第22回 学生スタッフレポート

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若者の自殺を考えるー同世代視点から見える実態と対策ー

石井 綾華 氏(NPO法人 Light Ring. 代表理事)

日本が自殺大国である、ということが最近では広く知られるようになってきました。奇しくも身近になってしまった「自殺」というテーマは、避けて通りたくなってしまうような響きを持っています。しかしこの問題にしっかりと向き合うことは、私たちの「あの時こうしていれば」を少しでも減らすための一歩になるのではないでしょうか。「総合2018」第23回は、NPO法人 Light Ring. 代表理事である石井綾華さんに来ていただきました。

なぜ日本は自殺をする人が多いのでしょうか。

SNSの発展によってキャラの演じ分けをし、本当の自分が見せられなくなり、安心できる逃げ場がない。比較してばかりの社会で、自分は自分でいいと思いにくい環境ができている。頑張っているのに他人に「頑張れ」と言われ、焦っていることが言えないまま引きこもってしまう。背景にはそんな現状があるのではないかと、Light Ring. は考えているといいます。悩んでいる若者は自ら助けを求めることをためらう傾向があり、そうなると直接他人が介入していくのは困難です。自殺をした人の7割以上が、何らかの精神的疾患を持ち、心理的孤立などを抱えていた可能性がある、と言われています。そして、日本全国でうつ病の予備軍は241.9万人にものぼります。

石井さん自身、精神のバランスを崩し、死んだほうが楽だとさえ思ったことがあったそうです。精神病院を出た時、石井さんを救ったのは、腫れもの扱いせず、温かく迎え入れてくれた周囲の人々でした。上に挙げたうつ病予備軍の人たちには、推定1209万人の人が側にいて、支え手になりえるのです。そして実際、多くの支え手たちが、あらゆる悩みを抱えた人たちを支えています。
しかし実は、支え手たちも悩みを抱えています。Light Ring. は、支え方を学ぶ機会がなく、うまくいかないことに落ち込んだり、自分がしていることに確信を持てなかったりする支え手たちを支えています。プロではない、一般の人の与える影響の大きさを自ら実感し、「身近な人」として支える人のためのNPOとして、石井さんはLight Ring. を設立しました。
「支え方」や「話の聞き方」のレッスンの他、支え手同士の悩みを共有する場を提供するなどの活動も行い、これまでに11,205人が参加してきました。そして、Light Ring. に足を運ぶ人は特定の他者を支えたいと思っている人だけではなく、自分の悩んだ経験から、誰かの支えになりたいと願う人もいるそうです。

Light Ring. はソーシャルサポートの重要性を訴えています。ソーシャルサポートとは、「周囲の人々(家族、友人、同僚など)から与えられる情緒・道具・評価支援の総称」のことです。今周りに助けを必要としている人がいなくても、いつか助けが必要な人が側に現れる可能性は、支え手1209万人という数字を見れば大いにあり得ることです。この問題に、誰もが関わる可能性を持っています。では、私たちは大切な人や身近な人を支えるために、どんなソーシャルサポートができるのでしょうか。

ソーシャルサポートの軸は、「セルフヘルプ」「寄り添う」「聴く」「つなげる」です。「セルフヘルプ」は、悩みやストレスへの効果的なストレスケア法です。例えば食べ過ぎ飲み過ぎに気を付ける、今あるものやできていることを思い出し、「~ねばならない」と言わない、など様々な方法があります。「寄り添う」、には、相談を受けるときの丁度いい距離感を測ることも含まれています。やらないことを決め、相手のできることまで奪ってしまうのを防ぐことも大切です。「聴く」、は相談してよかったと思ってもらえるための傾聴スキルを指します。「つなげる」、は、深刻すぎる悩みを受けたときの対処法のことです。最後まで自分で責任を、と気負わず、適切な専門機関を紹介したり、別の人に頼ったりすることもソーシャルサポートには必要な考え方です。

自殺につながるうつを予防することは難しいそうです。疾患名が付くまで、医療的な治療はできません。しかし、疾患名がついてしまえば、それを克服するのは本当に大変なことです。だから、孤立せずに誰かと話すことの重要性を石井さんは訴えます。受け入れる、雑談できる関係性が、心にわだかまりを抱える人に最悪の選択をさせないことに繋がります。専門家や家族などの助けを得ながら、一緒に問題を解決していく姿勢が大事だと、石井さんは最後に語ってくださいました。他人の悩みを真正面からすべて受け入れようとする覚悟はなかなか決められるものではありません。でも、寄り添いたい、自分にできるサポートをしたいと感じる場面は今までも多々あり、これからも続くのだと思います。そんな時、全てを背負わなければと力まなくても、周りの力を借りて行動することが、悩んでいる人の負担を軽くすることに繋がるかもしれないという希望を感じました。

国際関係学科2年 J

コメントシートより

  • 自分にできることは話を聞いてあげることくらいしかないけれど、少しでも支えになりたいと考えた。
  • まずは自分のケアをしっかりし、人に頼っていきたいと感じた。人に頼っていいんだなと思えた。
  • 何かを相談されて、相談内容が深刻であればあるほど、相談をしてくれた人に寄り添い、何でもしてあげたくなってしまう。しかし、自分と他人にはある程度の距離感が必要であると学び、自分がしてあげることが相手にできることを奪っていないか考える必要があると感じた。
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