第18回 学生スタッフレポート

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コンゴの紛争資源問題と性暴力のつながり

華井 和代 氏(東京大学未来ビジョン研究センター講師)

「『政府は国民を守ってくれる、警察は市民を守ってくれる』と日本人は思っている。その考え方を持っているので、日本人はコンゴの状況が理解できない」

これは、私が今回の講演で印象深かった言葉です。この言葉だけで、コンゴの置かれている状況がどれだけひどいのか、わかると思います。

今回の講演者は、東京大学未来ビジョン研究センターの講師であり、「コンゴの性暴力と紛争を考える会」の副代表である、華井和代さんでした。華井さんは、古代オリエント史や世界史教育を学び、高校の世界史教師として8年間勤め、そして今はアフリカの紛争資源問題を研究しています。出会いに導かれてテーマを変えてきた、と華井さんはおっしゃっていました。

コンゴは、アフリカの真ん中あたりにある、鉱物が多く産出される国です。長くヨーロッパに支配されていた歴史を持ち、隣国のルワンダで起きたジェノサイドを引き金とする紛争が今も続いています。講演のタイトルは、「コンゴの紛争資源問題と性暴力のつながり」でした。タイトルからすると私たちに関係のない話のように感じますが、実は私たちの生活と大きく関わっています。コンゴでは、私たちが普段使っているスマートフォンやパソコンなどの電子機器などに使われる金属が多く産出されています。コンゴの武装勢力は、違法な鉱物取引で紛争資金を稼いでいます。

では、コンゴの紛争と性暴力のつながりとはなんでしょうか。コンゴの性暴力は、とても残虐です。多くの性暴力は、「女性を守ることができなかった」と男性の威信を失墜させるため、紛争の手段として用いられます。そしてそれだけではなく、被害に遭った女性は、属していたコミュニティから追われ、居場所をなくしてしまいます。そしてこの性暴力の問題は、冒頭に述べた政府と警察も関わりがあります。彼らは女性を守るどころか、国軍や警察は、加害者側にいるのです。

華井さんや、映画『女を修理する男』で知られる、ノーベル平和賞を受賞したデニ・ムクウェゲ医師など、様々な人がこの問題に取り組んでいますが、日本ではあまり知られていません。日本人は関心がないと思っている報道機関、報道されないから知らない人、知らないから報道されても無関心になってしまう、という悪循環が起こっています。今日本にいる私たちがまずできるのは、この問題について「知ること」です。国連の報告である「国連マッピングレポート」は、この問題を詳しく知るのに良いそうです。

国際問題と聞くと、国際ボランティアの存在がしばしば指摘され、私の周りにも、現地に赴き、支援をする側に行こうとする人が多くいます。私は、そのような形で自らが国際問題に関わることはハードルが高く難しいと思っていましたが、「知ること」であれば私にもできます。知ろうとしなければ、報道されているもの以外、大切な問題に気がつけないかもしれません。井の中の蛙にならないように、そして日本で、あるいは自分のフィールドでできることを探せるように、「知ること」はとても重要なのだと、改めて感じました。

最後に、「知ること」の重要性がとてもよく分かる、華井さんが大学生の頃に、実際に現地で支援していた人から言われた言葉を、ご紹介します。

「学生が大変な現場で支援を手伝おうとしても、何も役に立たない、むしろ足手纏いになることが多い。そうではなくて、見たこと、感じたことを、日本に持ち帰って、語りなさい。そうして知っている人を増やして、日本で支えてくれたら、支援者は現場で活動ができる」
役に立たないからと関わらないのではなく、知ることで、現地の人を支えてみるという選択肢を多くの人に知って欲しいと思います。
国際関係学科3年 モノクロ

コメントシートより

  • 華井さんのように、一度社会人として働いた後でも自分がやりたいと思ったことをやり続けるような人生は素敵だと思った。
  • 日本では、報道されていないことが多いと思った。
  • コンゴでは日本の常識が全く当てはまらないことに驚いた。さらに、性暴力を武器として使っていて、それの被害女性が世界には、多く存在するということが理解しがたかった。
  • 伝えることの大切さを感じた。
  • 日本でも性暴力とかがあり、確かに今後だけでなく世界中の人類の問題だなと思った。まさか国の軍も性暴力を行っているとはしらなっかったので悲しくなりました。
  • 一見無縁のように感じられる、紛争と性暴力は女性を通して思わぬところで繋がっていた。
  • 日本では信頼できるものが、紛争地域では自分たちの人権を侵害する側になる場合もあり、また、罪を犯しても罰されない事実が日本で生まれ育った私には信じられないものでした。
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