第11回 学生スタッフレポート

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“いつでも離婚できるのよ!”
……自由と自立と、愛、のこと

牧村 朝子 氏(文筆家)

みなさん、こんにちは!

第3ターム2回目の講演では、文筆家の牧村朝子さんにお越しいただき、いわゆるセクシャルマイノリティの立場として、今まで経験されてきたことや、これからのご自身や社会の展望などについてお話していただきました。講演のタイトルは、「“いつでも離婚できるのよ!”・・・・・・自由と自立と、愛、のこと」でした。一見刺激的なタイトルで私は最初驚いたのですが、牧村さんの明るい性格と聞く人を引き込んでいくお話によって、素敵な講演でした。

牧村さんが小さい頃は、女の子らしい子どもだったそうで、将来の夢はお嫁さんになることだ、と七夕の短冊に書いたのをよく覚えていると語っていました。そんな中、牧村さんは10歳の時にクラスの女の子を好きになりました。でもそのことを周りに言ってはいけないような気がして、12歳の時の引っ越しによってその子と別れるまで、その気持ちは誰にも言えなかったそうです。それからの牧村さんは、本当にたくさんのことを悩みながら高校、そしてその先へと進んでいきました。どうしても世間の人々の「女はこうあるべき」という観念と自分の考えがぶつかり、進学した音楽の学校も辞め、その後になんとか生活するために掛け持ちしていたバイトもだんだん行けなくなってしまい、精神が追い詰められてしまいます。

しかし、どんなに辛くて悩んでも、牧村さんはそこで立ち止まることはありませんでした。「女」に生まれたからという理由で、世間の考え方との違いに悩んでしまっても、絶対にそれに負けたくない!と強く思ったそうです。23歳で渋谷のシェアハウスに引っ越し、ペンネームである牧村朝子という名前以外では仕事を受けないと決め、新しい生活をスタートさせました。その同居生活の中ではいろいろなものを得ることができた、と牧村さんは語ります。自分がレズビアンだと気楽に言えるような人たちと出会い、同性愛というものに偏見を向けたような言葉には、しっかりと自分の意見を言い返せるようになっていたそうです。そんな生活の中で、牧村さんはフランス人の女性に恋をして、彼女が母国へと帰らないといけないことをきっかけに、自分もフランスへと飛び立ちました。日本でしていた仕事ができない状況の中、シェアハウス時代の友人と一冊の本を作って賞に応募し、現在に続く執筆生活を始めました。

牧村さんの言葉で強く印象に残ったものがあります。それは、「“結婚する”じゃなくて“結婚制度を使う”」という言葉です。渡仏した牧村さんはビザが切れる度に日本に一時帰国しながらも、自分が好きな人の傍に居続け、フランスで同性愛者同士の結婚を認める「みんなのための結婚」と呼ばれる法律ができたことをきっかけに入籍しました。その時に撮られた写真に写る牧村さんは本当に幸せそうに笑っていました。しかし、この言葉が出てきたのはその時ではなく、日本に移住するにあたって離婚をしなければならなくなった時だそうです。自分のことが嫌いになったのか、と本当に悲しくて悩んだそうなのですが、その時に牧村さんのパートナーの方が言ったのがこの言葉でした。「大切なのは“結婚している”ということではない。気持ちは全く変わらないし、これからも一緒にいたいからこそ、今まで使ってきた“結婚という制度”を使うのを止めるんだ。」と。私はこの話を聞いた時、本当にその通りだなと思いました。大切なのは形ではなく、自分が愛したいと思う人を素直に愛することなんだと改めて感じ、今回の牧村さんの講演のタイトルに入っている「“いつでも離婚できるのよ!”」という言葉の意味がはっきりと理解できた瞬間でした。

私も今まで生きてきた中で、性に関してなぜ?と思うことが多々ありました。漫画などのジャンル分けや、その中でのカップリング表記として出てくるNL、GL、BLという言葉。それぞれノーマルラブ、ガールスラブ、ボーイズラブという言葉の略ですが、「ノーマル」って何だろう?とずっと違和感を覚えていました。異性愛が普通、同性愛が特別で変なことのように扱われているなはなぜだろう。どうして全く違う人種のようにレズやゲイといった言葉で自分たちと区別するのか。違和感や疑問に思っていたことはたくさんありましたが、私は男性を好きになったことしかなく、どうしても内側の奥深い部分までは分かりませんでした。

しかし、今回の牧村さんの講演を聞いて、セクシュアルマイノリティについての自分の考えが非常にクリアーになりました。自分が愛したい人を愛す。同性愛にまだ偏見があるこの世の中で、それを貫き通して、なおかつ自分の経験や興味があることをずっと語り継いでいくために筆をとったり、マイクを握る牧村さんの生き方が純粋にかっこいいと思いました。今回は私たち学生のために、牧村さんにはどうしても同性愛者というくくりで講演していただいた形になったかもしれません。ですが、私はそんな言葉ではくくれない、牧村さんという1人の人のお話を聞けてすごく嬉しく、時折辛いことを思い出されたかもしれませんが、生き生きと楽しそうに話す牧村さんの姿を見て、今までよりもこの問題に興味を持ち、理解が深まった人も多いのではないでしょうか。私も牧村さんに気付かせてもらったことを胸にとめながら、レズビアンやゲイといった言葉が消えて、本当に自由に生きられる社会になるように、できることを少しずつやっていきたいなと思います。

国際関係学科1年 すみれ

コメントシートより

  • この講演で、「女だから」この行動をとるべきだという無意識な気持ちが自分にはあるのかもしれないと感じました。
  • 結婚は“する”ものだと当たり前のように思っていたので、結婚制度を使うという考え方は新しく、おもしろいなと思いました。
  • 昔と比べたら同性を愛する人への理解が深まったと思いますが、そこに至るまでには牧村さんをはじめとする、怖がらずに同性愛を主張する人の存在が不可欠であったと思う。
  • 同性愛者の人は周りにもたくさんいるかもしれないし、そのことを自分だけでなく世間の多くの人が理解するべきだと感じました。
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