されました。国連というと誰もが憧れる国際協力の職場ですが、川内さんの仕事はひたすら報告書を書くだけで、現場に出ることはほとんどなかったそう。しかも何ページにもわたる報告書も、実際の活動で使われることはほとんどありませんでした。私は本当に社会の役に立っているのか?とむなしさを感じた川内さんは国連をわずか5年半で退職し、ノンフィクション作家になりました。

このままずっと国連にいていいのだろうかと悩んでいた時、川内さんを変えたのはパリで出会ったアーティストの人々でした。なかでも彼女が惹かれたのは、えつつさんという1人の日本人女性です。彼女の話を聴くうちに「この人が自分の生い立ちを本に書けばすごく面白いのに」と思った川内さんでしたが、「私はそういうのは興味ない。書きたいならあなたが書けばいいんじゃない」とえつつさんに言われたそうです。「それなら、私が書いてみよう」そこから、ノンフィクション作家としての川内さんの道のりが始まりました。

しかし安定した職であり、輝かしいキャリアでもある国連を辞めてまで、作家になることに川内さんは随分悩みました。しかもそのとき彼女は38歳。もうすぐで40に手が届くという年齢で、新たな人生を歩み始めるのは遅すぎるのでは?しかも作家なんて、この先食べていけるかどうかもわからない不安定な道で…。

けれども自分の本当にやりたいことを見つけた川内さんは、国連を退職することを決意します。その後えつつさんを含め、パリで自由に生きる日本人の人々の姿を綴った『パリでメシを食う人々』を出版されました。その他にも、バングラデッシュの吟遊詩人を追った旅の記録『バウルを探して』や、中国の世界的アーティストといわき出身の会社経営者の友情を記録した『空をゆく巨人』などの本の執筆、出版を続けていらっしゃいます。

川内さんが取材する人は皆、自分の心の声に従って正直に自由に生きている人ばかりです。そのような人々に川内さんが惹かれるのは、どんな厳しい壁があったとしても、その壁を乗り越えてきた人にしか見えない『絶景』があるからだ、という理由がとても印象的でした。

川内さんは講演の最後で「頭の中で『これが正しい道なんだ』とどれだけ自分に言い聞かせたとしても、それが本当に自分の望んでいることでなければ、心が付いていかない。だから心の声に耳を傾けることが必要。自分の本当に望んだ道なら、いつかきっと誰かが認めてくれます」とおっしゃいました。川内さん自身、何社からも本の出版を断られたり、こんな本は売れないと言われたりしたことが何度もあったそうです。でもそこで妥協せずに、自分の本当に書きたいことを書き続けた結果、大きな賞をいくつも受賞されました。

「人生は冒険」この言葉で川内さんの講演は締めくくられました。彼女が『空をゆく巨人』の取材をしたとき、今でも忘れられない取材相手の方との会話があるといいます。
「私、生まれ変わったら冒険家になりたいんですよ」
「何言ってんの。僕らに会いに来た時点で、あなたは既に冒険に出てるんだよ」

今年成人した私にとって、人生の冒険は始まったばかり。就活の2文字が真近に迫った今、周りの様々な声で自分の本当の声が埋もれてしまわないよう、心の声に耳を傾けることを忘れないようにしたいです。

国際関係学科2年 のん

コメントシートより

  • 何歳になっても自由だ。
  • 結論が先に出ている状態で道を進むのではなく、1つ1つ少しずつの積み重ねで答えを見つけていく生き方も良いのだとわかった。
  • 「自分の心が正しいと言っていたらそれが自分の正解」という言葉が印象に残った。
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