第15回 学生スタッフレポート

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いのちを育む農山村~狩猟という仕事から見えるもの~

林 利栄子 氏(特定非営利活動法人いのちの里京都村事務局長 / 猟師)

みなさん、こんにちは!

10月24日の「総合2019」第15回は、特定非営利活動法人いのちの里京都村事務局長/狩猟家(ジビエハンター)の林利栄子さんにご講演いただきました。林さんは大学卒業後、生命保険会社で営業を経験するも1年程で退職。現在は、2013年に就任した「NPO法人いのちの里京都村」の事務局長と狩猟家という2つの顔を持っています。彼女の人生を創ってきたものとは一体何なのでしょうか。

大学卒業後、生命保険会社に就職し営業の仕事をしていた林さんは、働いている内に(林さん曰く)「時間の無駄」を感じ始め、1年ちょっとで退職し、人に寄り添えるような仕事を探すようになったそうです。その後、京都市建築指導課の臨時職員として働きましたが、その仕事は責任もなく楽な仕事であったため、林さんは再びその仕事に違和感を感じ始められました。そんなとき、''偶然、ご縁''で誘われたのがNPO法人いのちの里京都村の事務局長のポストでした。

また、NPO法人いのちの里京都村の事務局長として働いていたある時、知り合いに猟師の活動を一緒に見に行かないかという話を''偶然''されました。見学しに行った際に女性の猟師が少ないことを知り、見学先の猟師に「猟師になればいいやん」と誘われたそうです。NPOで都市と農村を結ぶコーディネーターとして働いていた林さんは、NPOの活動にも繋がるだろうと思い、また猟師が少ないと何が困るのか当時はわからなかったため、知識を得たいと思い狩猟を始めました。

このように、''偶然''や''ご縁''が林さんをNPO法人いのちの里京都村の事務局長や狩猟家という仕事へと導いたのです。

「田植えも仕事。農業をして田舎で働くということも仕事。このような考えは就活時には頭にない。」という言葉が私にとって印象に残りました。私は今まで、働くということは就職活動をして、より良い会社に入って、高い給料をもらうようなことだと何となく感じていましたが、林さんの人生の軌跡を知り、キャリアの選択肢の幅はもっと広くていいんだと気づくことができました。

また林さんは狩猟を通して、自分たちがどんな命をいただき成り立っているのかを知るべきである、というメッセージも伝えてくださりました。猟師という職業はなぜ必要とされているのか、みなさんは考えてみたことがありますか? 狩猟の対象となるイノシシやシカなどの動物による獣害は農家にとって大きな問題で、獣害による農作物の被害額は毎年164億円にもなります。その被害を緩和するために、狩猟が必要なのです。

では、捕獲されたイノシシやシカなどはどうなるのでしょうか。捕獲した獲物を無駄にしないためには、ジビエ(狩猟で得た天然の動物の食肉)として食べるという選択肢がありますが、実はジビエ利用されているのは捕獲量のたった7%で、残りの93%は廃棄されてしまっているのです。その理由としては、ジビエ利用するための環境が未整備で肉の処理方法を学べなかったり、食肉としての利用の方が廃棄よりもコストがかかってしまったり、野生の動物の肉であるため安全性のチェックポイントが多かったり、さらに猟師の高齢化や後継者不足で猟師の役割分担がうまくできないなどの課題が挙げられます。

そこで林さんは、月に一度、べにそん(鹿肉)会という、普段使っている豚肉や牛肉などを鹿肉に変えた料理をふるまうという活動や、どのように私達の元にお肉が届いているのかを子供達に教える食肉活動を行い、ジビエの普及を目指して活動されています。

林さんが講演の最後におっしゃったように、今は欲しいものが何でも手に入り、買える時代です。そんな時代だからこそ、食材や商品がどんな過程を経て自分のもとへ届いているのかを知ること、そしてその上で何を手に入れるかを判断する力が重要であることを実感しました。

林さんが辿ってきた軌跡を通して狩猟家のお仕事やジビエについて知るとともに、キャリアの選択肢の広さに気づかせてくださり、日々私たちが食べるものやそれらに関わる職業について新たな面から考えるきっかけとなった講演でした。

国際関係学科1年 M.W、枝豆

コメントシートより

  • 自分たちが知るか知らないかを選択することができるという前提で、知るということをこれから意識していきたいと思った。
  • 縁を大切にし、今の自分には一見関係のないようなものに見えても興味を持ってみることが大事だと思った。
  • 今まで都会で暮らしてきたので、農村に被害を与える動物を殺してしまうのは人間のエゴだと思っていたが、そこに至るまでの背景や経緯を知ると、自分は今まで主観からでしか物事を見ておらず、多角的に考えられていなかったのだと実感させられた。
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