第13回 学生スタッフレポート

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知らないことを、知ること。

幡野 広志 氏(写真家)

あっという間に秋がやってきました。金木犀の温かい香りが待ち遠しい今日このごろ、皆さんいかがお過ごしでしょうか。さて、今回の講師の方は写真家の幡野広志さんです。幡野さんは2010年に「海上遺跡」で「Nikon Juna21」を受賞し、最近では著書『ぼくたちが選べなかったことを、選びなおすために。』やブログ「幡野広志の、なんで僕に聞くんだろう。」(https://cakes.mu/series/4217)なども執筆なさっています。そんな幡野さんは2017年に骨髄血液腫という難病にかかり現在は余命宣告を受けています。病気になってもなお、なぜ様々な人に会いカメラを構えるのでしょうか。それは今回のタイトル「知らないことを、知ること。」にも関わる、ある思いがありました。

講演当日、私は鷹の台駅で幡野さんと待ち合わせをしました。今回の講演はNHKの撮影が入るということで戦々恐々としていた私でしたが、実際に幡野さんにお会いしてみると今までの緊張が嘘みたいに解け、非常に楽しくお話ができました。というのも、幡野さんは本当に楽しそうにこちらの話を聞いてくださるので初対面とは思えないくらい親しみやすく、とても気持ちの良い方でした。

講演が始まると、まずご自身の作品と撮影の際のエピソードを紹介してくださいました。3.11後の宮城県気仙沼に行ったときのこと、友達のマグロ漁師の話、女優の杏さんを撮影した際のエピソードなどを聞き、写真を通して本当に幅広いジャンルの方と会っていることが分かりました。写真家というと風景を撮っているイメージだったので活動の幅の広さには驚きです。(幡野さんの写真はぜひ写真集等でチェックしてみてくださいね!)

さて本題に入りますが、皆さんは普段「知らないことを、知ること。」はありますか? 幡野さんは「知らないことを、知る」時がいちばん楽しく、色んな属性の人と会うことができる写真家という仕事はとても充実しているそうです。皆さんも、大学の講義などで1度や2度は「この授業面白い!」「そうか、こういう仕組みになってたのか!」と目からうろこが落ち、身震いするような快感を感じたことがあるのではないでしょうか。そして面白い人とは、自分が持っていない情報をたくさん提供してくれる人だと幡野さんは言います。

この講演で「知らないことを、知ること。」によって何がどうなるのかは話されていません。ただ、幡野さんの生き方はすごく楽しそうだと感じました。何歳になっても新しいことを知り、驚き、考え、表現するそんな幡野さんの生き方はまるで子どものような純真さがあり、1分1秒を楽しんで生きている感じがしました。冒頭で幡野さんは親しみやすい方だと書きましたが、その親しみやすさは持ち前の知識欲や好奇心から来ているのだと思いました。自分の全く知らない世界を少しでも触れようとするからこそ、興味を持って人の話を聞き、色んな人にオープンになれるのだと思います。また「知らないことを、知る」というのは「総合2019」のテーマ「井の中の私、大海を知る」とも関わってきます。幡野さんは、津田塾という井の中にいる私たちにぜひいろんな世界をのぞいてみてほしい、とおっしゃいました。しかし、無暗やたらに大海に飛び出せと言っているわけではないように思います。井の中でたくさんの知識を蓄えたうえで大海に飛び出して自分の眼で色んなものを見てみる、それでこそ得られるものがあり、多くの人に興味を持ってもらえるのだと思います。

最後に幡野さんは「将来は自分の好きなことをしろ」と言いました。自分はどんな人になりたいだろうと考えた時、私はもしもう一度幡野さんに会うことができたら、幡野さんに「もっと話を聞かせて!」と言ってもらえるような人間になりたいと思いました。そのために、色んな世界を見て“面白い”人間になりたいです。

国際関係学科3年 ごてん

コメントシートより

  • 「職業は将来の夢ではない」というフレーズがいちばん心に残った。たった一度きりの人生をどう生きるのか、健康なうちには考えたことはなかった。自分の人生を鮮やかにするために異なる属性の人と接したり、新たな世界に踏み入ったりしたいと心から思いました。とても勇気をくださった講演で深く心に刻まれました。
  • 誰かのつくった幸せの型に自分を当てはめる必要はなく、自分の思う幸せを求めて生きていいのだと分かった。
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