第14回 学生スタッフレポート

  1. HOME
  2. 大学案内
  3. 第14回 学生スタッフレポート

生活を生き、共に学び共に生きる

野上 秀子 氏(株式会社生活の学校代表理事 / 一般社団法人生活哲学学会代表理事 / 一般社団家事塾代表理事)

みなさんこんにちは!
10月10日、「総合2019」第13回は野上秀子さんにお越し頂きました。「生活を生き、共に学び共に生きる」というタイトルで講演をしてくださいました。

今回の講演は、大きく分けて「野上さんの今までのキャリア遍歴」、「生活することについて」、「私たちが自分らしく生きるためにどうすれば良いか」の三部構成でした。

まず、野上さんは自身のキャリアについての経験をお話し下さいました。野上さんは西武百貨店に入社後、業界また会社内で女性初の役職を複数経験されました。百貨店という大量消費社会の最先端のような場所で、大量消費社会とは真反対の、すぐにはお金に変えることができない文化事業に多く携わったそうです。その文化事業を通して、日本の伝統を残そうとするクリエイターの方と出会い、彼らと過ごした時間が大事であったと話してくださいました。彼らの日本の伝統に対する熱い思いに触れることができたため、この時間は野上さんにとってかけがえのないものになったそうです。私は野上さんが、百貨店時代にした文化事業にとても思い入れがあることに驚きました。百貨店という「ものを売る」ことにフォーカスした業界に勤めながら、大量消費に捉われない文化事業に関わられた野上さんの経験はなかなか聞ける話ではなく、とても面白かったです。

次に、野上さんは生活についてお話し下さいました。その話の一環で、共に「株式会社生活の学校」を立ち上げた故辰巳渚さんのお話もありました。辰巳さんは編集者として多忙な日々を過ごす中、挫折を味わい家に籠る生活になったそうです。落ち込む日々が続いた辰巳さんでしたが、毎日生きるためには食事や洗濯といった家事をこなさなければなりませんでした。しかし、この家事こそが落ち込んだ辰巳さんを救いました。家事をすることを通して、自分自身を取り戻していったそうです。きっとそれは、家事を通して自分の生活を見直すことができたからだと思います。野上さんも辰巳さん同様、百貨店で働いていた現役時代は多忙な生活を過ごしていたそうです。そのせいで体調を崩し、入院を経験しました。子供時代は何か自分が悪いことをして親に「ご飯抜きよ!」と怒られると、ご飯が食べられないことに震え上がっていたのに、大人になり働き始めると多忙さゆえ、ご飯の時間を削るようになってしまったことに反省をしたそうです。退院後も忙しさがなくなることはありませんでしたが、お弁当を毎日お昼に持っていくようになったそうです。

最後のお話は、「私たちらしく、人間らしく生きるためにどうしたらよいのか」についてでした。私たちは情報にはアクセスできるものの、そこからその情報を「自分が何をしたいのか」という軸を持って選択することが必要だということでした。今ある価値観にとらわれる必要はなく、「自分たちが新しい価値を作っていく」意識を持つことが大切だとおっしゃっていました。そして、人間らしくあるためには、美意識・態度・振る舞い・所作を大切にとおっしゃっていました。日本にある四季折々の自然を楽しんだり、丁寧に生きる姿勢を持つことの重要性も教えて下さいました。全て効率的である必要はなく、むしろゆっくりと丁寧に生きることも大切さだということです。変化の中で本質を見極め、変化についていく柔軟さを持つように、というメッセージと共に講演を締めくくられました。

私は、この講演を通して大きな一つの学びを得ました。それは、今あるものを大切にする姿勢です。生きていくために毎日しているちょっとした家事、家族との会話、強く意識はしないものの感じる移りゆく四季など、生活の中で当たり前にあるものに対してゆっくりと丁寧に接しようと思いました。授業やサークル活動などで忙しい生活を送っていると見えにくくなるこの「当たり前」の生活の一部こそ、今の私を作っている大切な部分なのだと学べました。

多文化・国際協力学科1年 こはく

コメントシートより

  • 「忙しいと大切なことを見失いがちである」とおっしゃっていたのが印象に残った。心に余裕を持って、情報の取捨選択をしていこうと思う。
  • 変わるもの、変わらないものを見極め生きることは難しいことだと思った。頑張りすぎることなく頑張って、自分のペースで人生を歩んでいきたいと思う。
  • 仕事を好きすぎるあまりに、健康に被害が及んでしまうなど、ワークライフバランスを考えるのはやはり難しいなと感じた。
Copyright©2019 Tsuda University.
All rights reserved.